【旅とアート】目で見て感じたものを作品にーさけハラス インタビュー前編ー

とある女子高生の日常を切り取ったように緻密な作品を描くイラストレーターとして人気を博しているさけハラス。「旅」をキーワードに常に新しい表現や発信方法を模索し続ける彼の誠実さに触れたインタビューをお届け。

逆境を楽しむー居酒屋から始まったイラストの道

今日はよろしくお願いいたします。さけハラスさんの作品は風景とキャラクターの雰囲気が相まって、見ている私たちを小さな旅に連れて行ってくれるような魅力がありますよね。イラストで仕事をすることになった経緯を教えてください。

さけハラス(以下:さけ)- お願いします。絵を仕事にしたのは、居酒屋でした。当時はリーマンショックの影響でどの会社も新卒採用を縮小する傾向にあり、自分もその渦中にいました。いただいていた内定が取り消しとなり、どうしようか悩んでいたところに、デザイナーとして募集があったのがその居酒屋でした。

居酒屋でデザイナー募集とは、珍しいですね!

さけ – そうなんです。それも含めて面白そうだな、と思って仕事をはじめました。当時は居酒屋で使うメニューを描いたり、ロゴのデザインをしたりしていました。従業員の似顔絵を描いたりしているうちにイラストに興味を持ち、思い切って会社をやめて、京都のイラスト専門学校に入学しました。卒業した後はその専門学校の講師として働いたり、縁のあったゲーム会社などでキャラ制作やゲームの背景などを担当し、2019年に独立しました。

イラストの指南書などを拝見しても、すごくわかりやすくまとめられていて。講師をやっていたと聞いて納得です。

さけ – 講師をしていた時にもたくさんのことを学びました。彼らが今どんなことに関心があってどんなものが流行っているのか、グッズなども自分たちの時代にはなかったツールを使って制作していて感心していました。当時の生徒さんからもらったオリジナルの缶バッジや、SNSのアイコンにもしているマガモのキャラクターの人形は大切な宝物です。

SNSのアイコンにもしているマガモ

目で見て感じたものを作品に

旅するイラストレーターという肩書の通り、実在する場所をモチーフにした作品も多いかと思います。どのように場所を選ばれているんですか?

さけ – SNSを使った情報収集が多いです。InstagramやX、ピンタレストなどで気になった場所をストックしていて、行く場所が決まるとその地域に詳しいフォロワーさんたちからおすすめをされることもあります。地方に行かせていただくことも多いのですが、その地域が制作しているローカル番組などで紹介されていた場所を訪れたこともあります。

路地裏や交差点など街の“裏側”のような場所に焦点を当てている作品も多いですよね。

さけ – 単純にそういうところが好き、というのもあるんですが。(笑)光の表現に自信があって、そういったコントラストの強く出る景色を選ぶことも多いです。木漏れ日の降り注ぐ場所や海など、その明暗や彩度を誇張して描くこともあります。

「駅と少女2」木漏れ日の表現を得意とするさけハラスさんの作品

ご依頼やお仕事でイラストを描く時には、どうしてもメジャーな場所をモチーフにすることが多いので、個人の活動ではその場に行かないと見つけられないような景色を描きたいな、と思っています。階段の風景を描くことも多いのですが、構図としてキャラクターが入れやすかったり、何かが始まりそうな予感がして、好きなモチーフの一つです。そんな場所でも特定してくれるファンの方もいたりして。

さけハラスさんの作品をみていると、実際にその場所に行ってみたくなります!

さけ – 聖地巡礼などでその場所を訪れてくださるファンの方もいらっしゃいます。一度だけファンの方がツアーをしてくれたこともあって(笑)色んな場所を巡った後に一緒に食事をしました。

AI時代にイラストレーターとして活動すること

旅のルーティンを教えてください。

さけ – 毎回必ずというわけではないのですが、その街の一番大きな駅に行くようにしています。地域がその街がどのくらい盛り上がっているのか、何が有名なのかなどを確認します。絵を描くだけじゃなくて、その街自体も楽しみたいのでその地域ならではのグルメや名所などにも行きます。

作品の醍醐味とも言える緻密な風景描写ですが、どのようにして制作されているんですか?

さけ – 私の場合は旅で訪れた場所の写真を加工したものをベースに加筆・着彩をして仕上げています。その上で誇張する部分や、逆にノイズになってしまう部分を目立たなくしたりもします。元の写真自体は加工の具合によって色々な表現ができるのですが、以前訪れた場所に雪が積もっていて、違う季節のイラストを描こうと思った時に普段の景色を想像しながら制作したときは大変でした(笑)

実際の作品制作時

雄大な景色と可愛らしい女子高生のキャラクターのコントラストも印象的ですよね。

さけ – 気分によって描き変えたりしています。キャラクターが様々な旅先を旅行するというストーリーでコンテンツを制作していたこともありました。実はSNSでイラストを投稿しはじめた時は、とにかく風景を描く練習がしたくてキャラデザインを固定すればいっぱい風景が描ける!と思っていました(笑)ただ、キャラクターがいることによって目を止めてくださる方も多く、今ではどちらの要素も欠かすことができないです。

最近ではAIによるイラストも流行していますが、さけハラスさんはこの状況をどのように見ていますか?

さけ – 同業者の中にはAIアートに苦手意識を持っている方もいると思います。私自身もその気持ちはわかるのですが、やはり時代の流れとして避けられないと思います。もちろん仕事を失っている部分もあるかと思うので、危機感を感じないと言えば嘘になりますが、うまく技術を活用しながらAIに代替されないような活動ができるように頑張っています。ただ著作権の侵害などといった問題も出てきているので法整備などの規制は必要だと思います。

居酒屋のイラストレーターからキャリアをスタートしたさけハラス。制作の秘話からAI時代にサヴァイブすることまで語った。後編では、さけハラスが語る、未来の社会のコトから大好きなホラー映画の話まで。パーソナルな部分を掘り下げていく。

EDIT: Ryo Hamada

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