【インタビュー】「絵が私を遠くへ連れて行ってくれる。」アーティスト・谷小夏が描き出す、女の子と動物と懐かしさと。 – 後編

イラストレーターとして活動を始めてから十数年。谷小夏は近年、クライアントワークを少しずつ減らし、個展を中心とした作品発表へと活動の場を移している。

その背景には、創作に集中できる環境の変化や、自分自身の表現を追求したいという思いがあった。

後編では、個展活動、動物たちへの思い、台湾での経験、そして現在挑戦している新しい表現について話を伺っていく。

「絵が私を遠くへ連れて行ってくれる」

《ie》 / 2018年

毎年のように全国各地で個展を開催されていますが、会場はどのように選ばれているのでしょうか。

谷小夏(以下、谷) – すごく単純で、行ってみたい場所を選んでいます。もちろん会場とのご縁もあるんですけど。

個展には必ず在廊されている印象があります。

谷 – 個展を見て頂いた方と直接お話出来る貴重な機会なので、毎回足を運ぶようにしています。最近は妹と一緒に行くことが多いです。実は、二、三年前くらいから母や妹に仕事を手伝ってもらっています。ちょうど妹が転職を考えていた時期だったので、「じゃあ手伝ってよ」って(笑)。発送作業やオンラインストアの対応とかをアシスタントとして手伝ってもらったり。おかげで私は絵を描くことに集中できるようになりました。

それまではすべて一人で?

谷 – 全部一人でした。だからできることが本当に増えましたね。今までは何かうれしいことがあっても一人で喜んでいたんですけど、今は家族も一緒に喜んでくれる。それがすごく楽しいんです。

絵を通して心通う。台湾個展で気づいた言語を超える絵のパワー

《台湾》 / 2025年

台湾でも個展を開催されていますよね。

谷 – はい。実は台湾が初めての海外、そして初めての個展で、すごく緊張していました。でも台湾の方は本当に日本文化が好きな方が多くて。街を歩いていても日本語で話しかけてくださる方がいたりして、「こんなに親日なんだ」と驚きました。

現地の方との交流で印象に残っていることはありますか。

谷 – お手紙をいただいたんです。私が絵を描く時に、「ここがこの作品の良いところなんじゃないかな」と密かに思っていた部分を、そのまま言葉にして書いてくださった方がいて。「こんなに見てくれているんだ」と思って、本当にうれしかったです。絵って、言葉が通じなくても伝わるんだな、と改めて思いました。
台湾では友達もできました。ギャラリースタッフの方です。今まではあまり海外に興味がなかったんですが、「絵が私を海外へ連れて行ってくれるんじゃないか」と思うようになりました。友達ができたり、新しい景色が見られたり。これからはもっと海外で個展を開きたいと思っています。

大好きな動物を救うために

「Art for Animals」の作品はオンラインショップでも購入することができる。詳しくは公式サイトまで

谷さんは「Art for Animals」という活動も続けられています。

谷 – 子供のころから動物が大好きなんです。本当は動物に関わる仕事がしたかったくらい。でも犬や猫のアレルギーがあって…。だから動物のお仕事は難しかった。でも何かできることはないかなと考えた時に、「絵を売って、そのお金を寄付したら間接的に関われるんじゃないか」と思ったんです。それが「Art for Animals」の始まりでした。

現在はどちらに寄付されているんですか?

谷 – 大阪にある「公益財団法人 日本アニマルトラスト」が運営するハッピーハウスという保護施設です。自分の目で見に行ける場所が良いなと思って選びました。作品を買ってくださった方には、その施設の案内も一緒に送っています。もし気になる人がいたら、ペットショップ以外にも保護施設という選択肢があることを知ってもらえたらうれしいです。

谷さん自身、現在はインコを飼われているそうですね。

谷 – もう八年くらいになります。本当にかわいくて(笑)。

『プジェ日記』を描き始めたきっかけも、そのインコだったとか。

谷 – 実際に飼うまで、鳥がこんなにも愛情深い生き物だと思っていなかったんです。私も知らなかったから、世の中にももっと知らない人がいるんじゃないかと思って。それで『プジェ日記』という漫画を描き始めました。「Art for Animals」もそうですけど、絵を見たり買ったりする人って限られているじゃないですか。でも漫画ならもっとたくさんの人に届くかも知れない。動物を大切にする気持ちを広めるなら、漫画の方が向いているんじゃないかなと思ったんです。

SNSでも話題沸騰中の『プジェ日記』

漫画を描くようになって、ご自身の絵にも変化はありましたか。

谷 – コミカルな表現が得意になりました。ちょっと気を抜くと、普段の作品までコミカルになりそうなくらい(笑)。漫画を描く前は、もっとシリアスな作品が多かった気がします。

作品に登場する衣装も魅力的です。どのようなところから着想を得ているのでしょうか。

谷 – 私自身、そこまでファッションに興味がないんです。でも、歴史や文化は好きで。流行のファッションを追いかけるというよりも、民族衣装や工芸品とか、そういうものが大好きなんです。その辺りは作品にも影響が出ているかも知れません。もし大阪に来ることがあれば民族学博物館がおすすめ。私の大好きなスポットです!

特に好きな時代はありますか?

谷 – 古代ですね。古代文明の人たちの服って本当におしゃれなんです。レリーフに彫られている服装を見て、「このまま描きたい」と思うこともあります。流行の服を描くと、数年後には少し古く見えてしまうことがありますよね。でも、古代の服であれば、むしろミステリアス。作品も古びない気がしています。

民族衣装から着想を経た作品。エジプトの実際にあったビーズのドレスを描いている。 
《estetika》 / 2021年

1日16時間、絵を描き続けて…

普段の生活についてもお聞きしたいです。一日どれくらい制作されるのでしょうか。

谷 – 20代の頃は1日16時間くらい描いていました。本当に毎日。でも病気になってしまって。「これは駄目だな」と思い、今では毎日8時間くらい描いています。

十分長いと思います…!

谷 – 私からしたら半分しか働いていない感覚です(笑)。

絵を描いていない時間は何をされていますか。

谷 – 歩いています。運動不足なので(笑)。実家に鳥がいて、アトリエから実家まで1時間くらい歩いて会いに行くんです。鳥と遊んで、また歩いて帰る。それがいい散歩コースなんです。

普段の制作を行うアトリエの様子

最近はストーリー漫画にも挑戦されているそうですね。

谷 – そうなんです。『プジェ日記』は実際にあったことを描く絵日記でした。まだほとんど誰にも言っていないんですけど、今は物語から作る漫画を描いています。台湾の友達から聞いた妖怪の話が凄く面白くて。台湾の景色を描きながら、妖怪が登場する物語を描き始めました。

谷さんらしい世界観で楽しみです。今後の目標はありますか?

谷 – 海外でもっともっと個展を開くことですね。台湾へ行ってから、その気持ちはすごく強くなりました。あとはストーリー漫画を完成させること。絵日記も続けたいですし、個展も続けたい。やりたいことがどんどん増えていきますね(笑)。

忙しくなりそうですね。最後に、読者やファンの方へメッセージをお願いします。

谷 – そうですね…。もっともっと良い絵が描けるように頑張りたいと思っているので、見ていただけたら嬉しいです。

幼い頃、白い紙に目一杯大好きな絵を描いていた少女は、飽きるどころか、ますます「描くこと」を楽しんでいる。その絵は作品となり、漫画となり、ときには動物たちを救うための活動にもなる。しなやかという言葉が似合う谷小夏の活動が楽しみで仕方がない。

EDIT: Ryo Hamada

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