【インタビュー】原田ちあきが語るイラストと日常ー自分っぽさと健やかさと。- 前編

原田ちあきはイラストレーターであり、クリエイターであり、母である。全盛期のTwitterで、鮮やかな色彩の中で独特のキャラクターが悪口を放つという世界観は絶大な支持を集めた。原田は、自身を取りまく環境や感情に合わせて、さまざまな表現に挑戦してきたアーティストだ。そんな原田ちあきを解明するインタビューを前後編に渡ってお届けする。

自分っぽいことをしたいー枠にとらわれない原田ちあきの挑戦のはじまり

今日はよろしくお願いします!まずはこれまでの歩みについて、少しお伺いできればと思います。いつ頃から今のようなスタイルで絵を描き始められたのか、簡単に教えていただいてもよろしいですか?

原田ちあき – イラストを描き始めたのは二十歳を少し過ぎた頃で、少し遅めのスタートでした。その頃はTwitter全盛期で。Webマンガやエッセイなどのお仕事をTwitter経由でいただくことがすごく増えました。

なので、私は「Twitter発の作家」の一人だと思います。Twitterにすごく育ててもらったし、助けられてきた人生だなと感じています。

特別醜いのは私だけじゃないって安心したい

さて、ここからは原田さんご自身の人柄や普段の暮らしの部分に少しフォーカスしてお伺いできればと思っています。最初にTwitterで画像をアップしようと思ったきっかけはありますか?

原田ちあき – きっかけ…わりと小さい頃からパソコンを買い与えられていました。当時としては少し早いほうだったと思います。インターネットも早めに引いてもらっていて、当時はBBSやお絵描き掲示板、ブログにmixiとさまざまな交流サイトが流行していました。それらを渡り歩きながら、インターネットの中で絵を描いて遊んでいた延長線上に、Twitterがありました。

当時はネタツイートがバズったりして、フォロワーが増えていくのがものすごく楽しかったんです。どうやったらもっとフォロワーが増えるんだろう?って考えながら、イラストをアップしていきました。 色をつけてみたらどうかな?…セリフをつけてマンガにしてみたら?…というように、フォロワーを増やすための実験場としてTwitterを使っていました。

ネタツイートやいろんな投稿の延長線上に、今のスタイルやマンガ、イラストがある、という感覚なんですね。

原田ちあき – あと、漠然と「何者か」になりたかったのかもしれないです(笑)。

さまざまなフィールドで活躍されていますが、イラストレーター、デザイナー、大学講師など、それぞれの仕事をする中で自分らしさとして大事にしているポイントはありますか?

原田ちあき – 常に“自分っぽいこと”をしていたい、という意識が強いかもしれません。特に講師の仕事をする上で「原田ちあきってなんとなくふわっと作家になった人」というふうに見えているかもしれない。でも実際には、作家としてどうやって仕事を取れるようになったかという自分なりの経緯があって。それを講師として伝えられたらいいなと思っています。ただ「みんなもこれを真似しろ」ということではなくて、私はこうやってやってきたよ、こういう横道の逸れ方もあるよ、というのをひとつの例として見てもらえたらいいなと。

どんな仕事にしても、“自分らしいもの”作りたい、という感覚で続けています。

いつか絶対に「あの時アイツを選んでおけばよかった」って後悔させてやるんだ

絵のモチーフについても原田さんらしさが表れていますよね!

原田ちあき – そうですね、とくに女の子を描くのはすごく好きです。逆に男の人を描こうと思ったことはあまりなくて。

確かに、ご家族の絵は拝見しますが、男性キャラクターは少ない印象です。

原田ちあき – そうですね。お仕事で男性を描かせていただくことはありますが、基本的には女の子や、泣いている子を描くのがすごく好きです。そういうモチーフを見ると、「あ、私っぽいな」と思ってくれる方が多いみたいで。

逆に、男の人や、笑っている女の子などは描きづらかったりしますか?

原田ちあき – まったく描けないわけではないんですけど、自分が描きたい“感じ”とは少し違う気がします。モチーフの捉え方というか…自分の中でしっくり来るのは、やっぱり泣いている女の子なんですよね。

「子どもができたから変わったよね」とだけは言われたくない

以前の作品では、強い言葉やピリッと辛口のフレーズも多かった印象がありますが、最近の作品はより自己啓発的で、多くの人が“うんうん”と頷けるような言葉が増えているように感じます。イラストに関しても、セリフと少し距離を置かれたような印象もあって。

原田ちあき – もし変化があるとすれば一番大きいのは子どもを自宅で保育していることですね。子どもが朝5時に起きて、夜7時くらいに寝るまで、ずっと一緒にいます。そこから少し家事をして、夜中の1時ぐらいまで絵を描いたり、メールチェックをしたりという生活なんですけど、以前に比べると、絵に費やせる時間が圧倒的に減ったんです。なので今は時間を節約するという感覚もありつつ、“今できることをやる”というのを、この3〜4年ずっと続けている感じです。劇的に自分が変わったというよりは、限られた時間でできることを必死でやっているという感覚に近いですね。

制作のプロセス自体が整理されてきたのかもしれないですね。セリフ付きの作品はどんな流れで制作されるんですか?

原田ちあき – 常にiPhoneのメモに思ったことをひたすら書き溜めていて…!時間があるときにそのメモを見返して、「これなら今描けそうだな」と思うものから描いていきます。子育てをする以前はとにかくずっと描いていたんですけど、最近はとにかく時間をうまく使うことを一番に考えています。

あと自分のテンションを読めるようになってきて(笑)。今は何を書きたいのか・書けそうなのかという素直な気持ちで描くものを使い分けています。

お子さんが生まれて、仕事への向き合い方や考え方は変わりましたか?

原田ちあき – うーん…なんというか、「結局、続けちゃうもんね〜」という感覚が強いです(笑)。大変なことは増えたけれど、やっぱり描いちゃうし、やめられないという気持ちがあります。

よく「子どもができたら丸くなりそう」とか「作風変わりそう」と言われがちですけど、子どもがいても、結婚していても、嫌なことは起こるじゃないですか。それはたぶん誰しもそうで、すごい美女でも、お金持ちでも、タワマンに住んでいる人にだって嫌なことはある。だから、家族がいるから、幸せそうに見えるから、こういうテイストのものを書いちゃいけない、みたいにはあまり思いたくなくて。「子どもができたから変わったよね」とだけは言われたくないんです。 そこにはちょっとしたプライドがありますね。

私は「案外普通」。

インタビュー序盤に自分は案外“普通”なんじゃないかと思う瞬間があるとおっしゃっていたのが印象的でした。美大や専門学校などでは、いかに個性を出すか、自分の色を出すか、ということをすごく考えると思うのですが、 逆に「自分は普通かもしれない」と感じたタイミングって、どんな時だったのでしょうか?

原田ちあき – 結構若い時から思っていたように思います。過去を振り返って見ても「私だけが経験していること」は少ないと思っていて。若い頃には「これは大事件だ」と思っていた出来事も、今振り返ると失恋した時のほうがよっぽどしんどかったな、と思うことも多くて(笑)。

「コンテンツとして見たときに、特別ドラマティックではない人生」だけど、その中でどうやって作品にしていくか、という感じで捉えているところがあります。あと、よく病んでる人だって誤解されてしまうんですけど、私の作品って元気じゃないと描けないんです(笑)。

和気あいあいと進んだインタビュー。自身を俯瞰できる客観性と、柔らかな口ぶりが特徴的だった原田ちあきの最大のスランプや家族との関係など、さらにパーソナルな部分まで後編では掘り下げていく。

EDIT: Ryo Hamada

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