自分でボケて、自分でツッコむ – おほしんたろうが描く1コマ漫画の世界 【前編】

幼い頃から描いていた絵と、学生時代に右も左も分からないまま上がった芸人の舞台。その2つが交わった時。そしてそこに、少しの隠し味が加わった時____。

お笑い芸人、漫画家、イラストレーターなど、多方面に活躍するおほしんたろうの現在のスタイルに至るまでの軌跡、その創作の背景を紐解くインタビューを前後編でお届けします。

幼少期の代表作『変な人』

初めて絵を描いた時のことを覚えていますか?

おほしんたろう(以下:おほ) – 幼稚園くらいの頃から、チラシの裏とかに絵を描いていたみたいです。ウルトラマンとか、怪獣とか、そういうのが好きで描いていましたね。

幼少期に描いたイラスト。既にかなりシュール…

漫画を描き始めたのはいつ頃ですか?

おほ – それも小学生の時です。たしか学校内のクラブ活動みたいなもので描き始めました。その時には4コマ漫画とかギャグっぽいものを既に描いていた気がします。

オリジナル作品として描かれていた?

おほ – そうですね。元々はどこかで見たやつの真似事だったりしたとは思うんすけど、当時、「変な人」っていうタイトルの漫画を描いていました(笑)。

「変な人」!

おほ – それが代表作です。内容は本当にしょうもなくて、なんかもう、ハゲてるんですよ。変な人が。波平さんみたいな。当時はハゲが変だと思ってたんですよね。 今はもちろんそんなこと思わないですけど、当時は90年代的な価値観でやっていて。それこそ小学生が好きそうな、高いところから落ちちゃうとか、鳥に連れて行かれるとか、そういうやつ。もうほんとにギャグにもなっていないような感じだったと思います(笑)。

「変な人」原画

『月刊コロコロコミック』のような。

おほ – そうですそうです(笑)。

お笑いについても幼い頃から好きだったのですか?

おほ – あまりお笑いの番組とかを観ない家庭だったんですよ。ダメとは言われないけど、あんまり観ない方がいい?みたいな空気というか。だから中学生の時もあまり観てなかったんですけど、「オンエアバトル」とかが流行りだして、おぎやはぎさんのネタをたまたま観たんです。それがすごく面白くて。そこで一気に興味が湧きました。

“シュールな笑い”の原体験

いわゆる王道のギャグ漫画から、現在の作風に至ったきっかけはありますか?

おほ – たまたま中学の時に『ファミ通』を読んで、それがめっちゃ面白くて。 シュールとか不条理っていう立ち位置だっていうことも分からないまま、「なんだこれ!?」みたいな。夢中になって読んでいたんですけど、次第に自分も参加してみたいと思うようになって。投稿コーナー、採用されたら掲載してもらえるコーナーがあって、自分でも投稿するようになったんです。週に1回発売されるやつに載っているかどうかっていうのが本当に楽しみで、それが青春でした。それが多分、今に繋がる感じの漫画を描き始めたきっかけです。

『ファミ通』投稿時代。当時は塩味電気というペンネームで活動していた。
2枚目の画像では、憧れていたという、とがわKさんの隣だ!

人前でやるっていうことに関しては、お笑いよりも漫画の方が先だったんですね。芸人としての活動はどのようにはじまったのですか?

おほ – 大学時代にコントをやったのが最初ですね。

やっぱりおぎやはぎさんとか、いわゆるちょっとシュールなネタですか?

おほ – いや、最初はもう全然。オーソドックスな感じだったと思います。本当に何もわからなくて、なんかそれっぽいものをやるしかないというか。見よう見まねでやってましたね。でも好きなのはやっぱり、ちょっと王道から外してあるようなものが好きだったので、おのずとそうなっていったというか、結局自分の気持ちが乗ってやれる方向のネタにはなっていったと思います。

謎のバイトをした学生時代、新卒から芸人へ!

大学時代は何かアルバイトをされていましたか?

おほ – 病院の検査で、検尿弁とか色々あるじゃないですか。血液検査とかで採取された、検体って言うんですけど、その検体を検査するための培養に使う寒天のシャーレみたいなのがあって、丸いやつ。どんな菌がいるか調べるんですよ。例えば尿だったら尿をそこに塗り広げる。っていうバイトをしてました(笑)。

めちゃくちゃシュール!そんなバイトがあるんですね(笑)。

おほ – 僕も知らなかったです(笑)。最初は抵抗あるんですけど、単純作業ですぐ慣れちゃいました。白衣着て手袋して、淡々と塗っていくっていう(笑)。

九州大学のご出身ですけど、将来についてのイメージとか、芸人を目指す決め手は何でしたか?

おほ – 本当に何も考えていなかったです。サークルとかは楽しかったですけど、就職とかは全く考えずに過ごしてました。会社に入ってうまくやっていける自信もないし、働きたくもなかったですね。

芸人になろうとは思わなかったんですか?

おほ – なりたいけど、大阪や東京に行く度胸がなくて。大変そうじゃないですか?行ったこともなかったですし。ただそのタイミングで、今いる事務所が九州に事務所を作るっていう話が出てきたんです。地元のアマチュア芸人をスカウトして、事務所に入れますよ、みたいな番組に参加して、今に至ります。

『ファミ通』、おぎやはぎ、ナゾのバイト…。
育まれてきた“シュールさ”への感性は、交わることのなかった別々の領域___お笑いとイラスト___を、本人も気付かぬうちに曖昧にしていった。そしてその2つが明確にブレンドされたのは必然だったのかもしれない。後編では、異なる領域の混ざり合った独自の“おほしんたろうスタイル”を紐解いていく。

【インタビュー】絵で食べていくということ – GODTAILの歩んだ軌跡 – 後編

物心ついた時から絵を描いていたというGODTAIL。株式会社GODTAILを立ち上げ、今や活躍の場は、デザイン・演出・編集・広告・筐体デザインにも及び、存在感を放っている。『MARVEL/DC公式アーティスト』 も務める彼のこれまでの軌跡、業界での20年間を振り返るインタビューを前後編でお届け。

B – 会社からの独立の決め手を教えてください。

GODTAIL – 既にほとんど自分でやっているような感じで、ノウハウもあったし、色々やってみたいっていう感覚でしたね。今までの会社でのお付き合いもあったし、自信もあった。だからとりあえず独立してやってみて、ダメでもどこかしらの会社には入れるだろうと思っていました。

B – 趣味として絵を描き始めたのが、仕事になっていくにあたって、その境界線というか、意識の変化はありましたか?

GODTAIL – もちろん趣味の絵と仕事の絵は違うなっていうのもあったし、売れる構造っていうのかな。本当に実力があって売れる人ももちろん一握りいるとは思うんですけど、それ以外にもあると思っていて、例えば大きな企業さんに採用を頂くだとか、要は世間に知られないと、流行らないといけないんですよ、食べていく為には。上手かろうが、そうでなかろうが、まずはそこを抑える。その上で、オリジナルのものとか、誰もやっていないけど見たことあるようなものを狙って作っていました。自分のオリジナルキャラクターを、いきなりバーンって出したって売れないわけですよ。誰も知らないから。台本なりCMなり、結局要は仕組みがあるわけです。流行らせる仕組み、プロセスというか。もちろん突発的に、これいいなって流行ることもあるとは思います。ただ、今売れてるものって何かしら仕掛けがある。絶対的な誰かの力だったり大企業とかの力が発生している。それが良い悪いとかではなくて、そういう面はやっぱりあります。

B – ある程度流れだったりとか、業界の雰囲気を汲みつつというか。

GODTAIL – あくまで結果を出していかないといけないと思っていますね。そういう流れを気にしないで、一筋通してずっと自分の絵柄でやってる方ももちろんいらっしゃいますけど、僕はそういう生き方じゃなかった。

B – 逆に言うと、色々な描き方をするには、自分の手札というか、技術がないとその流れにうまく乗っていけないですよね。

GODTAIL – 描けているのかは分からないですけど、生きていくために一生懸命やっているっていう感じですね。天才じゃないから。

B – 天才ではない?

GODTAIL – ないない、全然。人よりやらないといけないタイプだからこそ、どうしたら生き残れるかを常に考えています。今も会社をやっているから、社員を食わさなきゃいけない。

B – 例えば自分のエゴというか、絵を描いていたら、こういうのを認めてほしいっていうのもあるじゃないですか。

GODTAIL – 自分のオリジナルで売れたいのはもちろんありますし、もちろんね、当てたいですよ。ただ、最近の人はやっぱり上手いし、達者だなとか思うこともあるから。

B – その考えに至るまでに、例えば具体的に大きな挫折があったのですか?ある意味自分が天才じゃないと諦めたというか。

GODTAIL – 諦めてないのは諦めてないんだけど、やっぱり、何だろうな。一線があるというか、ちょっと雰囲気が違う。一個何か違うんですよ。感覚的なものなんですけど。

B – でも、それが分かるっていうことは、ある程度近いレベルにいないと、それすら理解できない気もします。

GODTAIL – だからやり続けないとなって感じです。時代は変わるので、それに対応していかないといけない。上手い子なんかどんどん出てくるし。でも、じゃあそれで諦めるのかと言ったら、そうじゃないけどね。自分なりに対応して、合わせていかないと。

B – どうしたら絵は上手くなりますか?

GODTAIL – どうなんだろう。まだ全然だけど、向上心では終わりがないですね。ものづくりは終わりがないっていうのがありますし、どんどん新しい子たちが出てきて、刺激がある。何歳下でも、すごいなって子はたくさんいますから。だからずっと描いてますよ。旅行に行った時とか以外は基本的にずっと描いてます。何かしら仕事を頂けているし、自分のオリジナルキャラクターだったりイラストも描きたいし。描いていない日が無い。

B – しんどくなったり、行き詰まることはありますか?

GODTAIL – もうそれがナチュラルになっているから、描いている方が逆に楽なんです。慣れちゃってるというか。

B – Instagramでの作品投稿もかなりの更新頻度ですよね。スピードとかは意識されているんですか?

GODTAIL – というよりは、描いたものをアップしているだけですね。僕の先輩も54歳ぐらいだけど毎日アップしてるし、それが普通くらいの感覚ですね。

B – 基準がすごく高いというか。

GODTAIL – やっぱり天才じゃないから。

B – それでもここまで長きに渡って、絵を描くことを仕事としてやってこられてるわけじゃないですか。長期的にキャリアを維持する上で、何か意識されてることはありますか?

GODTAIL – チャレンジ精神かな。向上心を持っていろいろやっていかないといけない仕事だと思うんです。どんどん進化していく業界じゃないですか、それこそAIとかもそうですし。

B – 参考にしていたり、影響を受けた人はいますか?

GODTAIL – たくさんいますよ。子供の頃は『ドラゴンボール』が好きで、鳥山明先生とか、固定はされていたんですけど、この年になるにつれて、それこそ今の若手のイラストレーターの方もそうだし、身近なイラストレーターの方だったり無名なイラストレーターの方でも、上手い人は上手いから。視野が広くなったというか、誰にでもいいところはあるから、そこから盗める要素はありますね。

B – GODTAILさんにとって、良い絵ってなんですか?

GODTAIL – 良い絵か。「絵が描けないです」って言う人いるじゃないですか。正直言って、手を抜かないで真摯に描いてる絵とか、楽しんで描いている絵はいいですよ。「私は描けない」って言うけど、例えばキリンを描く、一生懸命キリンを、5、6時間かけて描いたら、それはすごくいいと思う。絵の基本はそこなんじゃないかな。

B – 確かにそうですね。絵に限らず、ものづくりにおいてはそういうところはありますね。

GODTAIL – もちろん技術が高いとかもありますよ。ただ、それだけじゃない。絵の根本って、描ける、描けないじゃないかな。売れる、売れないももちろんあるし、かっこいい、かっこ悪いとかもあるけど、絵そのもの自体は、もっと奥底にある心の部分というか。商売になるかどうか、商業的かどうかっていうのはまた別の話になってしまうけど、その、心というか、その人がどれだけ一生懸命やったかは、大事だと思います。

B – 最後に、今後の目標とか、今の野心を教えてください。

GODTAIL – 僕もう50歳なんですよ。だから、だいたい一生懸命かけるのがあと10年弱くらいかなと思っているんですけど、そこまでにIPキャラクターを作りたいかな。自分のオリジナルキャラクターを、自分の会社で出したいっていうのはあります。

B – やっぱり限界まで描き続けたいっていうのはあるんですね。

GODTAIL – そうですね。でも、絵描きは誰でも言うと思います。絵描きながら死ぬんじゃないかな。

【インタビュー】絵で食べていくということ – GODTAILの歩んだ軌跡 – 前編

“絵を描く”ことで食っていこうと頑張っている弱冠ハタチの友人が、僕にはいる。

そのひとつのカタチとして現在はアニメーターを志しているようで、そんな彼の動向を通して僕は、アニメ業界をはじめ、様々な「絵」に関する仕事の、特に外からは伺い知れない「お金の話」を興味深く聞いている。少し前、「好きなことで生きていく」というコピーがYouTubeに溢れた時期があった。夢を追うということの本当の意味、生々しい現実感は、キャッチーで耳障りの良いその言葉によって画面から押し出されてしまった。

絵は、夢は、甘くない。

アートとお金の話は折を見てするとして、ともかく「好きなことで生きていく」である。これに、正解や正攻法は、きっと無い。答えは本の中にも、あるいは誰も持ち合わせていないのだろう。ただ、ヒントを得る事は出来る。いや、むしろヒントはどこにでも転がっているのかも知れない。そう、ゴミ箱にだって……。

物心ついた時から絵を描いていたというGODTAIL。株式会社GODTAILを立ち上げ、今や活躍の場は、デザイン・演出・編集・広告・筐体デザインにも及び、存在感を放っている。『MARVEL/DC公式アーティスト』 も務める彼のこれまでの軌跡、業界での20年間を振り返るインタビューを前後編でお届け。

GODTAIL インタビュー前編

B – まず、絵を描き始めたきっかけを教えてください。

GODTAIL – 物心ついた時から描いていたと思います。自分ではあまり覚えてないですけど、幼稚園に入る前から描くのが好きだったみたいですね。

B – それからずっと絵は描き続けていたのですか?

GODTAIL – そうですね。学校の休み時間に描いたりしていました。友達に頼まれて『ドラゴンボール』のキャラクターを描いたり、オリジナル作品も描いたりしていました。

B – ストーリーの創作もされていたんですね。

GODTAIL – 完全に友達のウケ狙いです。だから、黙々とやるというより、絵が上手いやつっていう風に見られていて、友達を変に描いて腐すじゃないですけど、そんなことばっかりやっていました。先生の顔を伸ばして描いて、それで友達を喜ばせたり(笑)。

高校時代の自作漫画

B – 当時は将来の夢とか、何がやりたいとかはあったんですか?

GODTAIL – 絵ではなかった、絵はなかったですね。単なる趣味として描いていました。

B – 大阪芸術大学への進学はどのタイミングで決意されたのですか?

GODTAIL – もともとアルバイトで引っ越しをやっていたので、そのまま就職しようかなと思っていたんですけど、友達に「芸大受けてみたら?」って言われて、旅行がてら試験を受けに行きました(笑)。映像学科なんですけど、別に絵が上手くなくても絵コンテが描ければ受かるみたいに言われていて、漫画は学生時代から描いていたから、それで描いたら受かりましたね。

B – 凄いですね(笑)。大学ではどういったことを学んでいましたか?

GODTAIL – 映像学科なので、映画見るくらいしかしてなかったですね。絵に関して何か教わったとかはないです。今まで通り、ただ単に描いていました。どちらかと言うと発想が命なのかな。オリジナルの発想、ストーリーの展開を頭で考えるとか、そういう学科でしたね。

B – そういった内容を扱う学科だったんですね。当時は将来の展望というか、どんなイメージでしたか?

GODTAIL – 何もない、バイトばかりしてましたよ。ほんとに色々なバイトをしていたので、何かしらでやっていけるとは思ってました。ただ、周りが就活してるっていうので、自分もやってみて、結果的にゲーム会社に就職しました。それも絵を描く側とかキャラクターデザインっていうよりかは、プランナーとしての仕事でしたね。プランナーの中では描ける方だったから、そういうところは狙ってはいました。

B – そこは計算があったんですね。

GODTAIL – ある程度は。新しいキャラクターデザインのイメージとかを伝えたい時とかって、字で書くよりは絵で伝えた方が早いわけじゃないですか。普通はプランナーって絵は描かないけど、「こういうポーズでこういう風に描いてください」とかっていうのを、絵で指示出来た。

B – 絵で食べていきたいとか、直接的に絵を描く仕事をしたいっていう意識はなかったんですか?

GODTAIL – 絵はずっと好きだったし、上手くはなりたかったんですけど、それまではきっかけがなかった。ただ、ゲーム会社で色々なデザイナーの方を見たり、一緒に仕事をしていく上で、そこでようやく意識し始めるというか、絵で食っていきたいなとは思うようになっていったと思います。

B – 具体的にはどんなことから始めましたか?

GODTAIL – デザイナーの方たちが、デッサンとかラフをゴミ箱に捨てるんですよ。ちょうど僕がゴミ当番をやっていたので、それをかき集めて、ホチキスで留めて、自分で教科書みたいにして、それを見ながら練習していました。当時はインターネットなんかないから、本を買うしかない。でも、本買うお金もそんなにないし。

B – 捨ててある物だけど、ある意味全然ゴミではなかったというか。

GODTAIL – うん、そうですね。教科書みたいな。パッと見て、いいなとか、上手いなと思ったやつをかき集めてました。

B – そのあたりから、本格的に絵を描き始めたんですね。

GODTAIL – そうですね。やっぱり絵がいいなぁと思って、仕事しながら毎日描いてました。あとは、仕事の絵とはまた全然違うキャラクターとか、そんなのを描いてたと思います。オリジナルキャラクターとかを描いて、南の道頓堀とかに売りに行くんですよ。今は多分ダメだけど、当時は橋の上でクリエイターがズラーっと座っていて。そのエリアだったりとか、路上売りみたいなことをみんなやっていた時代がありましたね。

B – 凄い光景ですね、見てみたかったです。

GODTAIL – 当時はホームページとかも無いから、手で売ったり現場に行って自分の絵を見せるっていう時代でした。もちろん今はダメだと思いますけど。

B – 贅沢な話ですよね、だって原画っていうことですよね?

GODTAIL – 原画もだし、あとはプリンターを買ってプリントしてとか。でも全然売れないですよ。

B – そういうものなんですね、

GODTAIL – 売れない売れない。だから、キャラクターとかを描いても売れないんだと分かって、いろいろ試行錯誤して、なんとかお金にしたいなと思った時に、クレパスで描いた似顔絵が売れだしたんです。

ひっかけ橋で描いていた似顔絵

B – 学生時代に友達を喜ばせる為に絵を描いていたのと通ずるところがありますね。誰かに喜んでもらう為に描くというか。

GODTAIL – そうかもしれないですね。

B – そうしてゲーム会社を経て、パチンコパチスロ業界に行かれたと思います。具体的にはどんなことをされていましたか?

GODTAIL – 企画からデザインから、全部やっていました。図柄だったり盤面のデザインだとか、印刷方法とかもそこで覚えました。元々映像学科時代に監督みたいなこともやってたんですよ。企画して、撮影して、編集してっていうことを全部やっていたから、まあ、それに近い感覚ですね。写真を企画して、内容を企画して、自分でデザインして、そのキャラクターの図柄を揃えるっていうような物を作っていました。キャラクターの色数も当時は16色とかに限定されていたので、その中で遊んでいました。

B – 遊び心というか。

GODTAIL – やりたいことを混ぜながらやってたわけです。

B – ひとりで最初から最後まで全部やられてるみたいな感じだと思うのですが、相当大変ですよね?

GODTAIL – 大変ですよ、今は無理だと思います。際限ない量だし。楽しいというか苦しかったですね。もう夜中なんて当たり前だし、今だったらもうブラック企業ですよ、休み無いし。寝泊まりするのが当たり前の時代でした。

B – そんな中で、どうして7、8年も続けられたんですか?

GODTAIL – オリジナルを作って、一発当てたかったっていうのがありました。自分の手で当てたいっていう野心はすごくあったし、頑張ってたかな。一発当てれば夢があったような気がした。そういうのもあって、ずっとオリジナルのものを作り続けてましたね。

ゴミ箱に、橋の上に、路上にと、あらゆるところにチャンスを見出してきたGODTAIL。そうした場所を経由しながら、遊びから仕事へと、徐々に活躍の場を移しつつも、根底にあって変わらないのは“人を喜ばせたい”という気持ち。後編では、独立して会社を立ち上げ、今に至るまでの軌跡から、彼にとって「良い絵」とは何なのか、斬り込んだ内容をお届け。

OSAKA INTERNATIONAL ART 2025:取材レポート

「OSAKA INTERNATIONAL ART 2025」が、2025年5月31日、6月1日の2日間で開催される。大阪城ホールを舞台に、「大阪でアートを買おう」と銘打った、国際的で大規模なアートフェアで、およそ115ものギャラリーが参加している。特筆すべきはその4割弱が海外からの参加となっていること。アートを取り巻く環境の好循環を生み出すと共に、アートを通じて“文化”と“経済”の交流に繋げるイベントとして、今回が初めての開催となった。


会場の様子


普段なかなか観ることすらできない作品を、“買う”ことを念頭に楽しむことができる。マルク・シャガール、アンディ・ウォーホル、岡本太郎、草間彌生、コシノジュンコ…。言わずと知れたマスターピースに加え、海洋堂による「銅合金 シン・ウルトラマン」や、COOKIE(お笑い芸人 野生爆弾 くっきー!)による作品、日本が誇るバーチャルシンガーソフトウェア『初音ミク』による「ART OF MIKU」など、様々な文脈でのアート作品が立ち並んでいる。


マルク・シャガール / 画家と婚約者


「展示会ではありません」と、総合プロデューサーを務めた來住尚彦氏は語る。では、このイベントは一体全体何なのか。気持ちよく言い切ってしまうと、こういうことだと思う。

「商いの街、大阪の地で、アートを使って金儲け」

これが、簡略化した本イベントの姿かたちだと思う。素敵だなと思うのだが、おそらくこのように書くと、拒否反応、反感を持つ人が多いのだろう。

そして他でもない、一連のこうした感情の動きが、今の世相に示唆的であり、このアートフェアの提起する本質だろう。

例えば同時期に開催されている大阪万博は、博覧会であり、博覧会と検索をかけると、「種々の産物を陳列して公衆に見せ、販路拡張と改良進歩を目ざして開く会」とある。販路拡張の側面こそあれど、そこでは、あくまで“お披露目”という色が強く出ている。

対して、今回のOIAはアートフェアだ。フェアとは、市、即売会としての色が強く、さしずめ“お買い物”といったところだろうか。

ここで重要になるのが、では実際に自分が買うか、買えるか(お財布的に)ではなく、「アートを購入することが出来る“場所”の用意があります」という意思表示、機会の提供が成されたということだ。

ここには2つ、重要な意義がある。


「銅合金 シン・ウルトラマン」 / 原型制作:木下隆志

アートは美術館だけのものじゃない

もちろん、イベントのみならず、都内を筆頭に全国のあちこちには、店を構えた画廊やギャラリーが点在している。そこでは、アートを買うことができるし、在廊していれば、作家本人が、気さくに喋りかけてくれたりもする。恐らく訪れたことのない方のイメージを大きくかけ離れた、誰でも楽しめる場所が広がっている。そういった所に興味を持つきっかけとして、こうした大規模かつ国際的なアートフェアの可能性は大きい。マルセル・デュシャンを筆頭に、現代アートの文脈が明らかにしつつあるのは、「高尚なアート」の溶解だ。普段、お洒落な服を買うように、素敵な雑貨で部屋を飾るように、アートだって、買って所有して、楽しむことができる(普段の買い物と比べると、0が3つほど違うのには目を瞑るとして…)。お金を払えば手に入るもの、お金では買えないもの。後者としての印象が強いアートが、「買える」となると、その意味は、存外深い。このことは、アートが高尚なものだという固定観念を壊す一助になっていると言える。

アートというアカデミーを、エコノミーに

それにしても、アートに限らず、好きなことに、ちょっとお金を払わなさ過ぎやしないか。サブスクリプションの台頭は、確かに利便性こそ高めた。だが、月に1度、月額料金を支払えば作品が見放題、聴き放題というシステムでは、1作品ごとに、「お金を払っているんだ」という感覚を少しずつ、しかし確実に薄めている。1枚ずつCDを借りていた頃とは、そのありがたみは薄れ、お金を払うことがリスペクトである、ということが綺麗に忘れ去られている。その末路、問題が顕在化したのが、虚しくもSNSに溢れかえる、違法アップロードされた作品の数々だ。逮捕者が出るなど、大きな社会問題に発展している。『週刊少年ジャンプ』の発売日になると必ず、お気に入りの作品を立ち読みする人が現れるが、窃盗罪での逮捕者が出るのも、そう遠くない未来で十分あり得る話に思える。だが要点は、法を犯しているか否かではない。それって本当に「好き」なのだろうか?クエスチョンマークがぐるぐると、虚しく回り続けている。


COOKIE / Ticty


そして、イベントを翌日に控えた前日囲み取材では、総合プロデューサーである來住尚彦と並んで、コシノジュンコが登壇した。

コシノジュンコは次のように語る。

大阪万博と同時期に開催できるという、タイミングがすごく良かったなと思います。世界からたくさんの作品が大阪に集まるということは、 芸術家もまたここ大阪に集まるということ。この街がアートに触れる機会を深める第一歩だと思います。

これまでも彼女が述べてきたのは、人と話したり、連帯することの重要性。

大阪万博と同時期に開催することにより、より大きなアートの流れを、大阪の地で巻き起こそうとしている。その時に忘れてならないのは、僕の誤読でないならば、OIAが提起した、アートは買える、身近な楽しみの一つであるということ。そして、お金を払うことはリスペクトであり、素敵なことだということ。もっと言うと、これを素敵なものという認識から、当たり前のことであるというレベルにまで押し下げていく。そうした連帯が求められている、そんな気がしてならない。



OSAKA INTERNATIONAL ART は下記会期で開催中。

初のアート展「冒険につき」──高野洸が選んだ“もうひとつの舞台”

2009年、『天才てれびくんMAX』が開催した全国オーディションを見事に勝ち抜き、『Dream5』として芸能界に名乗りをあげた高野洸。『妖怪ウォッチ』のエンディングテーマ、『ようかい体操第一』で一世を風靡した。それからはや10年__。子役からの大成は難しいという一種の定説を、彼は颯爽と飛び越えてみせた。

かつて「ようかいでるけんでられるけん」と踊っていた青年は、今や、音楽、ダンス、舞台、映画、ドラマと、ジャンルを飛び越えてその才能を遺憾無く発揮している。そしてその才能は、アートの形をとっても、怯むどころか一層輝いているから、もはや嫉妬すら覚えない。

アートブランドであるGAAATとのコラボレーションにより実現した、高野洸にとって初めてとなる個人展「冒険につき」1

会期は2025年5月22日から5月28日の7日間で、高野洸の描いた水彩画の原画をはじめ、アートブランドGAAATとのコラボレーションで実現したMCA(メタルキャンバスアート)作品群を間近で観ることが出来る。会期中はこの機会に限定制作された作品をオンラインにて抽選販売も実施中とのこと、こちらも要チェックだ。

そして2025年5月23日、本展示を祝したトークイベントが開催。今回は定員80名を遥かに超える応募があったとのことで、来られなかった方々に、当日のお話の一部をQ&A形式でお届けする。

高野洸「冒険につき」トークイベントの様子

Q – そもそも絵を描いたり、アート活動を始めたきっかけはなんだったのですか?

A – 小さい頃から絵を描くのが好きで、自由帳に描いたりしていました。小学生の頃はクラブ活動でイラストクラブに入っていて、授業中とかも描いたり(笑)、あとは家族でお絵描き大会をやったりしていましたね。

Q – どういった気持ちの時に絵を描きたくなりますか?

A – 仕事させてもらっている中でも、例えば絵に触れた時などに、より描きたい欲が高まると思います。

Q – 美術館に行くとか、そういうことですか?

A – そうですね。美術館の展示企画とかはSNSで見つけて行くことが多いです。普段はインドアなんですけど、そういった場所に足を運ぶこと自体は全然苦ではないですね。

Q – 最近行かれた展示会や美術館はありますか?

A – 国立西洋美術館での、「西洋絵画どこから見る」に行きました。

Q – 高野さんにとって、芸術やアートを鑑賞したり、ご自身で描かれたりという事はどんな意味を持ちますか?

A – 好奇心を満たしてくれるものですね。あとは、感銘を受けたりするものです。行ってよかったなと思うような。そうした絵は、印象深く焼き付いていますね。

Q – 好きな作家やアーティストはいますか?

A – 鳥山明です。僕はゲームがすごく好きで、ドラクエが好きなんです。子供の頃ドラゴンボールも毎週観ていて、この二つを本当に同じ人が描いているんだ!と感銘を受けました。自由帳とかにはドラゴンボールの絵を描いていましたね。あとは生で観たモネの睡蓮は本当に凄かったです。印象派も、写実主義も、色味などに惹きつけられる作品は凄く好きです。あとは昔の人物画に出てくる人の纏っている服装を見ることも好きですね。

2025年1月〜3月にかけて、大阪・宮城・愛知・福岡・東京で開催されたイベント【皆様が激写したご当地写真を高野がデッサンしながらティータイム】で描かれた作品。イベント中では完成していないので今回が完成作品初お披露目。大阪の回で描かれた写真の撮影者がトークイベントに参加。イベントでは、迷いなくスラスラと描き進めていったそう。

Q – ご自身としては初のアート展ということで、やろうと決めたきっかけはありますか?

A – 別のイベントで水彩画を描いていて、それを展示してみたいとは思っていたんです。あとは、最近本当に絵が好きで、特に絵を描く時間とか、美術館に行く時間がたくさんあったんです。そういったことがあって、個展を開くのは一つの目標というか、夢でした。

Q – 今回、高野さんに描いていただいた原画が、MCA(メタルキャンバスアート)という、アートブランドGAAATの手掛けたオリジナルアート作品に生まれ変わりました。金属製のキャンバスに独自の技術加工を施すことで、長く美しさを保つように作られています。特徴としては、光の角度によって見え方が変わったり、立体的なテクスチャーに加え、重厚感や耐久性を備えています。実際にご覧になって、いかがでしたか?

A – あまり見たことのないもので、生で初めて見た時に本当にすごいなと思いました。僕の描いた一個一個の線を反映してくださったり、立体感や鮮やかさ、メタルならではの良さがあって素敵に仕上がったと思います。プリザードフラワーが凄く好きなんですけど、同じように、ずっと長持ちしてくれるのも嬉しいポイントですね。

Q – 水彩画に関しては、高野さんが3月まで行っていたツアーの会場で、ファンの方が撮影した写真の中から、会場ごとに1枚ずつ選んで描かれていたものですが、苦労した点や、こだわったポイントはありますか?

A – 素敵な写真ばかりだったので、苦渋の選択というか、どの会場も写真選びが大変でした。「愛知」に関しては、行きの新幹線で、雪化粧の富士山を見ることができて、描きたいと思いました。ちょうど用意してあった絵の具の中に銀色のものがあったので、それも追加で入れて、かなりキラキラした絵になったかなと思います。

「25.02.23_愛知」ライブツアー中に行ったイベント「皆様が激写したご当地写真を高野がデッサンしながらティータイム」にて、愛知付近の写真をハッシュタグで募集し、選んだ1枚をイベント内でデッサン。その日、2/23は富士山の日であったこともあり、この写真をセレクト。上空からの富士山も、大きくて神々しい。初めて水彩絵の具のシルバーを使ってみました。

Q – ツアー中ということもあって、時間が限定されている中での創作だったと思いますが、大変でしたか?

A – そうなんです、すごく難しくて。1枚に掛けられる時間が30分程で、しかも水彩もかなり久しぶりだったので。鉛筆の線、結構筆圧が強かったのか、残るなっていう印象はありましたけど、それも意外と悪くはないかなと思いました。

Q – 今回のアート展のために描いていただいたデジタルアートの作品では、コンセプトや作風は何か意識されていましたか?

A – タイトルを「冒険につき」にしたいなっていうところから始まって、それに伴ってイメージして描いていきました。

Q – この中でも一つ選んでいただいた作品がこちらの「はじまり」ですが、どういった作品ですか?

A – RPGの世界観が好きなので、道が続いて広がっていく絵の中で、同じようにみなさんの中で想像が広がるような絵を描きたいとは思っていました。ただ、とりあえず木を描き始めたらかなりでかくなってしまって、それが逆に面白い感じになったと思います。

「はじまり」はじめに完成しました。キャンバスをダークグレーに染め、白ペンを取り、何も考えず描き出したでかいと、描きたくなって描いた城。一番しっくりきた空と雲の色。

Q – 全体的にはどのあたりが難しかったですか?

A – 空は悩みましたね。雲のニュアンスが難しくて、何度も描き直しました。背景の色との兼ね合いもあって、細かく塗るかっていうところを、あえて雑に、一番太いペンでバッて描いたりもしました。デジタルアートだと、この細かいドローイング次第で印象が全然変わってしまうので、何百回と試して、良いニュアンスが出たものを使っています。「冒険へ」に関しては、背景が黒いところも、理想の黒になるようにかなりこだわりました。枠外は暗めだけれど、若干明度を上げて、ダークグレーのような感じにして、洋服の部分は若干カーキに近い黒を使いました。MCAでは、その辺りの微妙なニュアンスも再現されていたのでよかったです。

「冒険へ」最後に描いた一枚。僕のマスコットキャラクターであるアドラと一緒に、アートの冒険へ。

Q – ご自身の絵を通して、特に何か伝えたい事はありますか?

A – たくさんの方に絵に関心を持ってもらいたいです。僕の絵を観て、少しでも絵に興味を持つ人が増えたらいいなと思います。

Q – それは高野さんご自身に興味を持ってもらうというよりは、「絵」というものに対して興味を持ってもらうということですか?

A – そうですね。自分の活動を通して、少しでも「絵」の面白さっていうのが広まっていけば嬉しいです。

Q – 今後どんなものを描きたいですか?

A – デジタルアートだったり、自分の個性がどこかで出ているものがいいなとは思っています。色々とチャレンジもしたいのですが、水彩画や油絵、デジタルアートだったり、デッサンなど、色々な描き方を模索しつつ、描きたいものを描いていけたらと思います。

Q – あくまで楽しくというか。

A – そうですね。その楽しさを、多くの人に知ってもらえたら嬉しいです。

Q – 最後に、会場に来られなかった人の為に何か一言お願いします。

A – 今回はトークイベントということで、話がメインという部分はもちろんあったかもしれないですが、絵は、実際に観ることで想像を膨らませて楽しんでもらえるものだと思っています。特に今回お話したこととしては、MCAの素材もすごくいいですし、水彩画も、MCAと並べてみると逆に良さが分かったりして楽しいと思うので、是非会場に来て、間近で作品を観て頂けると嬉しいです。僕の作品を観てどう思うかというところは、皆さんに委ねたい部分です。色々と想像を膨らませたりしながら、純粋に楽しんで貰えたら嬉しいです。

型にはまらず、縦横無尽にその才能を発揮している高野洸。かつての「妖怪ウォッチの人」というイメージは、もはやとうに薄れつつある。彼は、昔、ではなく、間違いなく今を生きている。そして、27歳の才能あふれる凛とした姿は、その視線の先は、来る未来を、楽しげに、しかし確実に見つめている。高野洸の今後の活動から目が離せない。




会期中はオンライン抽選販売を開催!

【皆様が激写したご当地写真を高野がデッサンしながらティータイム】のイベントにて、制限時間がある中で生まれた6点の「水彩画の原画」に加え、
「水彩画の複製Metal Canvas Art」、さらに「『冒険につき』」をテーマに書き下ろした新作4点」を
加えた、全10作品を抽選販売いたします。

受付期間:2025年5月22日(木)13:00 ~ 5月28日(水)23:59
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抽選販売特設ページ

  1. 高野洸 × GAAAT アート展『冒険につき』
    2025年5月22日(木)〜 5月28日(水)
    ※開場時間は日程によって異なります。
    5/22(木): 13:00 – 19:00
    5/23(金)〜 5/27(火): 12:00 – 19:00
    5/28(水):12:00 – 17:00


    BABY THE COFFEE BREW CLUB
    東急プラザ原宿「ハラカド」3階 GAAAT ギャラリー
    〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6丁目28-6 キュープラザ原宿 3F

    ↩︎

見えない顔、見える感性 – ORIHARAが紡ぐ人間の複雑さ 【後編】

強さの奥にある儚さや、意味ありげな表情。全体を覆う毒々しい雰囲気の奥に垣間見えるのは、悲哀なのか、一種の諦観なのか。ORIHARAの繊細なタッチが織りなす繊細な描写は、観る者に何かを訴えかけてくる。細かなニュアンスが全体の印象を作り上げるといういわば正当な順序からちょうど逆転するように、作品を前にして感じるファーストインプレッションを、細部の微妙な表現により裏切り、解体する。人間は複雑な生き物だ。人一人を、イラストというカタチで真摯に描こうとするORIHARA。相反する要素を、なんら矛盾なく共存させてしまう彼女の仕事ぶりは、むしろ正当であり、それ故に末恐ろしくもある。Adoのイメージディレクターも務める彼女は、開催を間近に控えた「OSAKA INTERNATIONAL ART 2025」にて個人制作としては初となる展示を実現。イラストレーターやイメージディレクターなど、型にはまらない彼女の作家としてのあり方、その精神性に迫るインタビューを前後編でお届け。

私の肖像

B- イメージディレクターとしての仕事では、他人に入り込む感覚だと思うのですが、自分がブレるというか、自分との境界が曖昧になるような、そういった瞬間はありますか?

ORIHARA- 自分のことを考える時間が少ないというのはあります。昨日食べたもの何一つ覚えていないのに、他人の話は全部覚えているみたいなことはありますね(笑)。

B- それはちょっと休んだ方がいいかもしれないですね(笑)。

ORIHARA- 元々自分の感情を外に出すのは得意じゃないというか、自分の感情を作品にして誰かにぶつけることへの価値というのが測れていなくて、この作品を出す価値ってなんだろう?この作品を表に出すことによって、誰にとってなんの意味があるのだろう、とか考えますね。同じ作品でも出す時間によって価値が全然変わってきてしまったりもするので。

B- なるほど。ご自身の話で言うと、多くの人がORIHARAさんの作品を一度は目にしたことがあると思います。そんな中で、顔出しはされていないじゃないですか。普段の自分と、一人歩きしていく「ORIHARA」との乖離を感じることはありますか?

ORIHARA- それは結構あると思います。自分のことを裏方(職人)だと思っているので、SNSで何かを多くを語ることはなかったのですが、それで実際に人と話すと、「もっとミステリアスで怖い人だと思っていました」って、よく言われます。実際の私がどうかは置いておいて、そういうイメージを受けてしまっているところには、結構衝撃を受けました。結局リアルで話していても見せる一面によって人の印象は全く変わってしまうので、それはそれで良いのかな。本来の自分との延長線上の話だと思っています。

B- そうした認知度の高さの中で、作品の特にどんな部分を見てもらいたいですか?

ORIHARA- イメージディレクターとしては、大きく出ているその人の一面以外の部分を届けたいです。すごく笑っている人の中の怒りを伝えてあげたい。その人に脆い部分があることを、その人が人間であることを伝えたいっていうような気持ちです。でももちろんどんな感じ方でも嬉しいですよ。

B- 単純にいいなみたいな。

ORIHARA- そうです。シンプルにこの衣装可愛いでも全然いいし、この髪型にしたいとかでもいいし、楽しんでくれたらやっぱりそれが一番嬉しいですね。

OSAKA INTERNATIONAL ART 2025展示作品 「narcissism」

自己批判によって見えてくる「幸せ」のカタチ

B- 今年開催される「OSAKA INTERNATIONAL ART 2025」では、初の個人展ですね。イメージディレクターというより、イラストレーター色の強い作品になるんですか?

ORIHARA- そうですね。普段はその人個人をすごく見つめて、その正解を拾って出力するみたいな、制約の中での制作だったのが、突然自由にとなると、普段のプレースタイルからかなり変わるので、苦労しました。そこの境界があやふやな仕事はたくさんありますが、今回は特にイラストレーター色が強いというか、自分とは何かみたいなところに行きつきました。ある種自分のイメージディレクション的な側面もあったかなと思います。

B- なるほど。内省というか、自分を見つめて。

ORIHARA- こういう感情が私の中にあったな、とか、このようなものになりたかった、こういう風なものが私の現実であるとか、自分に置き換えてちょっと潜ってみたかなと思います。

B- なにかそれは他人に近づくよりもカロリーを使うような気がするのですが、そのあたりはどうでしたか?

ORIHARA- たくさん怒ったりたくさん泣いたりできましたね。すごく貴重な機会だった気がします。あんなに正当な理由で自分で自分に怒ったりしていいんだっていう。

B- 例えばどういった感じですか?

ORIHARA- 例えば、小さい時に心に残った作品をみて「なんでこのシーンに私は共感したんだっけ」「それって一種の自己愛的なものが働いているのか」「なんでこのシーンが嫌いなんだっけ」というふうに。自分の好きなものと自分が受け入れられなかったものを全部強制的に一度向き合って考えました。

OSAKA INTERNATIONAL ART 2025展示作品 「衣装ラフ」

B- 相当しんどい作業ですよね。それでも自分を見つめ続ける、そのエネルギーの源はなんですか?

ORIHARA- 幸せになりたいというごく当たり前の感情があるのですが、どうやったら幸せになれるかって考えるじゃないですか。その時にかなり受動的というか、幸せにしてもらう方法ばっかり頭に浮かぶことに気がついて。例えばペットを飼うとか恋人を作るとか、相手に優しい言葉をもらったり癒してもらったり、「何を施してもらえるか」を考えてしまうことに気づいて。

B- そうですね。

ORIHARA- ということは幸せになりたい時に、私たちは他人を頼る。自身は何も努力する気がないけど、幸せになりたい。幸せになりたいと言うけれど、自分は何もしたくないって、道理にかなわないじゃないですか。寂しいから友達と遊びに行くのも、じゃあ友達に孤独を埋めて欲しいってことでもあるわけで。

B- 確かにそういう面はありますね。

ORIHARA- 「それって一緒にいる友達は楽しいの?いつまで一人だけ幸せになろうとしてるのかな。そんなことを繰り返していて、これからも繰り返すのかな?」と考えた時に、もう自分が頑張るしかない。良い人間になりたい。その為には今の自分のダメなところはちゃんと向き合わなきゃいけない。ちゃんと自分のことも責められないといけない。そういった考えが、仕事でも、イラストでも少し出ているかもしれないです。できているとはまだ思えないんですが。

B- もし仮に、自分を徹底的に見つめ続けて、完璧人間みたいになるとするじゃないですか。そうなったらORIHARAさんの作品ってどうなるんですか?作れなくなってしまうのか、

ORIHARA- どうなるんだろう。でもその先が見てみたいし、何があってもずっと描いているとは思うんですよね。幸せであろうと努力をしているということは、いつだって転げ落ちる可能性を自覚しているということで。良き人間になろうとしているっていうことは、根っこが本当はもっとだらけたい人間であるっていうことで。完璧なことを、息をするように、基礎代謝みたいにできる人間じゃないってことを知っているから、きっと何かしらいろいろな作品を作るんじゃないかなと思いますね。

B- 諦めることって多分簡単じゃないですか。楽しようと思えばいくらでも出来るというか。

ORIHARA- 私の場合は、SNSのフォロワーや、ファンの方を絶対裏切っちゃいけないよねっていう気持ちでなんとかやれています。

B- ある種巻き込んで。

ORIHARA– 一種の証人ですね(笑)。観て頂いている方や支えてくれている人がいるから、もっと頑張らないといけないと思います。ただ、いつでもダメになれるっていうのは本当にそうで、効率が悪いからとか、やらない理由なんていくらでも出てくる。だから言質を取っていただく。このインタビューもきっと私の言質ですね(笑)。

B- 確かにそうですね(笑)。

一枚の絵を描き上げるのに、一体どれほど苦心しているのだろう。自分が絵を描く意味はなんなのか。相手に届ける意味は?相手は本当はどんな人だろう。自分って、なんだろう。目を背けたくなる、耳を塞ぎたくなるような場面で、彼女は決して逃げない。その姿を尊敬すると同時に、羨ましくも思う。心配にも、思う。だからたまには後ろを振り返って。そこには、“目を尖らせた審判”はいない。というよりはむしろ、暖かい眼差しをもった多くの人たちが立っているはずだから。その中には、もちろん僕も。ORIHARAさんの今後の活躍を、1ファンとして楽しみにしています。



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見えない顔、見える感性 – ORIHARAが紡ぐ人間の複雑さ 【前編】

強さの奥にある儚さや、意味ありげな表情。全体を覆う毒々しい雰囲気の奥に垣間見えるのは、悲哀なのか、一種の諦観なのか。ORIHARAの繊細なタッチが織りなす繊細な描写は、観る者に何かを訴えかけてくる。細かなニュアンスが全体の印象を作り上げるといういわば正当な順序からちょうど逆転するように、作品を前にして感じるファーストインプレッションを、細部の微妙な表現により裏切り、解体する。人間は複雑な生き物だ。人一人を、イラストというカタチで真摯に描こうとするORIHARA。相反する要素を、なんら矛盾なく共存させてしまう彼女の仕事ぶりは、むしろ正当であり、それ故に末恐ろしくもある。Adoのイメージディレクターも務める彼女は、開催を間近に控えた「OSAKA INTERNATIONAL ART 2025」にて個人制作としては初となる展示を実現。イラストレーターやイメージディレクターなど、型にはまらない彼女の作家としてのあり方、その精神性に迫るインタビューを前後編でお届け。

はじまりは二次創作

B- まずは、絵を描き始めたきっかけを教えてください。

ORIHARA- もともと漫画やアニメがすごく好きでした。物語を見るのが好きで、その物語に、もしこんなキャラクターがいたらどうなるかっていうことを想像していました。
例えば、『ハリーポッター』でいうと4つの寮があるじゃないですか。その4つの寮には、100年前にこんな生徒がいたかもしれない、というような想像を膨らませるんです。そうして、想像したキャラクターのデザインを自分で視覚化できるような形で始めたのがイラストになります。二次創作みたいなことが好きでした。

B- 受け手として楽しむだけではなく、そうした物語を元に想像を膨らませるというか。

ORIHARA- そうですね。物語の余白がすごく好きなんです。そうやって仲間内で創作をして遊んでいました。これがだんだん進んで、オリジナルの物語を作るようになり、小説というか文字がメインになっていったのですが、それを誰かに共有するときにイラストを描いていました。

OSAKA INTERNATIONAL ART 2025展示作品 「穢」

B- 漫画やアニメに限らず、普段から想像したり、何かを考えることは多い方ですか?

ORIHARA- そうですね。昔から結構色々な言葉を心にメモしています。恩師の一人に、「常にアンテナを張りなさい」と言われたことを凄く覚えていて。例えば、すごく特異なことをしていたり、人より一歩抜きん出ている人が最初から特別な存在というとそうではないと思うんです。周りの人が遊んでいたり、休んでいたり、見落としていたりする時に、何かに気づける人や、限られた時間の中で多くのことを考え、人よりも多く走っている人が伸びていくっていうのはすごく理にかなっているなと思います。なので、「今すごく雲がグレーだな。なんでグレーなんだろう?雲って白じゃないんだ」とか「なんで夕焼けの時にオレンジからピンクになって急にこの境界線が青になるんだろう」とか「そういえばなんで犬って四足歩行なんだろう」とか。人々がそういうものだよね、って認識しているものを「なんで?」って思う時間があればあるほど、人より一歩先に出られるんじゃないかなと思います。

B- なるほど、自分がいかにボケーっと生きてたのかっていうのが(笑)。

ORIHARA- 自分は考えすぎなところがあって、家の鍵を5回ぐらい閉めてあるか確認してしまって、よく周りの人に考えすぎなんじゃないかって言われます(笑)。

B- でもまあ閉め忘れるよりは全然いいと思いますけどね(笑)。

ORIHARA- 泥棒が入るよりかは(笑)。

B- ちょっと想像を絶するというか、人生の一コマへの没入の仕方が深いなというか。

ORIHARA- そう言っていただけて、5回閉めに行った鍵も救われます(笑)。

B- そうですね(笑)。でも、そうした普段からの観察眼というか、洞察力っていうのは絵に活きていますか?

ORIHARA- 絵に対してもイメージディレクターとしても活きていますね。人間の挙動であったり、今この場でこういう言葉を発する意味とか、なんで今泣いたんだろうとか、そういうことを考えているのは、結構活動に活きてきているというか、軸になっているのかなとは思います。

OSAKA INTERNATIONAL ART 2025展示作品 「I」

「その人一人の幸せを願い続ける」

B- 「イメージディレクター」は、それまでは無かった職業ですよね。

ORIHARA- そうですね。今となっては、将来イメージディレクターになりたいっていうような方からリプライをいただくこともあります。

B- 新たな職業を一個作ったんですね。具体的に何をするのか教えていただけますか?

ORIHARA- 技術的には担当する人のビジュアル、外見や所作などをイラストや様々な媒体、例えばグッズや衣装などのいろいろな形で、“この人はこういうキャラクターですよ、こういう人ですよ”というのをデザインとして置き換えていく職業です。メンタル的な部分では、その人一人の幸せを願い続ける仕事です。

B- そんなことを実現するには、例えば描く対象の方にすごく入り込んでいかないといけないというか、

ORIHARA- そうですね。

B- ORHARAさんの、例えば勘違いじゃないですけど、間違った風に描いてしまわないようにするっていうのは大変だと思うんですけど、その苦労はありますか?

ORIHARA- いつも苦しんではいますね。任せな!こうだよ!みたいな形にはできないですし、してはいけないと思っています。人というのは映画一本で感性が変わったりする生き物だと思うんですね。これで人生が変わりましたっていうことはたくさんある。たかだか2時間で人生観が変わってしまうかもしれないのに、1ヶ月前に得た情報で、“私はこの人を全部知っています”みたいには絶対にしないよう気をつけています。作品をあげる時も恐る恐る提出してみるみたいな。

B- さっきの話での「幸せを願い続ける」の、続ける、向き合い続ける、ということが凄く大切なんですね。

ORIHARA- そうですね。

B- 言ってしまえば、その人の人生を半分背負うぐらいの感覚というか、覚悟というか。

ORIHARA- 絵としてはこういう表現がいいけど、この人が誤解されてしまうかもしれないとか、本人の意図と異なる表情をする人間なんだと思わせてしまいたくない、とか。例えば、私自身がずっと同じ表現をとっていたら、この人は時間の止まった人間だと思われてしまうかもしれない。そういうズレが起きないように、常に「自分が間違っていたり、分かった気になっていないか」と考え続けるのが正常なくらいの職業だなと思っています。

イメージディレクターという、未だ踏みならされていない道を突き進むORIHARA。前編では、「その人一人の幸せを願い続ける仕事」と語る通り、自分を擦り減らしながらも相手に近づこうとする彼女の創作哲学を伺った。後編では、そうした状況下で彼女がどのようにして自分を保つのか、自己批判によって生み出される作品の軌跡を紐解いていく。



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【インタビュー】GUWEIZの描くデジタルアートの向こう側- 後編

前編で語られた創作の原点とインスピレーションに続き、後編ではGUWEIZの制作プロセスと今後の展望に迫る。独自のサインから日々の制作ルーティン、そして作品に注ぐ情熱まで、アート制作の裏側を詳細に語ってもらった。2025年の大阪万博への参加を控え、新たな表現への挑戦と成長を続ける彼の姿勢からは、真摯にアートと向き合う姿勢が伝わってくる。

アート制作の裏側

B- 今書いているサインへのこだわりはありますか?

GUWEIZ- 正直名前だけ書けば機能すると思っています。ですが、アーティストとして少し見た目に変化を加えた方が認識されやすいとは思います。そんな中で「Guweiz」の大きなGと、最後のZを長くすることで目立たせました。こだわりというこだわりなのかはわからないですが、実際これで機能しているのでうまくいっていますね(笑)。

自身のサインについて

B- 普段の制作スケジュールは自分で締め切りを決める、それとも何も決めずに制作をして作品が完成するんですか?

GUWEIZ- 厳密なスケジュールは特に決めていないですが、1か月に4・5作品は完成させるようにしています。実際、作品制作と同時にレッスンの仕事、商業的な仕事、様々な事を並走しながら作品を仕上げているので思うようにいかないこともありますよ。

B- 1つの作品制作時間、もしくは1日の制作時間を教えてください。

GUWEIZ- 作品によっては200時間かけることだってありますし、半分描き終えているのに納得いかないとやり直したりもする。昔なんて1日に16時間以上描いていたりもしましたが、もう若くないので12時間くらいですかね。

B- 制作過程の中で、悩んで、それを発散するときは何をしていますか?

GUWEIZ- なんでしょうね、実際その人に合った発散方法が合ったりすると思うんですけど、私の場合は発散するというより、悩んだりしても、とにかく描き続けます。そんな中でたまにYouTubeや音楽を流したりしながらリラックスもしている感じです。

B- 自身の制作現場で欠かせないものはありますか?

GUWEIZ- YouTubeです。とにかく部屋で音楽でも、時には何が流れているか分からなくてもそばにありますね。静かすぎると逆に集中できなくなってしまうので、少し雑音程度の方が丁度良いですね。

自身の制作現場

B- 制作の際に大事にしていることやルーティンなどはありますか?

GUWEIZ- 朝起きて、歯を磨く、そして食事をして制作を始める。これが私のルーティンですね。実際、自宅の中で生活と制作を両立させているので普段の生活とあまり変わりはありません。ルーティンワークを重視するというよりも、ただ単純に作品を作りたいという原動力が私にとっては大事です。

「自分が素晴らしいと思えるものを作りたい」

B- 制作の原動力はどこから来るのですか?

GUWEIZ- 難しい質問ですね。ただ単純に創作したい、完成させたいというものが根底にはあるんですが、私の作品のことが好きな人に見せたいというのが原動力ですね。

自分が好きなものを人々に見せられる機会というのは、実はとても貴重なものだと思うんです。誰もが、自分の好きなものを誰かに共有したいという願望を持っているはずです。「これ、すごくいいよ!」って。たとえば、友達に「これすごくクールな動画だから見て!」ってYouTubeを見せたときに、相手が「別に…」みたいな反応をすると落ち込みますよね。でも私は、多くのファンが私の作品に対して「悪くない」と思ってくれる立場にいられることをありがたく感じています。だからこそ、自分が素晴らしいと思えるものを作りたい。見た目もカッコよくて、自分の好きな要素がうまく組み合わさったもの。そして、それを見てくれる人たちがいることに、本当に感謝しています。それが私の原動力になっているんです。

B- 制作する上で心がけていることはありますか?

GUWEIZ- 作品を作るたびに、前作を超えたいという思いがあります。でも、「前作を超える」って難しい。毎回違うものを描いているので、単純な比較はできないんです。大切なのは、まだ自分が表現したことのない新しいものに挑戦すること。近代的な都市風景から時代物まで、建築様式や衣装、キャラクターなど、探究したい方向性は無限にあります。

私の目標は、新しい表現に挑戦し続けながら、「これはかっこいい!」と心から思えるものを皆さんに届けることです。

B- デジタルアートがフィジカルアート(MCA)になることで表現の広がりや、MCAの印象について教えてください。

GUWEIZ- 作品の表現はかなり広がりました。特にメタルキャンバスアート(MCA)の2.5次元表現は独特な魅力があります。完全な3Dと違って作品の見え方をより細かくコントロールできるので、アーティストの意図した通りの体験を届けやすいです。

B- 2025年に入って、今後挑戦していきたいことなどはありますか?

GUWEIZ- OIA(OSAKA INTERNATIONAL ART)の展示に向けて今は頑張っています。あれこれ手を広げずに、この一点に集中しようと思っています。こんなに大きなイベントはめったにないし、とても貴重な機会だから。ベストを尽くして、シンプルに、しっかりやり遂げたいです。

B- デジタルアートに限らずアーティストとしての夢はありますか?

GUWEIZ- まだ自分はそこまで優れているとは思っていなくて、学ぶべきこともたくさんあります。今はひたむきに絵を描き続けて成長していきたいです。

B- 最後に、進行中のプロジェクトや、告知したいことなどあれば教えてください。

GUWEIZ- OIAに参加するので、そこでたくさんのファンの方々に会えるのを楽しみにしています。



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【インタビュー】GUWEIZの描くデジタルアートの向こう側- 前編

シンガポール出身のデジタルアーティスト、GUWEIZが約5ヶ月ぶりに来日。前回の原宿でのGAAAT個展から、東京の街並みや明治神宮など日本の風景からインスピレーションを得たという彼に、創作の原点から現在のスタイル確立までの道のりを語ってもらった。『ロード・オブ・ザ・リング』や「ベルセルク」などのポップカルチャーにも深い造詣を持ち、シンガポールでの学生時代に鉛筆で密かに絵を描き始めたことが今日のキャリアの出発点となった。常に探求心を持ち続け、行き詰まりをも創作プロセスの重要な一部と捉える彼の美学と哲学に迫る。

GUWEIZのアイデンティティ

B- 前回の来日から約5か月ぶりですが、その間に新たな創作のアイデアは生まれましたか?

GUWEIZ- GAAATとの原宿での個展はとても刺激的な経験でした。普段のファンとの交流はネットを介することが多いですが、原宿では、ファンの方々のリアルな熱気を感じ、アイデアに加え、創作に対するエネルギーをもらえました。ファンがいることで今の自分があることをとても実感しました。これから様々な作品を作り、皆様に共有できることが非常に楽しみです。

B- 普段の作品作りではどのような事からインスピレーションを得ていますか?

GUWEIZ- 美しい物です。美しいと私が感じるもの。例えば街の風景をとってもそうですし、中世や近代の衣装デザインなど、様々な物に対してインスパイアされています。あとはポップカルチャーや他のアーティストもそうですけど、東京では多くのインスピレーションを得られたと思います。明治神宮にも行ってみましたけど、素晴らしかったです。

東京はすべての建物に独特な雰囲気があるなと思っています。例えばシンガポールでは、多くの建物が均整の取れたデザインなんです。でも東京の風景を見ていると母国とは違った建物の配置、制御されてる様な混沌さに魅了されました。

B- これまでどんなポップカルチャーに触れてきましたか?

GUWEIZ- 良い意味で様々なものに興味がありました。ハリウッド映画から日本のアニメまで幅広く楽しんでいましたし、各作品の微妙な違い(例えばハリウッド映画の広大さから漫画などのタッチの緻密さ)をバランスよく楽しんでいました。

B- その中でもずっと好きな映画やゲーム、漫画を教えてください。

GUWEIZ- 『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズは大好きです。脚本や演出に派手さがありながらも、暗いシーンを表現するのがとてもうまく、暗い中にも一筋の明かりがしっかりと表現されていて、私の作品にもそういった要素を取り入れています。あとはフロムソフトウェアのタイトルや、漫画だと「ベルセルク」も、今でも読み返すくらい大好きです。

B- 他のアーティストから影響を受けることはありますか?

GUWEIZ- もちろんありますよ。でも、単に真似するのではなく、なぜその表現を選んだのかを考えています。アーティスト同士が影響し合って、それぞれが自分なりのやり方で表現しているのを見るのはとても楽しいですし、時には「自分ももっと頑張らなきゃ」と思うこともあります。そういう刺激があるから、どんどん挑戦してみたくなるんですよね。

Concert

アーティストとしての出発点

B- アーティストを心がける転機やきっかけになった出来事、もしくはなぜアーティストになりたいと思ったのですか?

GUWEIZ- とにかくシンガポールは勉強熱心な国だったんです。そんな中で、日本でいう中学生くらいの頃でしょうか、数学の授業が苦手で成績も良くなく、家でゲームもさせてもらえませんでした。そんな時期にふと、鉛筆で絵を描いてみたんです。家族には私が描いてることは気づかれなかったので、なんとなく描き続けてました。これが当時の私の楽しみの一つになっていったんです。あの時、趣味であったゲームに変わって絵を描き続けてきたことが、今、アーティストになったきっかけです。

アーティスト活動初期の作品

B- 現在の制作のスタイルになるまでにどのようなプロセスを辿ってきましたか?

GUWEIZ- まずは自分が好きなアーティストの作品や好きなものを模倣することから始めました。最初は本当にひどかったです。スキルが不足しているので出来栄えがよくなかった。描くにつれて、次はこうしてみようと工夫するようになったんです。小さめのポートレイトでキャラクターを描いてみて、追加する形で様々な背景や要素を取り入れていきました。少しづつ時間をかけて絵を描いていくこと、物事の視野を徐々に広くしていくこと、この工程の中で新たな発見であったり探求心を向上させました。この探求する心構えによって、自分の作品の幅も広がっていったのです。

経験を重ねるにつれて作品の描き方、時間のかけ方、表現に対してより効率的になりました。作品を描く中で、思ったものと違うと感じた際は、これまでの経験を活かし、視点を変えて少しづつ仕上げていく、こういった自然なプロセスを大事にしています。

B- フィジカルアートではなくデジタルアートを選んだ背景には特別な理由などはありましたか?

GUWEIZ- デジタルアートのアクセスのしやすさに注目しました。鉛筆やペンの作品ではスキャンした際の出来栄えも良くありません。もちろん、そのジャンルで色彩豊かな方々はいますし、ただ私はそうではなかっただけです。道具をとっても、特にアート業界と縁がない環境だったので、両親に道具を都度揃えてもらう必要があり、それだったら中古のタブレットでも十分に始められると思いデジタルを選択したのです。

今でも当時と同じモデルのタブレットを愛用していて、たまに「もっと高い良いもの使えば?」などと言われたりもしますが、もうこれに慣れてるし、安心するんですよ。それでも初心者にとっては非常に始めやすいと思います。そこまでお金のかかるものでもなく、部屋を占有するほど大きくもない、そういった部分に惹かれたんですかね。

B- これまで作品作りを続けてきて印象に残っている作品、またその理由を教えて下さい。

GUWEIZ- 花田美術で展示をした「Ash」という作品です。私にとって完璧な作品だと思えたからです。他のアーティストが見たら改善点などあるかもしれないですが、私にとってはその作品が完璧だったのです。

Ash

B- 制作過程の中で、行き詰ったことや大変だなと感じた体験はありますか?

GUWEIZ- もちろん。一つの作品を描き上げるのに15回くらいは描いて、悩んで、描いてを繰り返しているんじゃないですかね。この制作過程こそが、行き詰りが起きている事が、重要だと思っています。行き詰るということは、絵に対して真摯に思考を巡らせているんです。何も考えずに描いているだけでは良い作品は出来上がりません。つまり、描くということは、こういった行き詰ったプロセスをどうにかしてまとめ上げ、対処していくかを学ぶ経験だと考えています。それを繰り返したことで今の自分の作品にスタイルが生まれていると思います。

インタビュー後編では、彼の最新作品や将来の展望、MCAの表現について、さらに深く掘り下げていく。



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ドラえもんはアート?

我々日本人からすれば普段当たり前のように馴染んで、もはやDNAに浸透していると言ってもいい作品を、例えば海外の人に見せるとする。

僕らが当たり前のように、子供の頃の食卓や家族団欒の時間に、何気なしに眺めていた(勿論楽しんでいるのだけど)モノを観た時、彼らは僕らの想像するよりかははるかに、ありがたそうに、神聖なものを見るかのように、画面、紙面に夢中になってくれる。すると、あたかも自分がその作品を作ったかのような(これは言い過ぎか…)得意げな気持ちにさせられる。

そんな時、その作品の小話を、一つでも、してあげられればいいのだが、何せあまりに当たり前に馴染んでしまったもの。「知らない」ということが、存外起こり得る。

日本の現代美術家である村上隆は以下のように述べる。

「僕は、ドラえもんがアートだと思っているんです。最終的に漫画が日本の芸術の頂点であるという風に、橋渡し的な役割分担で(芸術活動を)やっています。」

【宮崎駿と高畑勲】芸術家の本音とコンプレックスとは?【村上隆vs斎藤幸平】

アートとまでは言わないまでも、親しき仲にも礼儀ありというか、僕らの子供時代を支えてくれた数々の名作にもう少し敬意を払って、大人になった今、知ろうとする事は素敵なことのように思える。この記事を通して、そうした日本人にとって、慣れ親しみ過ぎた名作を「知る」もしくは新たな視点でもう一度楽しむきっかけになれば素晴らしいと思っている。

例えば、先の話に登場した『ドラえもん』は、2025年で生誕45周年。

『ドラえもん映画祭2025』と銘打って、34日間連続で43もの作品が神保町シアターにて上映された。2010年以前に公開された作品は35ミリフィルムでの上映ともあり、大変話題を呼んだ事は記憶に新しい。

また、村上隆とのコラボレーションをはじめ、森アーツセンターギャラリーでは『THE ドラえもん展 TOKYO 2017』が開催され、それまでの、読んだり、見たりするものとの認識に加え、アート的な視点で『ドラえもん』を鑑賞する提起がなされた。『THE ドラえもん展 TOKYO 2017』図録の中で日本の画家である町田久美は、「要素を最小限まではぶいているのに、その世界観の中で一番正確な形が描かれている」と述べるなど、描かれた一枚一枚の絵の作品としての強度が伺える。

通常、漫画における1ページあたりの平均的なコマ数は5〜7コマであり、例えば1974年7月に発売された『ドラえもん』1巻は192ページ。仮に1ページ6コマだとすると、一巻の漫画だけで、少なくとも1152枚の絵が必要なはずだ。 

さらにアニメの世界では、1秒あたり約8枚の絵が使われると言われており、放送枠である30分からCM分を差し引くと、アニメーション自体の持ち時間はざっと20分前後。こちらも最少でも9600枚もの絵が必要になってくる。もちろん作者である藤子・F・不二雄だけでなく、全ての漫画家、アニメーターに言えることではあるだろうが、中でも45年もの間続く『ドラえもん』である。

画家や芸術家をも唸らせるその完成度の高さには、流石は僕たちの『ドラえもん』だ。
こうした親近感の高さの所以は、何も昔からお茶の間にいたから、だけではない。

その可愛らしい丸みを帯びたフォルムや、高い技術力(秘密道具)を持ってしても、のび太に負けじと抜けたところのあるキャラクターを見ると、やはり、愛さずにはいられなくなってしまうのだ。

そして、2021年に発売された『THE GENGA ART OF DORAEMON ドラえもん拡大原画美術館』では、1コマ1コマを絵画として鑑賞できる「作品」として、美術的視点から7つのテーマで『ドラえもん』のコマを厳選し、原画を拡大して掲載しているというから面白い。また、2011年に開館した藤子・F・不二雄ミュージアムでは、原画をはじめ、5分の1スケールののび太の家などの立体物を展示しており、改めて『ドラえもん』の歴史に触れることが出来る。 

このように長く親しまれてきた『ドラえもん』。様々な見方があり、子供から大人、画家や現代美術家など、誰でも楽しむことができる。

残念なことに、作者である藤子・F・不二雄(1996年没)とかつてコンビを組んでいた盟友、藤子不二雄Ⓐは2022年に亡くなってしまった。2人の物語はまた別の機会にとっておくとして、『ドラえもん』が未だ続くように、彼らの残した作品や姿勢は、多くの漫画家や画家に確かに継承されている。彼らの描いた、夢や希望は不滅だ。

そして最後に、藤子・F・不二雄が、のび太の父であるのび助(のび助は幼少期に画家を目指していた)に言わせたであろう言葉で締めくくりたい。

『ドラえもん』31巻で、絵がうまく描けないと悩むのび太へ、父としてエールを送る一幕だ。

「絵は心だ!なにかをみて美しいなとかかわいいなとか心に感じたら、それを表現するのが芸術だ」

 「あとからアルバム」(小学館てんとうむしコミックス31巻収録)

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