【連載】Convenience ART Vol.8「現代アーティスト・オロスコはコンビニをどう捉えたのか」

「コンビニエンスアート」第8回。今回はコンビニにアートを持ち込むのではなく、コンビニをアートにした人物を紹介しよう。

ガブリエル・オロスコ / クリマンズット / メキシコシティ / 2017
ギャラリー公式サイトより

アートの歴史は、終わりのない実験の歴史だ。ある作家はアートを生活に持ち込もうとし、また別の作家は生活をアートに持ち込もうとした。しかし彼らは一体なぜ境界を越えようとするのか?道端で踊るダンサーは通行人にとってはジャマだし、空き缶をカンヴァスの代わりに使うなんてアートとは呼べない気もする…。

しかし「アート」はまさに作家の「生活」に大きな影響を与えており、「生活」はまた表現に影響を与えているが故に、これらを交差させたいのかもしれない。

そうしたアートを取り巻く状況の中で、「コンビニ」を起点としてアートと生活の関係に切り込んだのが、メキシコ出身の作家ガブリエル・オロスコだ。

オロスコの制作手法は、生活に潜むガラクタや雑貨などに少しだけ手を加えてユニークな造形を生み出す。「OROXXO」は、そんな彼がコンビニ全体を素材とした作品で、Oxxoというメキシコのチェーンコンビニ店の隅々に少しづつイタズラするようにして執り行われた。

ガブリエル・オロスコ / クリマンズット / メキシコシティ / 2017
ギャラリー公式サイトより

もちろんこれまでも、アートを生活に取り込む試みはなされてきた。しかしなんとオロスコは、コンビニを「丸ごと」ギャラリー内に再現してしまったのだ。ギャラリーの中にコンビニを作り、その中の商品に手を加えて作品化するという複雑な手順を踏むことで、ただアートと生活がぶつかり合うのではなく、互いに技を掛け合うような状況をもたらす。このように、これまで分けられてきた物事を無理やり繋げることで互いに変化をもたらすのが現代アートのやり方だ。つまり、オロスコの試みは、ギャラリー内コンビニを舞台として、アートと生活の技巧を競わせる格闘技であると言える。

オロスコ側の攻撃は、300あまりの製品に手を加え、コーラやポテチのパッケージを作品化したことだ。具体的には、半円状のシールを規則的にパッケージに貼っただけだ。それはこの架空コンビニのロゴでもあり、商品のロゴに別の造形性を持たせる機能もある。つまり彼は、コンビニのイメージをそのまま自分のイメージで上書きしたのだ、それも最小限の手つきで。なんてクールなんだろう。逆にコンビニ側は、これまで美術が大切にしてきたカンヴァスなどを廃止し、ポテチの袋を素材とさせることで美術に攻撃をしている。

互いに物差しを突きつけ合い、既存の境界線を変えていくことがアートであることが分かっただろうか。

ガブリエル・オロスコ / クリマンズット / メキシコシティ / 2017
ギャラリー公式サイトより

私たちの日常を支えるコンビニの棚。その裏側に、作家のイタズラが潜んでいると想像するだけで、いつもの買い物が少しだけスリリングなものに変わる。

アートは今日も、商品のパッケージというカンヴァスの上で、私たちの常識をひっくり返そうとしている。

EDIT: Yuki Shibata

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