TOKYO ART BOOK FAIR(通称TABF)はご存知だろうか?東京で毎年10月〜11月頃に開催される、アート出版に特化した日本で初めてのブックフェアだ。口コミやインスタグラムなどで話題を呼び、2009年の初開催から大小さまざまな国内外の出版社、アートギャラリー、アーティストら約350組が出展をし、なんと2万人以上の人々が来場している一大イベントだ。

TOKYO ART BOOK FAIRでは、もちろん写真集やアートブックなどが展示販売されるなか、特に人気を集めているエリアが、主に自主制作されたZINEを販売する「ZINE’S MATE」と呼ばれるエリアだ。
ZINEとは、個人や小規模のグループによって作られる雑誌や写真集・詩集などの出版物を指す言葉だ。
1930年代のSFファンの間で自主的に作られた「FanZine」に端を発すと言われているZINEの歴史はとても長く、これといった定義やルールがないのが特徴だ。似た言葉として「リトルプレス」があり、自らの手で制作した少部数発行の出版物のことを指す。
2010年代頃からインスタグラムやX(旧Twitter)をはじめとするSNSが世の中に浸透し、いままでクローズドだった個人の主張がよりオープンに公開されるようになった。その影響もあってか、アーティストやデザイナーといった、感度の高い人々を中心に再びZINEという制作手法が再注目されたのだ。
よく似たものとして雑誌があげられるが、雑誌はさまざまなライターやエディターの企画が集まっているのに対し、ZINEは作っている個人やグループの、とても個人的な思いやテーマが色濃く反映された媒体であるところが違いと言えよう。(もちろん限りなく「雑誌的」なZINEや「ZINE的」な雑誌があるのも事実であるが…。)
個性豊かなZINEの作り手たち
TOKYO ART BOOK FAIR 2024のZINE’S MATE出店者の一つである東京・東中野にある「loneliness books」はアジア各地のクィア、ジェンダー、フェミニズムに関連するZINEなどを集めたブックストアだ。

フェミニズム的な視点からさまざまな書籍や絵本を制作している韓国の出版社チョウ商会、脳性マヒ当事者としてさまざまな社会運動に関わる古井正代、フェミニスト手芸グループ山姥のメンバーたちのおしゃべりを記録したZINE。
「MORIMICHI ZINE’S FAIR」は“モノとごはんと音楽の市場”をテーマに掲げる「森、道、市場」というフェスの会場内で開催されているZINEのイベントだ。愛知県三河地域を中心に開催され、初夏の3日間を上質な音楽やおいしいご飯をたのしみながらZINEをチェックすることができる。
参加者の「VOYAGE KIDS」は移動式アートブックショップを全国で開催したりもする大阪のアーティストグッズショップ。アートや音楽、ファッションなど、「街で表現する」国内外のアーティストの展示会や出版を手がけている。

名前にはっとするZINE。文字通りズレてるマンホールをただ撮影しまくっている写真集。う~~ん…ズラしたいっ!
国内外のアートフェアやイベントでも展示をする「ドキドキクラブ」も独自な視点でZINEを制作しているアーティストの一人だ。

サンバイザーを目深にかぶる中年女性を撮りためた「サンバイ婆」、日常の風景にノリツッコミを仕掛ける「ザ・ショック」、衝撃的なタイミングをカメラで収めた「ステキなタイミング」など上げればきりがない。
アートブックだと装丁や印刷もしっかりしている分、値段もそれなり。ZINEはカジュアルで値段も買いやすいため、気軽に好きなアーティストや作家のグッズとして購入することができる点も魅力的だ。
ZINEを作ってみよう
いろいろなおもしろ&楽しいZINEを紹介してきたが、自分にもできそうかも?とムズムズしている読者も多いのではないだろうか。ここからはどうやったらZINEが作れるのかを紹介しよう。
MOUNT ZINE(マウントジン)は、誰でも参加できるZINEプロジェクトだ。国内外でのイベント開催やZINEショップの運営、ZINEスクールを開講しており、参加すれば初心者でもZINEをつくることができる。作り方を教わったあと、制作のサポートやアドバイスをもらったり定期開催しているZINEのイベントに出店することもできる。

もう自分でも編集や制作ができる、という方は、作ったZINEを印刷してみよう。
「三交社」という印刷会社では「ZINE(アートブック)印刷」のプランがあり、印刷のプロが作りたいZINEの雰囲気や予算にあわせてさまざまなパターンを教えてくれる。印刷に使う紙の種類や製本方法など自分だけのこだわりのZINEをなるべく手軽に作るための味方になってくれるはずだ。
もっと手軽にZINEを作ったり公開したい人にはコンビニプリントを使うのも手だ。所定のアプリなどを使用してオンライン上にデータをアップロードしたら、コンビニにあるプリンターで操作するとその場で印刷・製本をしてくれる。また予約番号をSNSなどで公開すればどこでも印刷することができるようになり、ZINEフェアなどに参加しなくても日本各地に自分が作ったZINEを公開することができる。(印刷代は印刷する人が負担)
おもしろい視点や作品に出会うことができるZINE。かくいう筆者もZINEを作ったり売ったりした経験がある。完成したときや売れたときの喜びもひとしお、ZINEフェアに参加すると同世代で同じようにZINEを作っているクリエイターから刺激をもらえる。見る側と作る側の双方が楽しい、それがZINEなのだ。