【連載】Convenience ART Vol.4「ファミリーマート、チャイムの秘密」

「コンビニエンスアート」第4回。

アートの定義ってなんだろう。
アナーキーなミッドナイト映画『ピンク・フラミンゴ』などで知られる鬼才ジョン・ウォーターズ監督は「私にとって、美しさとは一目見たら決して忘れられないものを意味します」と言った。

一度聴いたら忘れられない音がある。ファミリーマートの入店音だ。日本に観光に来た海外の人たちも、まんまとこの音の中毒になっている。帰国後も日本を思い出す音として「SOUNDS of JAPAN」のタイトルで、入店音を使ったコンテンツが多く投稿されている。久石譲の「Summer」を聴くとおばあちゃん家がある田舎で過ごした夏休みを思い出す。そんなしくみと同じだろうか。

この音は指揮者・作曲家の稲田康が手がけた。1978年から79年にかけて、松下電器産業(現パナソニック)で家電の音響チェックを担当していた彼が、ドアベルのチャイムとして生み出したものだ。

正式名称は「メロディーチャイムNo.1 ニ長調 作品17『大盛況』」。と言っても、2015年にデイリーポータルZの取材をきっかけに決まったもので、それまでタイトルはなかった。印税の観点でも議論は無視されていたようだ。日本中で1日何千万回と再生されている音だが、稲田氏には1円も振り込まれていないという(稲田さんって、うっかりさんなのかな…?)。

ファミリーマートの入店音と認識している人がほとんどだと思うが、ファミリーマート限定の曲ではない。パナソニック製ドアベルに搭載されているチャイム音なので、「ファミマ」な家が存在する。その家に住めば、なんだか揚げ物が上手につくれる気がしてくる。

「一度頭から離れなくなったら、それはアートだ」と定義すると、ファミリーマートの入店音はれっきとしたアートだ。コンビニの入口で毎日何百万回も流れる音さえも、アートだと思えば、私たちの日常は実はアートにあふれているのかもしれない。

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