今週読みたいアート。芸術の舞台裏を描く漫画編 Vol.1

美術館に行き、「なんでこれが良い(とされている)のだろう」とか、「これにどんな価値があるんだろう」とか、アートについて「よく分からない」なんて気持ちが芽生えたまま帰宅する……なんてことがあるかもしれない。

よく分からない作品にウン十億円という値段がついたかと思えば、街中の無料で入れるギャラリーで素敵な作品と出会ったり、はたまた、作品の枠組みを超えた「プロジェクト」なんかが作品と呼ばれていたり。歴史や理論が背後にあるからこそ、様々なアーティストや作品があるわけで、感覚だけで理解できるのがアートの世界ではないし、何かの手がかりがないと中々理解できないことも多い。というわけでこの連載では毎週「アート」にまつわる書籍をいくつかご紹介。

梅雨真っ只中のこの季節。風邪もひきやすいし、なかなか外出して楽しむ気分でもないかも。そんなときはお家のなかで読書はいかが。といっても今回紹介するのはアートに関する漫画本。芸術業界の裏側を覗き見たり、作家の葛藤を垣間見たり。きっと創作意欲も湧いてくること間違いなし。

◯『ブルーピリオド』山口つばさ・著(講談社)

主人公は、高校生・矢口八虎(やぐち・やとら)。「受験」という誰もが避けては通れぬ門。それがあの美大受験なら? 美大受験の克明な描写、美術に向き合う者に降りかかる試練の数々。まさかの美術×スポ根⁉︎ 美しくも厳しい美術の世界へ身を投じ、美術に青春を捧げる学生たちを描いた名作だ。自身も東京藝術大学の出身である著者が描く物語は、信念と情熱と、美術を信じる者の感性の瑞々しさに満ちている。

◯『東京ヒゴロ』松本大洋・著(小学館)

フランスでは漫画は「音楽」「文学(詩)」「演劇」「映画」「メディア芸術」と8つの分野に次ぐ「第九の芸術」と呼ばれる。ここ日本でも、文化庁の特別の機関「日本芸術院」にて新分野として「漫画」が選出された。その流れに異論を唱える人は多くないと思う。そんな「漫画」の世界そのものを抉り出した傑作がこちら。作者は『鉄コン筋クリート』『ピンポン』で知られる松本大洋。大手出版社を早期退職した漫画編集者の塩澤は、理想の漫画誌を作るため、自分が信じる漫画家たちを訪ね、執筆を依頼する。ただ“それだけ”の話なのだが、仕事・表現・友情が交差した「創作哲学」があまりに美しすぎる。もはやこれは「描く」ことの美学が詰まった、芸術作品だ!

EDIT: Ryoma Uchida

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