箱ごと、「遊べるアート」としてのボードゲーム

最近ボードゲームの箱って、やけにかっこよくない?

そう感じている人は、きっと少なくないはずだ。かつては内容をそのまま伝えるだけのパッケージが主流だったのに、書店やセレクトショップに並ぶ最近のボードゲームたちは、箱そのものが洗練されたオブジェのような存在感を放っている。

ルールより前に、まず「見た目」で選ぶ時代

大きな転換点となったのが、Kickstarterに代表されるクラウドファンディングの普及だ。大手メーカーを通さなくても独立制作できるようになったことで、グラフィックデザイナーやイラストレーターが自らゲームを開発するケースが急増し、ボードゲームのデザイン水準を一気に引き上げた。さらにSNSとの相性も良く、最近は「ゲームの面白さ」より先に「見た目のかっこよさ」が注目を集めている。

そして日本でも、独自の感性でボードゲームをつくるクリエイターが増えている。
東京・南青山を拠点とするオインクゲームズは、シリーズ累計120万部を突破した日本発の小箱ボードゲームメーカーとして、デザインと遊びごたえを両立させた作品を世界に発信し続けている。

触れて、遊んで、飾れる──5つの作品を紹介

買う理由は「かっこいいから」でいい。そんな5作品を紹介する。

Modern Art(モダンアート)

ニューゲームズオーダー公式サイトより

1992年に生まれ、競りゲームの原点とも呼ばれるライナー・クニツィア設計の名作 。プレイヤーが画商となって5人の架空の画家の絵画を競りにかけ、最も稼いだ人が勝利するというシンプルなルールながら、ラウンド終了時の絵の価値は画家の人気度によって決まるため、巧みに市場をコントロールしていくという深みがある。初版から一貫してそのシックで渋いビジュアルは本物のアートギャラリーさながらの空気を漂わせる。

Canvas(キャンバス)

ジェリージェリーストア公式サイトより

Kickstarterで16,000人以上のバッカー(支援者)を集めた話題作で、画家として芸術祭への出展を目前に控えた画家として、イラストカードを組み合わせて絵画を仕上げていくゲーム。透明なカードを重ね合わせることで毎回異なる絵画が生まれる。箱にフック掛けの穴が空いており、壁に掛けて収納できるという細部へのこだわりまで、「アートとして飾る」ことを前提に設計された一作。

Scythe(サイズ大鎌戦役)

ポーランドのアーティスト、ヤクブ・ロザルスキの油絵を世界観のベースにした重量級ゲーム。蒸気と自然が混在するレトロフューチャーな世界に、巨大メカが佇む圧倒的なビジュアルが特徴で、アートワークの世界観そのものがこのゲームの大きな魅力となっている。ゲームとしての戦略性の高さはもちろん、ボードに広がる絵画的な世界観を眺めるだけでも充分に価値がある。

MOSAIC(モザイク)

ゲームズマーケット公式サイトより

岐阜県多治見市産の美しいモザイクタイルをコマに使った、囲碁やオセロのような陣取り型のボードゲーム。手に取るとずっしりとした陶器の重みがあり、盤上に並べるほどにタイルの色が映え、ゲームが進むにつれて思わず見惚れるような盤面が生まれる。多治見のふるさと納税返礼品にも選ばれており、地域の工芸とゲームデザインが融合した、日本ならではのプロダクトアートだ。 

Petiquette(ペチケ)

オインクゲームズ公式サイトより

動物・帽子・数字の組み合わせからなるカードを使い、ランダムに並んだ5枚の中に入れるのに最もふさわしいカードを考えるゲーム。平岡久典氏による動物たちのイラストは版画のように静謐で美しく、カードを並べるだけで棚に飾りたくなる。答えはひとつではなく、他プレイヤーの美的感覚や思考回路を読みながら答えを合わせていく。つまり、遊ぶこと自体がお互いの美意識を交換するような、不思議な体験になっている。

「アートの入口」としてのボードゲーム

アートは壁に飾るもの、という思い込みがまだ根強い。でもボードゲームは違う。手に取れて、遊べて、棚に飾れる。来客時にテーブルに広げれば、それ自体がコミュニケーションのきっかけになる。数千円から一万円前後という価格帯も、アートを「生活の中に置く」最初のステップとしてはちょうどいい。

箱を開けずに飾りたいと思う日も、誰かを呼んで一緒に遊ぶ日も。そんな二重の楽しみ方ができるボードゲームは、生活の中に自然に置ける、最も身近なアートのひとつなのかもしれない。

EDIT: Shimako Otake

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