【インタビュー】出水ぽすかの緻密な世界 – 前編

出水ぽすかは幻想的な風景と緻密なキャラクターデザインが魅力的なイラストレーター・漫画家だ。『約束のネバーランド』の作画では全世界にその名が知られるようになった。ずっと絵を書き続けていたというその半生を、出水本人の言葉を通して創作の原点と生活のことについて伺った。

モンスターのイラストから始まった出水ぽすかの原点

まず最初に、漫画やイラストを始めたきっかけを教えてください。

出水ぽすか(以下:出水) – どこを最初にするか難しいのですが、投稿でいうとpixivに上げ始めたのは2008年くらいだったと思います。当時は「人外系」と言われるジャンルやモンスターなどのイラストを描いていましたですね。

オリジナルですか?

出水 – そうですね。もともとRPGのゲームを作りたいなと思っていて、そのためのキャラクターを描いていました。pixivってイラスト中心なので、とにかく画力を上げたいなって思ってました。やっぱり絵が上手い人が多くて。

雪道特別快速 (2012)

影響を受けたものはありますか?

出水 – 子どもの頃は『ポケットモンスター』とか『ファイナルファンタジー』がドンピシャの世代でした。そういうファンタジーやモンスターの影響は大きいと思います。当然のようにそういうゲームで遊んでいたので、自然と将来ゲームが作れたらいいなと思っていました。

自身のスケッチやイラストを人に見せることはありましたか?

出水 – 大学が美術系だったので、見せる機会はありましたね。あとは、中学高校の頃から学校のパンフレットに絵を描いたりとかもしたので、当時から人に見せたいとは思って絵を描いていたと思います。

進路に悩んだこともあった

もともと美術の道に進もうと思っていたんですか?

出水 – 高校の頃から漫画は好きで投稿や持ち込みもしていたんですけど、最初から一本でいく自信はなかったですね。大学も教育系の大学から美術系へ入り直したりもしました。

そこから「絵を仕事にしよう」と決めたきっかけは?

出水 – 大学にいた時には就活もしていました。その中で入りたい企業や興味のある企業にいくつか落ちてしまって。その時点でイラストの仕事や読み切り漫画の連載もしていたので、「就職しなくてもなんとかなるかな」と思いました。今思うとその時には覚悟が決まっていました。

おにぎりに限る (2025)

大学では何を専攻されていましたか?

出水 – 先端芸術という、なんでもやるようなところですね。最初は日本画の勉強もしていたんですが、もっと漫画やイラストが描けるところとして先端芸術のコースを選びました。でもやっぱり見抜く人もいて、ファンの方から「日本画っぽいですね」と言われることもあります。

「セリフを作るのが苦手だった」行き着いた先が作画への道だった

漫画の持ち込みなどもされていたんですか?

出水 – はい。大学生で時間に余裕があったのでコンペに参加したりもしていました。とりあえず出して、通れば載るっていう感じなんですけど、連載までこぎつけた作品であってもあまりうまく行かなかった部分も多かったです。子供向けの作品というのもあるんですが、自分ではセリフを作るのがあまり上手くないような気がして。

その後、作画としての仕事にシフトしていくわけですが、最初はいつ頃ですか?

出水 – 完全に作画として入ったのは白井カイウさんとの『約束のネバーランド』が初めてです。その前からゲーム作品のコミカライズや4コマ漫画など、原作ありの仕事もしていたので新人の時から作画の経験はありました。

「目で見た風景」を描く

出水さんの作品は緻密な空間表現が印象的ですが、意識されていることはありますか?

出水 – 厳密に描き分けているわけではないんですが、「目で見た景色を再現したい」というのは常にあります。不動産マジックってあるじゃないですか。写真ではめちゃくちゃかっこいいけど実際行ってみたらそうでもなかった、みたいな。カメラとは違って、人間は首や目を動かすことができたり、気になるものを注視したり、見ているのに目に入らないものがあったり、動きや時間を含んで物をとらえていると考えています。だから、そういうものを表現したいと思って、人物にピントを合わせて背景をぼかしたり、逆に周囲も見えるように魚眼っぽくしたり。人って目の前にものがあるとそこに注目してしまうので、そういった人間の生理的な視点は意識しています。ここに自分がいたら、どこを見るかな、という感じです。

階段の多い街でして (2023)

ロケハンはされますか?

出水 – 本当はしたいのですが、スケジュール的に必ず行けているわけではないです。ファンタジー作品が多いので難しいというのもあります。だから、今まで見たものをパッチワークのように組み合わせることも多いです。

日常の風景も作品に活かされている?

出水 – 漫画だと具体的にここ、というのはないんですがpixivのイラストはほとんどそうです。

写真派?記憶派?

出水 – うーん、両方ですね。撮る場合もあるんですけど、やっぱ記憶だけだと曖昧でぐにゃぐにゃしててよくわかんないなっていうのもあります。

最近よくご飯の絵とか描いてますけど、写真を見ながら描くと完全にそのお店になってしまうので、記憶と照らし合わせて「こんな感じだったかも?」というイメージで描いています。分からないところはちょっと調べたりしながら。

後編では、作画という役割への意識、コラボレーションの考え方、そして現在の制作環境とこれからについて聞く。

EDIT: Ryo Hamada

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