弱冠22歳で日本マクドナルドから仕事の依頼が舞い込んだ。公式WebCMの制作依頼だ。だが、当時の浦浦 浦ちゃんはアニメーションの制作経験がたったの一度しかなかったという。繰り返すが、たったの一度だ。
『目指せラーメンマスター』と題されたわずか7秒の作品が、担当者の目に留まった。この作品はいかにして出来上がったのだろう。そしてその後、彼が歩んだ道のりは一体どんな景色なのか。今や『日本三國』のエピソードイラストや『怪獣8号 THE GAME』のプロモーションアニメーションを手掛けるまでに至った若き才能に迫る、初の単独インタビュー。
絵描き家族のもとで生まれ育って

ご家族の影響で絵を描き始めたんだとか。
浦浦 浦ちゃん – 父が車のデザイナーをしていて、家がお絵描き家族みたいな感じだったんです。画材も揃っていたし、父も美大に行っていたことがあって。姉二人も絵が上手くて、一緒になって描いていました。
当時はどんな絵を?
浦浦 浦ちゃん – ずっとドラゴンを描いていましたね。今でも「何か描いて」と言われたらドラゴンを描くようにしています。一番描き慣れているし、描いていて楽しいので。あとは、その時々で流行っていたコンテンツのキャラクターもよく描いていました。風景画もずっと好きで、今でも描いています。
「ドラゴン」はちょっと意外でした。今の作風からは少し離れていますね。
浦浦 浦ちゃん – そうかも知れません(笑)。
「絵を描くこと」を仕事として意識し始めたのはいつ頃ですか?
浦浦 浦ちゃん – 子どもの頃から「絵で生活できたらいいな」という気持ちはありました。ただ、変に現実主義なところもあって、「そんなの無理だろうな」と思っていて。本格的に意識したのは大学3回生くらいです。就職活動への不安もあって、フリーランスという選択肢を考えるようになりました。当時はInstagramもXもフォロワーが10万人を超えていて、ある人から「君ならいけるよ」と背中を押してもらえたことも大きかったと思います。
カリフォルニアで過ごした大学時代

その頃はカリフォルニアの大学に通われていた?
浦浦 浦ちゃん – そうですね。もともとアメリカへの憧れがあって。映画『ベイマックス』のヒロみたいな天才少年に憧れていましたし、ピクサー作品も大好きでした。ピクサーのスタジオって、自分のデスクを自由に飾れるんですよ。会社員に窮屈なイメージを持っていた当時の僕には、それがすごく自由でかっこよく見えて。父も「学校なんて行かなくていい。行くならアメリカだ!」みたいな人だったので。いろいろ重なって留学を決めました。ただ、英語は全然話せなかったので、向こうでは勉強漬けでしたけどね。
コロナ禍に描き続けた二次創作
現在の活動につながる転機は、やはりコロナ禍だったのでしょうか。
浦浦 浦ちゃん – そうですね。授業が全てオンラインになって、絵を描く時間が増えたんです。
二次創作で浦浦 浦ちゃんさんを知った方も多いと思います。クロスオーバー作品には多くのキャラクターが登場しますが、あの発想はどこから生まれるのでしょうか。
浦浦 浦ちゃん – 例えば大食いキャラクターを描こうと思ったら、『進撃の巨人』にもいるし、『ONE PIECE』にもいるし、『銀魂』にもいる。だったら全員集めた方が面白いんじゃないかというイメージです。最初から人数を決めているわけではなくて、「このキャラも描きたいな」と足していきます。結果的に毎回すごい人数になっていますね(笑)。

ただ並べるだけでは面白くない。二次創作でのマイルール
二次創作を描く上で大切にしていることはありますか?
浦浦 浦ちゃん – 一番は原作へのリスペクトです。そのキャラクターがしないことは絶対にさせないようにしています。例えば、承太郎ならふざけないだろうとか、デクなら相手の能力をメモするだろうとか。そのキャラクターならどう振る舞うかを考えながら描いています。あとは、見て頂いた方々に楽しんで欲しいので、出来るだけキャラの個性を拾えるよう努力しています。
作品ごとに絵柄が異なるキャラクターを同じ画面に描くのは難しそうです。
浦浦 浦ちゃん – キャラクターは原作に寄せます。ただ、僕自身は顔の描き方で個性を出すタイプではないと思っていて。例えば、多くの作家さんはそれぞれ特徴的な顔の描写表現が決まってあると思うんですが、僕はあまり決めないようにしています。だからこそ、影を落とさない塗り方だったり、色使いだったり、ブラシの使い方だけは固定化してるので、絵柄の寄せに集中して、同時に僕らしさも表現しようとは努めています。

赤みを帯びた色彩も、どこか懐かしさを連想させるようで印象的です。
浦浦 浦ちゃん – 初めは単純に自分なりの「可愛い」に突っ走って色味を決めていた感じでした。ただ、この色味を使うにつれて僕の作家性が色彩と結びついてしまい、今では僕の絵だと気づいてもらうために自分らしい色味に頑張って寄せている状況です。もはや呪いに近いですね(笑)。
細かな描き込みも魅力のひとつですが、特にこだわった小ネタはありますか?
浦浦 浦ちゃん – 『NARUTO』のファンアートは特にこだわって描きました。ファンしか気付かないようなネタを大量に仕込んでいるんです。ただ、そういう細かい部分って意外と伝わらないこともあって。『チェンソーマン』のファンアートでデンジに『コロコロコミック』を持たせたことがあったんですが、「『ジャンプ』じゃないの?」と言われたり。でも原作では本当に『コロコロコミック』を読んでいるんですよ。逆に僕が間違えることもありますし、そのやり取りも含めて面白いですね。
後編ではいよいよ、唐突に思えた日本マクドナルドからの制作依頼の背景に迫ります。商業作品と自主制作の狭間で、浦浦 浦ちゃんがどうしても譲れないものとは。そして、彼の作品の最大の魅力である、懐かしくエモーショナルな情景の秘密に迫ります。お楽しみに。