Namjooningがもたらすアートトリップの可能性。ポップアイコンBTS・RMとたどる世界のアートスポット

次世代のアートトリップ「Namjooning」

インターネットが飛躍的に進化することによって、全世界の音楽をオンタイムで楽しむことができるようになった。音楽のグローバル化が生み出したスターといえば韓国のBTS(防弾少年団)だろう。新曲がアップロードされれば瞬く間にヒットチャートにランクインし、彼らが着用したアイテムにはプレミアが付き、彼らが訪れた場所にはファンたち(ARMYと呼ばれている)が押し寄せる。

この現象はアート業界にも波及している。BTSのリーダーRMは生粋のアートラヴァーとして知られており、ファンがRMの訪れた美術館やギャラリーに行くことをナムジュニング(RMの本名はキム・ナムジュン)と呼び、2025年12月までにインスタグラム上では「#Namjooning」のハッシュタグとともに約17万件ものコンテンツが投稿されていた。BTSがアートに興味を持つきっかけになるファンも多いようだ。

RMがアート、とりわけ近現代の作品に興味を持ちだしたのには彼らしいきっかけがあった。世界中をライブや撮影で飛び回るBTS。長期の滞在になることもしばしば。ちょっとした空き時間にシカゴ美術館を訪れ、そこでみたスーラやピカソ、モネの作品に強い感銘を受けたのだ。教科書などでも紹介される歴史的なアーティストたちだが、実物を見る機会はなかなかない。本物の持つ圧倒的な筆致と迫力に圧倒されたRMはアートに傾倒し世界中のアートスポットに訪れるまでにいたった。

せっかくなので僕たちも、Namjooningの旅に出かけてみよう。

SKAC(SKWAT KAMEARI ART CENTRE)

本やレコードがずらりと並ぶ店内

日本からはこんなアートスポットをご紹介。「SKAC」は亀有駅から徒歩10分程度のJR常磐線高架下スペースに位置する。建築家の中村圭佑が率いる設計事務所「DAIKEI MILLS」のメンバーを中心として構成されたチーム「SKWAT」による再開発プロジェクトだ。かつては青山エリアに知る人ぞ知るアートスペースとして運営されていたが、2024年にここ亀有に移転。1階にはアートブックを取り扱う「twelvebooks」、ロンドンに続き2店舗目となるレコードショップ「VDS(Vinyl Delivery Service)」、カフェスペース、ギャラリーが併設され、2階には「DAIKEI MILLS」のスタジオが入居している。

twelvebooksでは国内最大級のアートブックの取り揃えで海外から取り寄せたタイトルも多い。倉庫がそのまま店になったような作りとなっており何時間でも滞在してしまう。RMは自身の名前と同じ「R/M」(上田義彦+後藤繁雄(YOSHIHIKO UEDA + SHIGEO GOTO))を抱えた写真を投稿した。

リウム美術館(Leeum Museum of Art)

韓国ではサムスン文化財団が運営するリウム美術館に。ソウルを代表する私設美術館として様々な展示が企画されており、RMも企画展のレセプションにゲストとして登場。リウム美術館は作品もさることながら建築が素晴らしい。3つの棟で構成されそれぞれの建物をマリオ・ボッタ、ジャン・ヌーヴェル、レム・コールハースが設計している。

左から児童教育文化センター、M1、M2。それぞれを地下空間が繋いでいる。

M1を担当したマリオ・ボッタはスイスの建築家で東京のワタリウム美術館の設計も担当している。レンガで仕上げられた外観と、内部の螺旋階段の神々しさに打ちのめされてしまいそう。M2を担当したジャン・ヌーヴェルはフランスの建築家でルーヴル・アブダビや東京の電通本社ビルを設計している。光の魔術師の異名をもち、地下空間にも光が入り込むデザインになっている。最後に児童教育文化センターを担当したレム・コールハースはミラノにあるプラダ財団美術館や福岡のNexus World Housingを手がけているオランダ出身の建築家だ。ガラスとコンクリート、鉄でできた近代的な建築で入れ子状に部屋が構成されている。

チナティ・ファンデーション(Chinati Foundation)

最後に紹介するのは、アメリカ合衆国テキサス州の砂漠地帯マーファに建てられた現代美術館チナティ・ファンデーションだ。現代アーティストであるドナルド・ジャッドが設立したアートスペースで340エーカーにも及ぶ敷地の中にコレクションが収められている。

John Chamberlain Building, 2022. Photo by Alex Marks

限られた数のアーティストによる大型インスタレーション作品の恒久展示を理念としており、韓国人アーティストユン・ヒョングンの平面作品も展示されている。ユン・ヒョングンはRMの個人コレクションの中にも名を連ねる作家で、「Yun」という楽曲を制作するほど思いを寄せている。単色画で著名なユンは日本統制時代の韓国で育ち、朝鮮戦争や独裁政権を経る中で政治的な理由によって4回の投獄を経験した。

21世紀で最も影響力のあるアーティストの1人、BTSのRMは未来のアートに何をもたらすのか。2026年からはサンフランシスコのSFMOMAで自身がキュレーターを務める展示が予定されている。RMが感じた感動を「Namjooning」によって追体験する楽しみはファンにとってもアートラヴァーにとっても希望の一手になるかもしれない。

EDIT: Ryo Hamada

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