【インタビュー】描かないことで、見せる。Syoyoが辿り着いた「BLEND ART」という表現 – 後編

前編では、コールズ・フィリップスとの出会いから「BLEND ART」誕生までの道のりを辿ってきた。後編では、謎のファッションブランド「SYOYODO」の裏話、そしてGAAATとの出会いから生まれた初個展「PROTO」について訊いた。待望の初個展を前に、作家の心情やいかに____________。

映画やファッションから届く影響

作品作りのインスピレーションはどこから来ることが多いですか?

Syoyo – 映画からの影響はかなりあると思います。アメリカの映画スタジオ「A24」の作品は特に好きで、監督だとウェス・アンダーソンが好きです。彼の作品からは、色使いの点でもろに影響を受けています。

Syoyoさんの作品の中では、ファッションも重要な要素として存在感を感じます。

Syoyo – ありがとうございます。実は作品の中で一番最初に考えるのはファッションで、「こういう服を絵にしたいな」というところからスタートすることが多いんです。ワンピースやジャケット、革ジャンなど、描きたい服をどこに溶け込ませるか考えることから、作品を組み立てていきます。女性服が多いのは、単純に種類が多いのと、デザインや世界観の幅が広がるから。あとは、女性服のデザインを見ること自体も好きなんです。ファッション誌「VOGUE」や、パリコレなどのランウェイからも大きく影響を受けています。

R11R×池袋PARCO SPECIAL EXHIBITION 『Emotion2024』池袋PARCO55周年記念イラスト / ファッション誌の表紙のようなデザインを採用。シンプルでありながらシンプルに見えない絶妙なバランス感覚が魅力。

架空のブランドが現実に。作品を飛び出す「SYOYODO」

公式サイトにある「SYOYODO」についても教えて下さい。グッズ展開もされていますね。

Syoyo – 元々は作品の中で登場する衣装を、何か一つの架空のブランドで統一して描いてみようというアイデアから始まりました。作中に出てくる服や靴、小物は全て架空のブランド「SYOYODO」のものです。

SYOYODO公式ストア
作中に登場する架空の衣装ブランド。現在は作品内に留まらず、実際にグッズ展開なども積極的に行っている。個展「PROTO」での物販も要チェックだ。

作品に出てくる女の子は、現実のモデルの立ち姿を参考に描いています。それもあって、ポスターアート自体が「SYOYODO」の今シーズンのルック、広告ポスターのようなイメージもあるんです。元々シュールな世界観が好きだったので、ファッション業界のシュール、モードな雰囲気を、自分の作品でも表現出来たらと思っています。

色合いでは映画監督ウェス・アンダーソンからの影響を受けているとのことですが、ブランドの基調となる焦げ茶とクリーム色にはどんなこだわりがありますか?

Syoyo – 実は、作品の中で完全な白と黒を使っていないんです。私の中で「白、黒といえばこの色」ということでこの2色を使っています。「BLEND ART」を始める前のアナログ作品の頃から一貫してずっと気に入ってる柄なんです。もしかすると、元々ティム・バートンが好きで、その影響もあるのかも知れません。

《NowReading》 / 淡い独特の色味が魅力のひとつ。

作中に登場する架空のブランドとして始まった「SYOYODO」ですが、作品を飛び出してグッズ展開もされています。これからどんな計画がありますか?

Syoyo – 今の段階ではきちんと商業としてはやれていないので、少しずつ拡大していきたいと考えています。以前行ったポップアップでは、作品自体がグッズになったものが多かったんです。ただ、今回の個展「PROTO」では、“SYOYODOのアイテム”という設定でグッズを展開して、明確に差別化しています。

今回のグッズで特に気に入っているものはありますか?

Syoyo – ボールキーホルダーですね。「SYOYODO」のテーマカラーである白黒の縞々の柄が入っています。過去に描いたイラストでも、度々その柄が使われたボールを潜ませていて、そのボールをグッズ化しました。いつか立体化して商品にしたいと考えていたので、すごく嬉しいです。

《Syoyo》 / 「SYOYODO」のテーマにも採用されている縞々や、今回の個展で待望のグッズ化が実現したボールが登場。自身のSNSのアイコンにも設定されている。
イラストの中に度々登場してきたモチーフが、「ボールキーホルダー」として待望のグッズ化。

GAAATと歩んだ、メタルキャンバスという未知

《PROTO》 / 今回の個展のメインビジュアル。

個展の話が出ました。今回、アートブランドGAAATとの協働で初のアート個展「PROTO」が開催されますね。心境を聞かせて下さい。

Syoyo – GAAATさんとは以前、グループ展で一度、既存の作品をそのままMCA(メタルキャンバスアート)化させていただいたことがありました。実物を見た時に、もっと面白い表現、可能性があるのでは、と感じていたんです。だからこそ描き下ろし作品もある今回は、その時感じた表現の可能性を最大限反映できるよう制作に取り掛かりました。

《PROTO》 / 今回の個展のメインビジュアル。MCA特有のエンボス表現を建築様式として再解釈、作品に取り入れている。

特にこだわったところを教えてください。

Syoyo – 「BLEND ART」とMCA、両方の特徴を活かしながら掛け合わせることを意識しました。その上で、MCAの特徴である、立体感、半立体的なエンボス表現に着目しました。MCAの場合、色が少なくてもエンボスで表現できたり、同じ色でもエンボスの影で文字などを作れます。色数の少ない引き算的な自分の作品とすごく相性がいいんです。また、その立体感が、1930年代前後の建築の装飾やデザイン、アールデコやアールヌーボー的な表現にすごくぴったりなのではと考え、そうした建築様式をイラストに取り入れています。

「ただの展示では終わらせたくない」

《Chick》 / 今回の展示への限定描き下ろし作品。この他にも一点もののアートワークが複数展示されている。

「BLEND ART」の重要な要素である「作り手と受け手の関係」を踏まえて、今回の展示設計でこだわった箇所を教えて下さい。

Syoyo – アート個展としては初めてということもあるので、ただの作品展示では終わらせたくないとは思っていました。特に展示会場自体が作品として機能するように、会場の世界観を作り込んでいます。

具体的にどのような仕掛けがありますか?

Syoyo – 「SYOYODO」のアイテムがグッズ化しているので、ショッパーも用意しています。本当のアパレルブランドのショップのように楽しんでほしいです。あとは、普段はSNSを通してデジタルで作品を観ていただくことが多いので、実物の作品として細かいところも鑑賞していただけたら嬉しいです。F20のキャンバスで70センチほどの作品になるので、画質の問題で細かいところが潰れて見えないこともありません。キャンバス特有のアナログ感や色味も、スマホ画面で眺めるものとは違うはずです。ぜひ会場に足を運んで、生で観ていただけたら嬉しいです。

会場では物販も展開。ショッパーは単なる“袋”を超えて、あの「SYOYODO」の商品であることが一目で分かるようデザインされている。

「ここから始まる」という気持ちで

最後に、今後の展望について教えてください。

Syoyo – 特に明確なゴールは決めてなくて。今回の個展をきっかけに、「SYOYODO」や「BLEND ART」の世界観を少しずつ広げていけたら、その最初の一歩になればと思っています。個展のタイトルの「PROTO」も、そういった意味も込めて「prototype」という単語から取っています。自分自身も未だ「BLEND ART」を研究中で、まだまだ色々な表現を試してる最中なんです。これから描きたい表現やラフの段階のものもたくさんあります。その中から面白いと思えることに、積極的に挑戦しながら描き続けていきたいです。

初個展を最初の一歩に、「SYOYODO」と「BLEND ART」を少しずつ広げていきたいと語るSyoyo。「描かない」表現を更新し続けてきたこれまでの歩みは、8月7日から始まる「PROTO」の会場でも、確かに続いていく。ぜひ会場で、その表現を目の当たりにして欲しい。

Syoyo 1st Solo Exhibition PROTO

会期:2026/08/07(金)〜2026/08/17(月)
開場時間:11:00 – 21:00 ※会期、開場時間は変更の恐れがあります。詳しくは公式HPをご覧ください。
会場:MIYASHITA PARK GAAAT GALLERY
住所:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前六丁目20番10号 MIYASHITA PARK South 3階
公式HP:https://gallery.gaaat.com/pages/syoyo?srsltid=AfmBOoq6J37cx6psmKcTPLriGnMT3BJjLH0SmGBdY-v3j-WhUMJ6lLh4

EDIT: Shimako Otake / Ryo Kobayashi

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