【インタビュー】ずっと一緒さ。トイ作家・カネヒラがつくる世界にひとつ – 前編

ただのぬいぐるみだなんてとんでもない!
見たことあるようで、見たことない、いや、でも見たことあるような気も…。
一言では言い表せない、カネヒラさんの豊かに広がる作品世界。有名なあの“カウボーイ”のように、目を離したらいそいそと動き出してしまいそう。そんなぬいぐるみたちの世界を、ちょっと、覗いてみよう。

「メガネの豆粒ぐらいたち」

頭の中のキャラクターを具現化する

カネヒラさんの活動の出発点を教えてください。

カネヒラ – 元々パッケージデザインがすごく好きで、デザインの専攻がある大学に進学しました。卒業後はデザイン会社に入社して、パッケージやポスターを作っていたんですけど、そこで「何か自分で発信したい」という気持ちが出てきて、今の作品を作り始めたんです。

その時から、現在のような「ぬいぐるみ」を?

カネヒラ – 小さい頃から、頭の中にキャラクターみたいなものがいたんです。活動当初はアクセサリーを作ったりもしたんですけど、その中で、自分がずっと思い描いていたキャラクターたちを誰も見たことないような形で出してみたら面白いかな、と思って始めました。

大学の卒業展示でも、ぬいぐるみを作っていたとお聞きしました。

カネヒラ – そうなんです。「Yogibo」みたいな大きなクッションに目をつけたものを作って。今は写真も残っていないんですけど、あれが原点だったかもしれないです。ぬいぐるみを本格的に作り始めたのは23歳くらいでした。

「信楽焼のたぬきとささくれ」

「大事にしてもらえるものを作っていきたい」

活動当初は「しまいぬ」という名義だったとか。「空想アパートメント」という屋号や、現在の「カネヒラ」という名前に変わっていった経緯を教えていただけますか?

カネヒラ – 「しまいぬ」は、犬が大好きなのに飼ったことがなくて、「もし犬がいっぱいいる島があったら」という妄想からつけた名前なんです。「空想アパートメント」は、頭の中の空想を何階層かにして見せているイメージというか…。「アパートメント」という言葉が好きで、「空想」と合わせてガチャッとくっつけてみました。

最近は「空想アパートメント」から「カネヒラ」という名前に変えられましたね。

カネヒラ – 「空想アパートメント」だと、今の自分にはメルヘンすぎるかなと思って。名前を変えたことで、気持ちの面でも少し変化がありました。「ゆめかわいい」という方向よりも、もっと落ち着いた、大事にしてもらえるものを作っていきたい、という方向にシフトしていきたかったんだと思います。

「ドラゴンフルーツに夢中なぬいぐるみたち」

言葉の「変さ」にアンテナを

カネヒラさんの作品を見ていると、日常の中に散らばっているものがキャラクターになっているような感覚があります。着想はどこから来るのでしょうか?

カネヒラ – ピンとくる瞬間が突然来るんです。言葉にすると難しいのですが、ずっと頭の片隅に「どうしようかな」があって、そこで「こうだ!」となる感じと言うか…。最近だと、“言葉”がすごく気になっています。「ヘマをする」とか「熱を逃がす」とか。逃がされる熱ってなんだろう、「『ヘマ』って何…?」みたいな。不思議だな、変だなと思ったことをメモに書き留めています。

「寝かされたカレー」も、そういった感覚から生まれたのでしょうか?

カネヒラ – そうなんです!料理で使う「寝かせる」という言葉が、まるで人に使う言葉みたいで面白くて。「寝かされているカレー側の気持ちってどんなだろう? 」と考えていたら形にしたくなりました。寝かされているのに目がギンギンだったり、ハラハラしている仕草にも見えるよう表現するのに苦労しました。最終的に「口元に手を当てているようなポーズにしてタッパーに入れる」というアイデアに決めて。タッパーに入っているから四角くなるんですよ(笑)。

タッパーにぴたっととはまっている「一晩寝かされているカレー」

具体的な動物を直接モチーフにすることは少ないですよね。

カネヒラ – そうですね。犬や猫ではなくて、「もの」や「言葉」に動物みたいな要素を入れ込むという不思議な作業をしてます。ただ、人から見て分かりづらすぎたり、伝わらないものにはしないように気をつけています。「共感」も取り入れることが大切なんです。

1人1人の“個性”を大切に。豊かに広がるぬいぐるみたちの世界

カネヒラさんのキャラクターたちには、それぞれの性格やストーリー設定のようなものはありますか?

カネヒラ – 一応、この子はこんな風に考えているんだろうな、とか、この子は素早い動きをするとか、食いしん坊とか、そういう初期設定はあるんです。「インターネットミーム」というピンク色の細長い子と、「スーパーコンピューター」をイメージしたぬいぐるみがいるんですけど、その2人はネットとパソコンのつながりで仲良くしています。他にもSNSの投稿とかで、「この子たち、よく一緒にいるから仲がいいのかな?」なんて想像してもらえると嬉しいです。いつか相関図とか作っても面白いかもしれないですね。

「インターネットミームとスーパーコンピューター」

とは言っても、やっぱり最後は買って頂いた方だけの特別な子になって欲しいんです。持ち主の数だけ“個性”が生まれるというか、「自分のぬいぐるみがこういう性格だ」、というのを好きなように想像しながら楽しんで頂けると嬉しいです。

誰も見たことないぬいぐるみを目指して

唯一無二の世界観が広がるカネヒラさんの作品世界。大人気の抽選販売は毎回見逃せない!

制作の中で、一番大切にされていることは何でしょうか?

カネヒラ – 「誰も見たことないものを作る」ということですね。物ってたくさんあるから、「これ見たことある」って思われたら終わりだな、という感覚がずっとあって。最近はその意識がさらに強くなっていて、悶々としながら考えることも増えました。

それでいて、着眼点は日常の中から来ているんですね。

カネヒラ – そうなんです。まっすぐに整えられた線より、子供が書いたようなカクカクした線に惹かれるように「無作為を作為するのが好き」なんです。完璧すぎると面白くないから、ちょっと抜けてたり、いびつだったりするのがいいなと思っています。

後編では、実際の制作プロセスを深掘りします。大切に生み出した子たちを送り出す時、果たしてカネヒラさんはどんな心境なのか…。ぬいぐるみたちの旅先からの素敵な知らせや、これからの展望、最後には事前募集した質問への回答も。お楽しみに!

EDIT: Shimako Otake / Ryo Kobayashi

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