【インタビュー】「咲き誇って一気に散る。その一瞬の煌めきを描きたい。」初個展「擬花」で見せたミツ蜂の儚さと諦観、伸ばした手 – 前編

美術大学の彫刻科を卒業しながら、イラストレーターとして活躍するミツ蜂。特にMVイラストの分野では、Guianoやめいちゃん、月詠みなど、第一線で活躍する数々のアーティストの作品を手がけている。そんな彼女の描く作品はどこか儚げで、淡い微笑を湛えているもの、どことも言えない宙を見つめているもの、様々な表情を捉えている。彼女の描くそれは救いなのか、諦観なのか。

BAMでは、ミツ蜂の初となる個展「擬花」に合わせてインタビューを行った。MVイラストでは常に誰̇か̇を描いてきた作家が、自分だけの表現の場で一体何を見せてくれるのか。前後編の単独インタビューでお届けする。

「死の淵から、生を取り戻していく」——金属専攻の卒業制作が原点

『まにまに』

普段はMVイラストを多く手がけるミツ蜂さんですが、音楽プロジェクト・月詠みさんによる楽曲『死よりうるわし』では、クレジットにイラストだけでなくアニメーション担当としても名を連ねているのが印象的でした。実際にやってみていかがでしたか?

ミツ蜂 – アニメーションの良さでもある「キャラクターが走っている」とか「振り向いた仕草」とか、そういう所作を描きたいという欲は、正直あまりないんです。ただ、一枚絵を軸にしたアニメーションには前々からすごく興味がありました。Guianoさんの『光線歌』でも、アニメーションを取り入れています。実は大学の卒業制作でも、彫刻作品と合わせてループのアニメーションを制作しました。

インスタレーションのようなイメージですね。在籍された彫刻科の提出課題としてアニメーションは意外な発想だったのでは?

ミツ蜂 – そうかもしれません。真ん中に金属の立体作品を置いて、その周りに液晶を3枚並べて、ループしたアニメーションを音楽と一緒に流すという作品でした。真ん中に設置したのは40センチほどの女の子の彫刻です。ボロボロになった女の子を金継ぎのように溶接することで表現し、アニメーションではその女の子が少しづつ回復に向かうイメージを描きました。

金沢美術工芸大学彫刻科の卒業制作として制作された。中央の立体作品と、それを囲む3枚の液晶に映し出されたアニメーションによって、死の淵から生を取り戻していく様を表現している。

「メロディーより先に、まず言葉がある」——タイトルを起点にした制作

卒業制作から一貫して、ミツ蜂さんの作品には言葉やコンセプトが強く息づいているように感じます。数々のMVイラストを手がける際、まず楽曲のどこを見て制作に入るのでしょうか。

ミツ蜂 – まず最初に意識するのはタイトルです。楽曲のタイトルを一番大事にしているかもしれない。次に歌詞、その次に曲調です。色合いなどは曲調から決めています。

メロディーよりも先に、まず言葉があるんですね。

ミツ蜂 – そうですね。

吉田ユニ、マグリット、川瀬巴水——イラストの外から「構図」を掴む

「apple」

MVイラストでは楽曲のイメージに寄り添いながらも、その中でミツ蜂さんの絵柄も確かに存在感があるように感じます。特にこだわっているのはどんな所でしょうか?

ミツ蜂 – 全ての作品に共通して言えるのは、構図だと思います。バランスや発想、着眼点などは吉田ユニさんの作品から影響を受けています。マグリットも好きです。

新版画の木版画家・川瀬巴水からの影響もあると伺いました。イラスト以外のジャンルからの影響が大きいのですね。

「汚れている状態を、最も美しく見せる」——Guiano『月』で楽曲とイラストが噛み合った瞬間

Guiano『月』MVイラスト

その「構図」と作家性が見事に噛み合ったのが、Guianoさんの『月』のMVイラストのように思います。卒業制作の金継ぎにも通じる、つぎはぎや破れかかったスカートをまとった女の子が描かれていますね。

ミツ蜂 – そうですね。学生時代からずっと、「マイナスのものをプラスに変えるエネルギー」のようなことを考えていて。『月』のイラストも、服が破れた女の子が踊っているのですが、「自分が汚れている状態を最も美しく見せる」という、楽曲自体のコンセプトとすごくマッチして、「噛み合った」という感覚がありました。構図も含めて自分の作風を反映して描くことができた、とても印象に残っている作品です。

マイナスをプラスの方向に描く、というのはミツ蜂さんの作品全体に通底しているものなのでしょうか。

ミツ蜂 – 全部ではないかもしれないですけど、かなり自分の根っこになっている気がします。

「マイナスのものを、プラスに変える」。学生時代から彼女の根底にあるその感覚は、やがて「死の直前にこそ宿る煌めき」というモチーフへと結びついていく。彼女の描く儚さは、救いなのか、諦観なのか——その輪郭は、後編で語られる「3つの映画」によって、はっきりと姿を表すはずだ。そして、初個展「擬花」をはじめ、これまで作品に度々登場する、2つの大切なモチーフとは。(続く)

EDIT: Ryo Kobayashi

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