前編では、出水ぽすかの創作の原点や、美術から漫画へと至る過程を聞いた。後編では、作画という役割への向き合い方、コラボレーション、そして現在の制作について掘り下げていく。
作画という立場で描くということ

作画として作品に関わる際、原作を読んだときのイメージはどのように立ち上がるのでしょうか。
出水ぽすか(以下:出水) – そうですね…これ描きたいなと思ったら、すぐ手が動く感じではあります。他の人と比べたことがないので分からないですが、多分そういうところはあると思います。
絵を描くとき、最初に浮かぶのは背景とキャラクターのどちらですか?
出水 – 今はキャラクターですね。昔は背景だった気もするのですが、漫画を描くようになってからは「まずキャラを描かないと」という意識が強いです。
一方で背景も印象的です。
出水 – 背景については構図を考えることが多いです。奥行きや近景と遠景の対比などシーンによってどんな場面が適切かをフレキシブルに描き分けている気がします。
散歩する時にスマホは置いていく

喫茶店で作業されると聞いたことがあります。
出水 – そうですね。今はあまり行けなくなったんですけど、昔はよく行っていました。遠方の気になる喫茶店にも行くこともあります。
目的は作業ですか?それとも気分転換?
出水 – どちらかというと、歩くことですね。家にいるとずっとこもってしまうので、外でいろんなものを見たいなと。
散歩のときに持っていくものはありますか?
出水 – 逆にスマホは持っていかないです。紙と鉛筆だけ。スマホを見てしまうと意味がないなと思って。だからよくスマホの歩数計がゼロなんです笑。
アナログとデジタルのあいだ
制作環境についても教えてください。現在はデジタル中心ですか?
出水 – 仕上げはデジタルですけど、下描きは今でも鉛筆です。完全デジタルだったのは『BEYBLADE X』の2022年くらいからですね。
紙と鉛筆を使い続ける理由は?
出水 – 楽だからですね。充電しなくていいので(笑)。
道具にこだわりはありますか?
出水 – 紙は普通のコピー用紙ですが、鉛筆は『約束のネバーランド』で作ってもらったグッズを使っています。グッズが発売されるとサンプルを頂けることがあるので、使えるグッズは全部使う派です。マグネットとか布団カバーも普通に使っていて、特に気に入っているのがオルゴールです。
影響と原風景

出水先生の描くキャラクターは西洋的な印象があります。
出水 – 学生時代は美術系を目指していたこともあってレンブラントなどの絵画や、国内アーティストでは井上直久の画集などを見ていました。あと子どもの頃にやっていた海外のゲームの影響が大きいと思います。親がパソコン好きで、Windows95とかにあったCDとか「洋ゲー」が家にいっぱいあったんです(笑)。父親が買い与えてくれて遊んでいましたが、ほとんどがもう手元にはありません。ただ、昔持っていた「little big Adventure」というゲームのリメイク版がsteamで登場したのですぐに購入しました(笑)。
実際に海外に行かれたことは?
出水 – 大人になってからは時々旅行にも行きます。連載やコロナ禍で最近は行けてないんですが…。マダガスカルやポルトガル、タイやモンゴルでの思い出が印象的です。
なかなか珍しい旅行先…。
出水 – マダガスカルは、ドリームワークス・アニメーションによる『マダガスカル』が好きで実際に見てみたかったんです。現実は色々大変だなって思いました。もともとフランス領だったこともあり、食事はフランスの影響が強く残っていました。お腹も壊したりしたけど…。


コラボレーションでも消えない“個性”
CHANELや荒木飛呂彦さんなどバリエーション豊かなコラボレーションをされていますが、そんな中でどのように個性を出していますか?
出水 – 個性を出そうとしているわけではないんですが、隠そうとしても出てしまうものだと思っていて。なので、私はむしろ全力でコラボレーションする相手に合わせにいくようにしています。それでも結局出てしまうので、それでちょうどいいかなと。
SNSとの向き合い方についても教えてください。
出水 – Xはどうしても編集さんとかも見ているのもあって、仕事の延長みたいに感じてしまうこともあります。だからpixivは癒やしの場ですね。趣味の絵を投稿したり。色々なSNSをやっているんですけど、どれもが自分の一部なんですが、それぞれの役割や関わり方が違っています。
社会的な発信についてはどう考えていますか?
出水 – あまり創作と関係のないことは、無理に発信しなくていいかなと思っています。もちろん家族と話し合ったり考えることはありますけど、それを作品の場に持ち込むかは別なので。
最後に、これから挑戦したいことを教えてください。
出水 – 大きな挑戦というよりは、とにかく趣味の絵を描き続けたいですね。果物の絵とか、宇宙のイラストとか。ラフだけ描いて放置しているものがいっぱいあって。ありがたいことに趣味の時間をなかなか取れないのですが、自由に絵を描くのをやめたくないなと思っています。それがなくなると人生じゃなくなるので。
出水ぽすかの描く作品からは言葉以上の何かを受け取ることができる。それは仕事であっても趣味の絵であっても変わらない。そこには一貫した「自分が見た世界をどう描くか」という問いがあるからだ。淡々と語る一言一言にも出水自身の鋭い視点が垣間見えたインタビューとなった。これから描かれるのはどんな景色だろう。でもきっとまた、私たちをどこか素敵な場所へと連れていってくれるのだろう。