【インタビュー】東洋一の歓楽街を回遊する。「BENTEN 2 Art Night Kabukicho」の舞台裏 – 卯城竜太編

光と影が交錯する街「歌舞伎町」。東洋一の繁華街と言われるこの地で夜通し行われる、回遊型アートイベントの開催が間近に迫っている。

2025年11月1日からの3日間で開催される「BENTEN 2 Art Night Kabukicho」は、昨年の「BENTEN 2024」に続く2度目の開催。キュレーションはChim↑Pom from Smappa!Groupらが務める。

我々BAM編集部は、気になるその実態、地理的イデオロギーを探るべく、開催を目前に独占インタビューを敢行。前編ではChim↑Pom from Smappa!Groupリーダーの卯城竜太氏に、後編ではSmappa!Group会長の手塚マキ氏に、それぞれプロジェクトの背景や開催への想いを伺った。

「また明日も観てくれるかな? So see you again tomorrow, too?」2016年 / ビルバーガー
3階分のフロア、事務用品、空調、家具、照明器具、カーペットなど
撮影:森田兼次 / Courtesy of the artist, ANOMALY and MUJIN-TO Production
手塚氏が常任理事を務める解体予定の歌舞伎町商店街振興組合ビルの床を1階まで繰り抜いて開催された。

世にも珍しいアートの生態系

まずは開催に至る経緯を教えてください。

卯城 – Chim↑Pomのこれまでの活動は、歌舞伎町と密接な繋がりがありました。手塚さんと協働し、色々なプロジェクトをやってきたりしたんです。振興組合のビルでプロジェクトをやったりとか、メンバーの結婚式を路上でやったりとか、にんげんレストランみたいなものをやったりとか。で、僕自身も「WHITEHOUSE」というアートスペースを展開したり。僕ら自身の活動以外にも、歌舞伎町界隈にアートスペースや文化活動の場がコロナ禍を起点に続々と出来てきた感じがあって、それを俯瞰して見た時に、「世にも珍しいアートの生態系が出来つつあるな…」と思ったんです。

「BENTEN 2 Art Night Kabukicho」 会場マップ

海外の音楽やアート関係の知人をそういった場所に連れて周ると、やはりその特異性を面白がるんですね。歓楽街でジェントルフィケーションするアートプロジェクトみたいなものはそれまでもあったけど、そうでない形でボトムアップに文化的なスペースが立ち上がってきているのが面白がられているんだなと感じました。
それは何より、「デカメロン」もそうですし、新宿歌舞伎町能舞台も王城ビルもみんなコロナ禍にオープンしてきたことに関係があると思うんです。歌舞伎町が「夜の街」として批判されていた一方で、逆にそうした場所だからこそ集まってきたものや人もいる。磁場が働いているように、他の場所がフリーズせざるを得なかったからこそ、居場所や隙間を求めて色々な人たちが集まって新しい活動が始まっていく。そんな感じがありました。

そうした文化的な土壌が、アートイベントとしての「BENTEN」の構想に繋がったんですね。

卯城 – そうですね。いわゆる「芸術祭」も考えましたが、長期に渡る上、かかる労力がかなり変わってくる。「展覧会」をやるにしても、歌舞伎町にはそもそも美術館などがない。それよりも、「劇場」とかライブスペースとか、パフォーマンスイベントだとか、アートで言えば「路上」で起きたハプニングがこの街の特徴のはず。だからこそ、身体的で、イベント的な活動が展開されるものがいいな、と。アートナイトだと3日間程度だし、夜の歓楽街との相性もいいな、というところがあって、昨年の開催に至りました。

「また明日も観てくれるかな? So see you again tomorrow, too?」2016年 / BLACK OF DEATH
2008、2016 / ビデオ
撮影:森田兼次 / Courtesy of the artist, ANOMALY and MUJIN-TO Production

再開発、そして相変わらずのカオス

イベントのテーマが「都市の再野生化」とのことですが、これはどういったものでしょう?

卯城 – 王城ビルも「新宿歌舞伎町能舞台」も「デカメロン」も「WHITEHOUSE」も、コロナ禍と再開発の時期に始まりました。再開発は東京のあちこちで起きていて、渋谷をはじめ都内の各地が秩序化されて変化していった。歌舞伎町にもその流れはあるにはありましたが、後から見てみると、実際に再開発によって秩序が生まれたかというと、むしろその真逆のことがたくさん生まれていた。再開発によって人々が集まりやすくなったのはたしかですが、しかし歌舞伎町は歌舞伎町らしく、色々な人たちが逃げてきたり集まってきて、カオスな状態が生まれていった。それは他の都市には見られない特異な状況でした。歌舞伎町の相変わらずっぷりには、歴史的な裏打ちもありそうな気がしていて、今回のテーマとして考えています。

「LOVE IS OVER」2014
撮影:篠山紀信 / Courtesy of the artist

「Love is Over」のデモ行進、「また明日も観てくれるかな」では“解体ビル”内でのプロジェクトであったり、印象的な取り組みでしたが、「BENTEN」の特徴はどういったところでしょうか?

卯城 – 今回のメインアーティストとして、やなぎみわさんを位置づけてはいるんですけど、どちらかと言うと何かひとつの事というより、もっと重層的で、同時多発的であることが、アートイベントとして重要だと考えています。歌舞伎町という街を徘徊したり、目移りしないと、どの会場で何が起きているか分からない。現代アートのみならず、パフォーマンス、演劇、音楽、クラブイベント、横丁、バー、活弁映画、味噌汁……と、あらゆるジャンルが入り乱れ、タイムテーブルそのものが表現のカオスと化していますが、そのイベントを通して、街のあちこちを回遊して頂きたいです。

歌舞伎町の“ローカリティー”を世界に

Chim↑Pom from Smappa!Groupとしての国際的なご活躍と、近年のインバウンドを背景にした歌舞伎町ゴールデン街の外国人観光客の増加、その辺りはイベントに関わってきますか?

卯城 – 現代アートの視点で世界を見渡した時に、東京はアジアの中で相当プレゼンスが下がっていると思うんです。香港やソウルは国際的なアートフェアを中心に、その周辺でパーティーや展覧会が充実している。台湾の台北も、中国との対立の中で表現の自由がものすごく推し進められています。しかし、香港やソウルのように西洋のやり方をそのまま輸入してイベントを作っても、東京には似合わないと思っています。東京は独自にサブカルチャー的に育ってきたものがあったり、1世紀を余裕で上回るほどの美術の歴史がある。その中でも歌舞伎町で熟成されてきたゲリラ的な文化活動とか、小さなバーで繰り広げられてきた文化活動を土壌としたアートイベントとして構想していたので、自ずとフェアや美術館など欧米的なグローバリズムとは違うローカリティーを推しだすものになったように思います。

「BENTEN」は歌舞伎町公園に祀られる弁財天が由来だと伺いました。

卯城 – 新宿のシンボリックな神様みたいな部分があり、芸術と芸能の境界線みたいなものを考えるのにすごく良いアイコンでした。そうした歴史や文化が色濃い街なので、西洋的な美意識と枠組みでやるよりも、ここで熟成されてきたものを普通に発信した方が独自のものとして受け止められると思ったんです。いずれ特異なものとして世界的に認知されていくだろうなと思っていて、回数を重ねて実験していこうかなと考えています。

「BENTEN 2024」©上原俊「新宿歌舞伎町能舞台」

「BENTEN」は今後の別の活動やイベントの指標になりますか?

卯城 – いや、ならない気がします。他のイベントへの影響だとか、ノウハウがどうっていうことはないと思います。むしろ「歌舞伎町」でしか通用しないやり方でやっていかないと、独自のものにはならなかったりもするし、逆に他の土地にはまた全然違う事情や理屈があるはずで。

あくまで歌舞伎町だからこそできるイベント、表現であると。

卯城 – そうですね。今後は表現の部分だけではなく、運営の部分で、より歌舞伎町独自のものにしていきたいです。そうすれば、もっと世界に例がないようなものになる気がします。

芸術と芸能の交錯地点「新宿歌舞伎町能舞台」

アーティストの選定に関しては、菊池成孔さんなどのミュージシャンが出演されていたり、必ずしもアートだけではない、様々な方を招聘されています。選定の基準やこだわりをお伺いできますか?

卯城 – DOMMUNEの宇川直宏さんに昨年から参加して頂いていて、テーマである「都市の再野生化」を踏まえて山本裕子さんと一緒にキュレーションやブッキングを考えて頂きました。「BENTEN」の立ち上げの段階から、DOMMUNEのイメージは僕の中にあったんです。2013年に開催された「FREEDOMMUNE 0<ZERO> ONE THOUSAND 2013」が、当時飽和していた音楽祭の中で、ノイズだったり、コンテンツが特殊にも関わらず大規模のイベントとして、全く独自のお祭りを作っていた。「BENTEN」に関しても、日本国内にたくさんの芸術祭が存在している中で、似たような立ち位置のものがあれば面白いだろうなとは思っていました。例えば、歌舞伎町シネシティ広場で、Merzbowがノイズミュージックをやるなんて事件だってあり得る訳で。

もう一つは、スペースをたくさん使っている点で言うと、「新宿歌舞伎町能舞台」が、今後の歌舞伎町の文化活動のアイデンティティになっていくんじゃないかと思っています。と言うのも、今回のやなぎみわさんも、前回のメインアーティストでAsian Dope Boysというコレクティブをやっているチェン・ティエンジュオさんも、能舞台があることに凄く惹かれているんです。もっと言うと、能舞台が歓楽街にあること自体が特殊……。特殊には見えるのですが、さっき話した、弁財天や芸術と芸能の境界線を考える上では、河原者による儀式や、「湿った場所」で勃発した歌舞伎など、文脈としては真っ当で、自然なことなんです。歓楽街の中に能舞台があって、そこに、考え抜かれたものがコンテンツとして出てくるっていうのは、脱西洋中心主義的な表現を考えるにあたって、大変重要な部分。今後もその部分を大切に活かしながら展開するイベントになっていくといいなと思います。

その土地の文化的な土壌や時代観を色濃く反映させながら、Chim↑Pom from Smappa!Groupが作り上げるアートイベント「BENTEN 2 Art Night Kabukicho」。それまで多くの人が描いていたであろう、怖くて危ない街・歌舞伎町というイメージは、彼らの投げかけるアートを介して見つめ直すと、全く異なる街の輪郭が立ち現れてくる。そしてそれは、通り過ぎていた街の外の人も、中にいる「歌舞伎町の住人」も一緒だ。

後編では、1997年にホストとしてこの街に足を踏み入れ、以来「歌舞伎町の住人」として、酸いも甘いも噛み分けながら、ほんとうの歌舞伎町を目の当たりにしてきた手塚マキ氏の想い、彼の描く今後の歌舞伎町の未来像を紐解いていく。

「BENTEN 2 Art Night Kabukicho」

2025年11月1日〜11月3日に開催される回遊型アートイベント「BENTEN 2 Art Night Kabukicho」。「都市の再野生化」をテーマに掲げ、昨年の「BENTEN 2024」に続き、Chim↑Pom from Smappa!Groupらがキュレーションを務める。
新宿歌舞伎町能舞台、王城ビル、デカメロン、WHITEHOUSE、東京砂漠などを回遊しながら、文化としての「歌舞伎町」を味わうことが出来る。光と影の交錯するカオティックな都市のリアルを、ぜひ現場でご覧ください。

日時:2025年11月1日(土)15:00-5:00/11月2日(日)15:00-5:00/11月3日(月・祝)15:00-23:00

※会場によって開場時間が異なります。公式WEBサイトやSNS等によりご確認ください。

前売りチケット発売中

https://artsticker.app/events/94416 ※10/31 23:59まで

当日券

一般(1DAYチケット)¥3,500 / 前売り券¥3,000

一般(フリーパス)*3日間入場可 ¥7,000 / 前売り券¥6,000 

18歳未満*¥2,500

中学生以下無料

※24:00以降は 2,000円(1ドリンク付き)で入場可能。

※一部プログラムは別途料金の支払いが必要です。

HP : https://www.benten-kabukicho.com/

Instagram:https://www.instagram.com/benten2025_kabukicho

EDIT: Ryo Kobayashi

SHARE

人気記事

RANKING