Mika Pikazo – コンセプトを固めるまでは、チームの皆さんと何度も試行錯誤を繰り返しました。私が全体の構成案(大ラフ)を作成し、そこにどういった仕掛けがあれば楽しんでもらえるか、どうすれば「感情」という流れを説明できるかを、コンセプトに関わってくださったマキシラさんと共に練り上げていきました。
「感情をからだで浴びる」という表現が印象的ですが、具体的にはどのような演出をされたのでしょうか?
Mika Pikazo – 象徴的なのは、最初のエリアである「感情の起源:愛と恐れの部屋」です。ここでは特殊なライティングを施し、日常で耳にするような環境音をBGMとして流しています。その空間で感じる音や光を「愛」と受け取るか「恐れ」と受け取るか。だれかにとって心地の良い音でも自分にとってある思い出が浮かんで苦い気持ちになるとか…。自身の記憶とリンクさせながら、五感で感じ取ってほしいと考えました。
次の「複雑な感情」のエリアでは、作品と一緒に多くの「ミラー(鏡)」を飾っていますね?
Mika Pikazo – 作品を鑑賞している最中に、ふと鏡越しに自分の姿や、同じ空間にいる他者の姿が入り込んでくるんです。それによって「これは自分と同じ気持ちだ」と共感するのか、あるいは「自分とは全く違う他者」を想像するのか。客観的な視点が混ざることで、より深く感情と向き合えるのではないかと考えました。
予想を超えてきた作品たち。ディレクションは「肉付け」の作業
Mika Pikazo
普段のイラスト制作と今回のディレクションでは、頭の使い方は違いましたか?
Mika Pikazo – 全く違いましたね。イラストを描くときは、自分自身の感情をグッと集中させて作品に落とし込む、いわば「自分との対話」です。でもディレクションは、多くのプロフェッショナルと対話を重ねながら、徐々に肉付けしていく作業でした。
Mika Pikazo – 今回の展示会には、多くの作家さんが自身の思いを全力でぶつけた作品が揃っています。作家さんがどんな状況を想像してこれを描いたのかに思いを馳せると同時に、それを見た皆さんが「自分ならどう思うか」「自分はどんな時にこの感情を抱くのか」と、ご自身の心と対比しながら鑑賞していただけたら嬉しいです。
「2023年に、ソロファーストアルバム『HOSONO HOUSE』が50周年を迎えました。海外も含めて再評価頂けて、本人もとても喜んでいたんです。世間の声をちゃんと自覚できたようで、すごくいいきっかけになったのですが、同時に、『僕の近年作を誰も聴いてくれないかも…』みたいな、ちょっと寂しいことをおっしゃったんですね。だから、近年作をきちんと再発して、もう一度まとめるような企画をしようと。それが1年ほど前です。アナログレコードが一度に揃う機会もなかなかないので、近年の音楽にフォーカスした企画として、『HOSONO RECORD HOUSE』の実現に至りました。」
メインビジュアルの秘密 – ベートーヴェンとこれから細野晴臣
細野さんのスタジオには、ベートーヴェンの胸像が置かれている。
これは母方の祖父である中谷孝男さんが残したもので、今回の『Hosono Record House』のメインビジュアルとして登場する。もちろんこれは、単にあ̇っ̇た̇からではない。ピアノ調律師であった祖父の影響、中でも“クラシック”は、これからの細野晴臣の重要なピースとなるかもしれないのだ。