Mika Pikazo – コンセプトを固めるまでは、チームの皆さんと何度も試行錯誤を繰り返しました。私が全体の構成案(大ラフ)を作成し、そこにどういった仕掛けがあれば楽しんでもらえるか、どうすれば「感情」という流れを説明できるかを、コンセプトに関わってくださったマキシラさんと共に練り上げていきました。
「感情をからだで浴びる」という表現が印象的ですが、具体的にはどのような演出をされたのでしょうか?
Mika Pikazo – 象徴的なのは、最初のエリアである「感情の起源:愛と恐れの部屋」です。ここでは特殊なライティングを施し、日常で耳にするような環境音をBGMとして流しています。その空間で感じる音や光を「愛」と受け取るか「恐れ」と受け取るか。だれかにとって心地の良い音でも自分にとってある思い出が浮かんで苦い気持ちになるとか…。自身の記憶とリンクさせながら、五感で感じ取ってほしいと考えました。
次の「複雑な感情」のエリアでは、作品と一緒に多くの「ミラー(鏡)」を飾っていますね?
Mika Pikazo – 作品を鑑賞している最中に、ふと鏡越しに自分の姿や、同じ空間にいる他者の姿が入り込んでくるんです。それによって「これは自分と同じ気持ちだ」と共感するのか、あるいは「自分とは全く違う他者」を想像するのか。客観的な視点が混ざることで、より深く感情と向き合えるのではないかと考えました。
予想を超えてきた作品たち。ディレクションは「肉付け」の作業
Mika Pikazo
普段のイラスト制作と今回のディレクションでは、頭の使い方は違いましたか?
Mika Pikazo – 全く違いましたね。イラストを描くときは、自分自身の感情をグッと集中させて作品に落とし込む、いわば「自分との対話」です。でもディレクションは、多くのプロフェッショナルと対話を重ねながら、徐々に肉付けしていく作業でした。
Mika Pikazo – 今回の展示会には、多くの作家さんが自身の思いを全力でぶつけた作品が揃っています。作家さんがどんな状況を想像してこれを描いたのかに思いを馳せると同時に、それを見た皆さんが「自分ならどう思うか」「自分はどんな時にこの感情を抱くのか」と、ご自身の心と対比しながら鑑賞していただけたら嬉しいです。
今では様々な宿泊施設で現代アートを楽しむことができる。自身のブランディングに長けているAce Hotel(エースホテル)は、世界中のエキサイティングな都市に唯一無二の宿泊体験を提案するホテルを開業している。日本では旧京都中央電話局をリノベーションした新風館という商業施設にAce Hotel 京都をオープンさせており、隈研吾が建築設計を行なっている。
台東区の蔵前にあるKAIKA 東京 by THE SHARE HOTELSは現代アート作品を収蔵・公開する「アートストレージ」とホテルが一体となった施設だ。倉庫ビルをリノベーションした建物内に、複数の“見せる収蔵庫”スペースがあり、作品が展示されている。アートギャラリーと連動しているため、現代アート作品は日々入れ替わり、館内で無料で体験できる。その他にも企画展や「KAIKA TOKYO AWARD」など公募で選ばれた作品も常時展示されている。公開保管というコンセプトの作品を見ているかのようだ。
一度聴いたら忘れられない音がある。ファミリーマートの入店音だ。日本に観光に来た海外の人たちも、まんまとこの音の中毒になっている。帰国後も日本を思い出す音として「SOUNDS of JAPAN」のタイトルで、入店音を使ったコンテンツが多く投稿されている。久石譲の「Summer」を聴くとおばあちゃん家がある田舎で過ごした夏休みを思い出す。そんなしくみと同じだろうか。