前編に引き続き、さけハラスのインタビューをお届け。創作から離れた時間の過ごし方や、最近ハマっていることなどを通して、さけハラスの価値観や人間的な魅力に迫っていく。
ホラー映画で価値観の転換点を味わう
制作の時以外は何をして過ごしていますか?
さけ – 基本的には自宅兼作業場のデスクで1日を過ごすことが多いです。あまり仕事とプライベートを分けていなくて、映画や動画を見ながらなど毎日何かしらの作業をしてしまいます(笑)。活動時間も不規則で今日も夜中の0時に起きて昼までずっと作業していました。それ以外の時間ではやはり旅にでていますね。あとは散歩したりするのも好きです。
マルチタスク、羨ましいです…!どのような映画を見られるんですか?
さけ – 実はホラー映画が好きで。ホラー映画って、制作費に制約のある作品も多いので、同じ空間を使って違う見せ方をしたり、脚本を工夫したりして制作されているものも多く、その発想自体が興味深いんです。アイデア次第では全く新しいジャンルが生まれたりとか。
それから、ホラー映画の根幹でもある怖がる対象物が時代によって変わっていることも面白いです。例えば80から90年代頃の作品ではビデオテープが呪いの道具として使われたホラー映画がありましたが、それが携帯電話に、そしてスマートフォンになり、最近ではSNSの恐ろしさを切り取ったホラー作品があったり。様々なデジタルデバイスが生まれてきましたが、それを使う私たちのリテラシーも問われているような気がします。
ホラー映画を追うことで時代の転換点が見えるんですね…!私自身初心者なのですが、おすすめの作品はありますか?
さけ – うーん…。ドリュー・ゴダード監督の「キャビン」という映画は好きです。今までのホラー映画の定番を詰め込みながらもそれらをメタ的な視点で展開していくんですが、ある意味禁じ手というか。ホラー映画自体の価値観をひっくり返したような映画です。

ホラー映画以外に影響を受けた作品はありますか?
さけ – 単純に絵として影響を受けているのは、やはり新海誠さんです。「言の葉の庭」(2013)という作品を観て知りました。日常の風景をめちゃくちゃ綺麗に表現していて。ただ新宿という街に初めて訪れた時に、新海誠さんの絵と実際の風景の落差に驚きました(笑)。
幼い頃から絵を描くのは好きだったんですか?
さけ – 小学生の時に遊戯王カードが流行っていたのですが、それのオリジナルカードを手描きで作って友達と遊んでいました。今考えると創作活動の原体験かもしれないです(笑)。あとは好きな漫画の模写をしていました。漫画のキャラクターに空想のセリフを喋らせて友達を笑わせたりとか。
思い出の味は車中泊した日に食べた貝汁
今までにたくさんの場所を旅されてきたと思うのですが、思い出の料理はありますか?
さけ – 最近山陰地方を旅したのですが、山口県で食べた貝汁が絶品で。地元の人も集まるというサービスエリアがあるのですが、東京の自宅から車で出かけてそこで車中泊をしたんです。貝の出汁がたっぷり出た味噌汁だったのですが体に沁みました。温泉などもある広い施設で、地元のかたが足しげく通われるのも納得でした。

旅先でお土産を買うのも好きで、一時期はご当地のお酒を買って飲み終わった瓶をコレクションしたりもしていました。並べると達成感も味わえます(笑)。
ご自身の活動の中で転機になったタイミングはありますか?
さけ – やはりフリーランスとして独立できた時だと思います。私自身が0から1を作る作業の方が向いているなと思っていて。会社に所属してた時は、実績や信頼を積み重ねた一握りの人しかそういった現場に立ち会うことはできませんでした。一つのものを極めてクオリティを上げていく、ということにも価値はあると思うんですが、色々なことを試して実践していく、というスタイルが自分にあっていると気づいて。2019年に「写真加工で作る風景イラスト」という指南書を出版した時も、“甘えじゃないか!?”などの批判の声もいただきました。けれど時が流れて今では当たり前の出来事になっていると思います。

小さなアクションから社会に貢献したい
随所でさけハラスさんご自身への客観的視点に感服してしまいます…!最近Xにて選挙についての投稿をしていましたよね。ご自身と社会との関係性についてどのようにお考えですか?
さけ – 私は鳥取県出身なのですが、自分が住んでいた頃から10万人以上も人口が減ってしまっていて。また、行政の方々からの仕事を進めていく上で、地域の様々な問題に直面することもあります。はじめは地道に活動していくしかないか、と思っていたのですが、そもそも根本から変えないと意味がないのでは?と思い始めて。そこからさらに政治や社会に関心を持ちました。とはいっても自分にできることと言えば、選挙に行ったり、対話をしたり、地域の話を聞いて活動をしていくしかないと思うので。
ただ、ASOBI SYSTEMに所属してからは自分自身だけではアプローチできなかった場所や仕事をご紹介いただくことも増えました。マネジメントのお話しをいただいた時はびっくりしましたが(笑)。
私自身の武器はイラストなので、少しでも社会に役立つものを作れたらいいなと思っています。
これからアーティストを目指す方々やファンのみなさんにメッセージをお願いします。
さけ – イラストだからこういったことしなきゃいけないっていうよりは、ちょっとだけ発想を変えてみたり、新しい表現や発信方法を考えてみたりしてみてほしいです。立場とか関係なく、なんか面白いことを考えて一緒にイラストに関わるカルチャーを盛り上げて行きたいな、と思っています。
イラストレーター・さけハラス。旅することで生まれた作品と、地域への思いに胸が熱くなる。彼の描く未来が、これからもっと明るく素晴らしいものになると信じて、私たちも行動して行きたい。