【Interview】Mika Pikazoにしか表現できない色彩 – 前編

Vtuberの輝夜月やハコス・ベールズ。ディズニーの作品をイラストで表現した『Disney Collection by Mika Pikazo』。更には「ファイアーエムブレム エンゲージ」、「Fate/Grand Order」などのゲーム内に登場するキャラクターデザインに至るまで、近年では「イラストレーター」の枠を超え、活躍の場を広げてきたMika Pikazo。個展の開催にも積極的な彼女の仕事ぶりを見ると、間違いなく多作と言っていいと思う。何がここまで、彼女を“創作”に向かわせるのか。

過去のたくさんの素晴らしいインタビュー記事、その当時から、2025年9月現在に、彼女は何を思っているのか。Mika Pikazoさんのインタビューを前後編でお届けします。

MANNEQUIN

変わるものと、変わらないもの

これは僕の所感なのですが、色々なイラストレーターやアーティストの方にお話を伺うなかで、Mika Pikazoさんって特にインタビュー記事が多い印象があるんです。もしかすると何か意図はありますか?

Mika Pikazo(以下、M) – ありがたいことにインタビュー依頼をいただくことは多いですね。意識しているのは、その時々の自分を記録しておきたい、ということかもしれません。例えば3年前のインタビューと今の自分の考えを比べると、全然違っていたりするんですよ。それは自分自身も社会や周囲の環境なども。もちろん、自分が創作をやる上で変わらない「芯」の部分はありますけど、そのときにしか残せない思考や表現ってあると思っていて、「今の自分はこう考えている」と残しておくことに意味を感じています。

XやInstagramの投稿でも、その辺りは考えていますか?

M – これまではSNSでプライベートのことなどはあまり発信してこなかったんです。ネガティブなこととか、普段自分が感じたこともそこまで言わないようにしていたんですけど、今後はそういうこともやっていきたいです。実はクリエイターの知り合いとかと話すときに、ずっと喋りながら制作してるくらい、話すことは好きなんですよ。 本当はXとかでも、140字びっしり思ってること書きたいくらいです(笑)。

心境が変わってきた理由はありますか?

クリエイターは作品を出すことが1番だって思っていたんです。ご飯屋さんがご飯を出すというか、美味しいご飯を出すことに意味があるみたいな感覚?ただ、“絵を描いていくこと”に関してもっと言葉でも伝えていくべきだと思ったんです。 もちろん今後もたくさん描いていきたいしそのつもりですけど、「この絵についてどういう想いで作ったのか」とか、「こういうのが自分は好きなんだ」っていう話も見ている方に伝えていきたい想いはあります。

ペンネームが、いつしか本名のように

過去のインタビューで、「「ありのままの自分」という言葉に違和感があって、「つくられた自分」をもっと見てほしい」といった発言がありました。それこそ今お話しているMika Pikazoさんは「ありのままの自分」と、「つくられた自分」、どちらになるんでしょう?

M – 今は混ざり合ってきていると思います。昔は、表と裏が分かれていた感覚がありましたけど、今は一体化してきた。パーソナルな部分と、Mika Pikazoとしての自分が、そんなに違わなくなってきた感じがします。

Mika Pikazo

プライベートのご自身とのギャップが無くなってきた?

M – 正直、Mika Pikazoとしての時間の方が長くて、むしろ家に宅配が来てインターホンで出る時に、本名を言われると「あ、そうだったか」と驚くくらいです(笑)。いつもクリエイティブな事ばかり考えているけど、もうそれが無いと無理というか。私のイラストは観ていると元気になるって言ってもらえることが多くて、すごく嬉しいのですが、私自身はすごく不安がりで、ずっとネガティブなんですよ。でも、その不安が強いからこそ、作品を作っているし、パワーを感じさせる絵を描きたいのかも。休みとかが逆に怖くて、創作について取り組んでいない時間が怖いです。

深く潜った先には、同胞がいる

不安な気持ちを創作によって解放するようなニュアンスかと思うのですが、以前他のインタビューで、ジバンシーなどのファッションデザイナーを務めたアレキサンダー・マックイーンからの影響について語られていました。彼は、徹底的に自己の内面と向き合うことでアバンギャルドな作品を発表し続けた人物という印象で、必ずしもカタルシスとしての芸術表現ではなかったかもしれない。その辺りも共鳴する要素としてありますか?

M –  様々なアーティストさんの話を横から聞くときに、「いい人だったよ」みたいな話には、そこまで惹かれないんです。どちらかと言うと、創作に想いが行き過ぎちゃってる、ストイックすぎて、こだわり過ぎちゃって、変になっちゃってるような、そういう話を聞くとすごく安心するんですね。「 ああ、よかった」って思う。だからああいう素敵な作品を作れるんだ、と思う方もいる。自分も考えが行き過ぎちゃう時があったりするので、側から見ればやめたほうがいいっていうような精神状況になっていても、でも突き詰めていく先に何かあるんじゃないかと思ってしまうし、願いを込めています。

Mikaさん自身はデッドラインというか、これ以上いったら引き返せなくなるなみたいな局面はありましたか?これ以上悩んだり向き合い続けたら、戻ってこれない、おかしくなってしまう、といったような経験。

M –  今、そこに入り始めたなって思います。メンタルを病んでるとかではないんですけど、展示会をやったり、自分がやりたいことのコンセプトに向き合っていくと、すごく自分を削るんですね。自分の中にあるものをひとつひとつ削って出している感覚があって。 その中で、自分が求めるクリエイティブが、どんどん研ぎ澄まされていく感覚もある。それこそさっき、「絵を描いていないと不安になる」みたいに言いましたけど、自分の一日、生活が、それに染まりすぎてしまって、それ以外の生活に関する判断基準が、自分の創作に取り込めるか取り込めないかみたいに考えてしまうときがある。そういうところに入ってしまったんだって、最近本当に感じます。

マックイーンに対して、クリエイターとして素晴らしい人生を送ったのではないか」とおっしゃっていましたが、現在のMika Pikazoの理想の人生とはどういったものですか?

M –  今の気持ちは…寿命で死ぬまで描いていたいです。70、80になっても描いていたい。

寿命まで。マックイーンは、デッドラインを超えて帰って来なかった。

M –  マックイーンは過労やプライベートの不幸な出来事が重なってしまって、自殺をしてしまったとこの映画では描かれていましたが…私は自殺はやっぱりするべきではないと思います。でも、すごく苦しいとき、そういうことを考えてしまうことはあるし、どれだけ周りがよくないといっても、苦しさの渦中にいる本人には別の視点が見えている。「自分なんか生きててもしょうがないんじゃないか」って思ってしまったり。じゃあ、知り合いがそういう状態になったら、絶対良くないって止めるし、話をずっと聞いて少しでも気持ちが楽になる方法を見つけたいって思うけど…。でも、マックイーンは最期まで、自身の内面も織り交ぜて、作品にした。それは狂気にも似たカタルシスを含んでいて、他の人には到達できない表現を作った。その姿勢にはリスペクトしています。ただ、なんだろうな。個人的には、自殺はよくないという想いは変わりません。自分が彼の作品のファンでもあるので、もっと見たいっていう気持ちもあるし、彼が残した限りある作品を何度も観ていて勇気をもらっているので、そういう意味でも、ずっと…。 ずっと描き続けていたいです。

展示会「ILY GIRL」

展示会に行く前からが展示会です

絵を描く以外に、趣味とかはありますか?休みの日も、本当に絵のことだけ…?

M –  例えばインプットが足りないなと思って、旅行に行ったり、美術館に行ったり、自分が普段やらないようなことをやってみるというのはあるんですけど、それも創作と切り離したことはしたくないですね。 普段の生活的な部分では行動力もないしビビりなんですが、それがクリエイティブにつながった瞬間、すぐ「行こう!」「やろう!」ってなります(笑)。

それは具体的に何か情報を知りたいのか、感覚的に浴びたいのか、どういったニュアンスですか?

M –  どちらもありますね。特に展示会をやるときに、お客さんがどのような想いで来て頂いているのか、シミュレーションというか、イメージすることが多くて。その参考の為にも、色々な展示会に出掛けます。例えば二年前に開催した展示会「ILY GIRL」は、コンセプトが決まる前、開催が決まった会場へ色々な駅から歩いてみて、道中のお客さんの気持ちを想像したりしました。どんな思いで観に来てくれるのか、嬉しいことがあったのか、不安なことを抱えているのか、今日1日原宿楽しむぞ!って気持ちなのかとか。たどり着くまでに何を求めていて、何を見たいかっていうのはかなり考えました。

展示会「ILY GIRL」での東急プラザラッピングの様子

そこまで考えているんですね。

M –  そうですね。朝イチで行ったらどうかとか、夕方行ったらどうか、とか。
いろんな方向から、この展示会に向かうときの見え方と気持ちを深く掘り下げてみたり。

本当にどうしようもなくなったことなどはありますか?これは自分一人じゃ解決できないな、みたいな。

M – 一度メンタルを大きく崩してしまったことがあって。その時は、ずっと尊敬している、とある音楽会社さんのプロデューサーさんの方がいるのですが________________。

彼女の創作に向き合う姿勢や、不安と表現の関係性について深く語っていただいた前編。後編では、Mika Pikazoがこれから挑みたいこと、そして描き続ける先に見据える未来についてさらに迫っていきます。

EDIT: Ryo Kobayashi

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