【インタビュー】描かないことで、見せる。Syoyoが辿り着いた「BLEND ART」という表現 – 前編

お気に入りのアウターを羽織り、こちらをアンニュイに見つめるファッショニスタな女の子たち。彼女たちのまとう服や髪の毛が、背景の色彩へと鮮やかに溶け込んでいく。

その世界観は、まるで1枚の洗練されたファッションポスターのよう。

錯視とポスターアートを掛け合わせた独自の表現「BLEND ART(ブレンドアート)」を手がけるSyoyo。2022年にこのスタイルへ辿り着いてから、わずか数年で音楽、ゲーム、ファッションと活動の幅を広げてきた。アートブランド「GAAAT」との共同個展「PROTO」を8月に控える今、その創作の原点をじっくりと訊いた。

描き込むことに、飽きた

《Undeveloped land》 / 現在の作風とは大きく異なり、様々な要素が描き込まれている。

今の作風「BLEND ART」に至るまでの道のりを教えてください。学生時代はどのような絵を描いていましたか?

Syoyo – 学生時代は今の作風とは違って、キャンバスに絵の具で描きたいものを詰め込むように描く作品が多かったんです。それが、ある時急に飽きてしまって。

絵を描くこと自体に飽きてしまった?

Syoyo – というより、描き足していく「足し算」の描き方に飽きてしまったんです。それからは、「引き算」のように、いかに描かずに人の感情を動かせる作品を作れるか、少ない情報で成立する作品を作れるか、ということに意識が傾いていきました。グラフィックデザインの「引き算の美学」というか、そうした面での影響もあったかもしれません。

洗練された引き算の美学には、作品の強度の高さや明確なスタイルが求められます。スタイルが定着するまでに、どんな物語があったのでしょうか?

Syoyo – シンプルな作風で個性を出す一つの方法として、ネガポジ反転という技法を取り入れました。簡単に説明すると、色の明るさを正反対に入れ替える技法です。(白→黒、赤→緑、青→黄色、オレンジ→青などの反対色に入れ替える技法)

《Untitled》 / より少ない要素で作品を成立させようと取り入れたネガポジ反転作品。以前の作風からの大きな変化が見て取れる。

当時はまだデジタルには触れていなくて、アナログ作品の中で、ネガポジ反転を取り入れて、それ以外にも色々と試行錯誤していました。その流れで、元々好きだったアメリカンレトロや、1930年代前後のポスターアートを研究し始めたんです。

コールズ・フィリップスとの出会い

Coles Phillips 《A Gallery of Girls》 / Wikimedia Commonsより

その時に、コールズ・フィリップスの作品に出会ったのですね。

Syoyo – はい。まさに私が考えていたことを表現している作家で、「これだ」と自分の方向が一気に見えました。

具体的には、コールズ・フィリップスのどんなところに惹かれたのでしょうか。

Syoyo – 人の髪の毛などが背景と同化する表現は、ポスターアートの世界ではよくある技法なんです。ただ、彼の作品は単にデザインとして溶け込ませるというより、あえて服を浮かび上がらせるという表現に独自性を感じました。私のやりたかった、「描かないことで作品を成立させる」という思想と一致していたんです。1900年代初頭に彼がやっていた表現を、現代のグラフィックデザインやイラストレーションとして再解釈したら面白いだろうなという思いが、今の作風のヒントになっています。

「BLEND ART」って、結局なんですか?

《Wind》

引き算の美学やコールズ・フィリップスからの影響を受けて、Syoyoさんが独自に展開するのが「BLEND ART」というアート表現です。改めてどんなものなのか、詳しく教えてください。

Syoyo – 大きくは錯視の表現とポスターアートを組み合わせたものです。その中で、様々な要素を溶け込ませた表現、ブレンドした表現という意味を込めて「BLEND ART」と呼んでいます。その中には、「現代的なイラストレーションとグラフィック」、「デジタルプリントとアナログ表現」、「作り手と受け手」といったように、様々な要素を掛け合わせたものをまとめて「BLEND ART」としています。

「BLEND ART」①:「デジタルとアナログ」の混交

《Paintroom》

アナログからデジタルへと表現の場を移すことは自然な流れですが、両方を掛け合わせた独自性は「BLEND ART」の特徴の一つです。きっかけを覚えていますか?

Syoyo – これも唐突なのですが、いつも通りアナログでキャンバスに描いてる時に「なんか違うな」と思ったんです。実際にその作品を描いている途中に描くのをやめちゃって(笑)。パソコン自体は学校にあったので、「気分が乗らないならデジタルでやってみるか」と思い付きで描いてみたんです。そしたら意外と面白くて。

それから、どのように2つのメディアが混ざり合っていくのでしょうか?

Syoyo – アナログの物自体はずっと好きだったので、デジタルで描いた作品をキャンバス作品にデジタルプリントしてみたんです。そしたらそれはそれで何か物足りなくて。そのキャンバスに描き足すような形で、絵の具を塗っていきました。イラストの部分はデジタルで描き、文字などのグラフィックの部分をアナログで描くと一番しっくりきたので、今でもそのやり方で作品を作ることが多いです。

《Carol》

異なるメディアを混ぜることで、思わぬ違和感やノイズが出たり、行き詰まることはありませんでしたか?

Syoyo – アナログと言ってもベタ塗りなので、そこまでは感じませんでした。ただ、ベタ塗りもデジタルっぽくなってしまうとアナログで描く意味がなくなってしまうので、わざと筆跡が残るような塗り方にしたり、アナログの良さをしっかりと表現することは意識しています。

「BLEND ART」②:「作り手と受け手」の見えないやり取り。「余白」が生み出す表現の可能性

《水面》

Syoyoさんは「BLEND ART」のもう一つの重要な要素として、「作り手と受け手の関係」を挙げています。作品を作る上で、コンセプトやストーリーを決め切るライン、反対に鑑賞者に解釈を委ねる自分なりのラインはありますか?

Syoyo – 作品を描く上で、自分の中でのストーリーやコンセプトは決めています。ただ、それが正解という訳ではなくて、観ていただける方には、本当に自由に感じてもらえたら嬉しいです。「アート=難しい」みたいな感覚ってあると思うんです。でも、もっと気軽に観て、「あ、いいな」って思っていただけたら一番嬉しいです。色使いの雰囲気とか、配置の心地よさとか、何となく観た時に、「いいな」、「かわいいな」と思えるような作品を描きたいと思っています。

《MyBoy》

作品に「余白」があるからこそ、思いもよらない意外な感想が届いたこともあるのでは?

Syoyo – アナログとデジタルを掛け合わせた作品作りをしているので、そのアナログの部分を観た方から、「イラスト制作中にバケツツールで塗りつぶしを失敗したのかと思った」とコメントを頂いたのは面白かったです(笑)。多分、クリエイターで絵を描いたことがある人だからこそ感じたことだと思います。そういった感想一つで、その人がどんな人生を経験してきたのかが垣間見えたりもします。余白があるからこそ、その絵一つで色々な解釈が生まれる。そういった作り手と受け手の関係を含めて、「BLEND ART」の楽しいところなんです。

洗練されたポスターアートに秘められた引き算の美学。Syoyoの手で、頭の中で、引き算される前の誰も知らない「BLEND ART」の核心に触れてきた前編。後編では、8月に開催予定の初のアート個展について、さらには作品に登場するファッションブランド「SYOYODO」とは一体なんなのか。その秘密に迫ります。お楽しみに。

Syoyo 1st Solo Exhibition PROTO

会期:2026/08/07(金)〜2026/08/17(月)
開場時間:11:00 – 21:00 ※会期、開場時間は変更の恐れがあります。詳しくは公式HPをご覧ください。
会場:MIYASHITA PARK GAAAT GALLERY
住所:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前六丁目20番10号 MIYASHITA PARK South 3階
公式HP:https://gallery.gaaat.com/pages/syoyo?srsltid=AfmBOoq6J37cx6psmKcTPLriGnMT3BJjLH0SmGBdY-v3j-WhUMJ6lLh4

EDIT: Shimako Otake / Ryo Kobayashi

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