【連載】Convenience ART Vol.5「忘れられない65ml」

「コンビニエンスアート」第5回目。今回は定番の健康ドリンク「ヤクルト」についてご紹介。

誰しも一度は飲んだことのあるヤクルト。思えば独特な味なのに、とても馴染みが深い気がする。

その馴染み深さには訳があり、実はこの容器、1968年の誕生から半世紀以上にわたって、一度も姿形を変えていないのだ。ぼくらは50年以上もの間、この形を手に取ってきた。

このデザインを手がけたのは、日本のインダストリアルデザインの先駆者、剣持勇。建築家ブルーノ・タウトに師事し、日本の暮らしと近代デザインを融合させた巨匠だ。彼は常に、日本人の暮らしを一番に考えていた。和室の畳やふすまと調和するデザイン。それがデザイナー剣持勇の真髄だろう。

1935年の発売当時、ヤクルトは重いガラス瓶で売られていた。しかし普及に伴い軽さと量産性を考える必要が出てくる。そうした事情が相まって白羽の矢が立ったのが、当時すでに名を馳せていたデザイナー・剣持勇だった。彼のもとに、新しいプラスチック容器の設計依頼が舞い込んだ。

ヤクルトの特徴は、その容量の少なさにある。65mlという少量がピッタリと収まる容器をプラスチックで作れば、手の中で安定せず、一気に流れ出せば飲み口の制御も難しくなる。そこで剣持は、容器の中ほどに大きな「くぼみ」を作った。

指にぴったりとはまるホールド感。そして、内容量に反して安定する重量操作。この「くぼみ」というシンプルなアイデアが、二つの課題を鮮やかに解決した。今やこのシルエットが、ブランドを象徴するアイコンとなっている。言うなれば、一石三鳥といったところか。

実は剣持勇は工業デザイン以外にも、アーティストとの共同生活も行なっている。

1950年代、彼は来日していた彫刻家イサム・ノグチと共同制作を行っている。竹を籠状に編み上げた「バンブー・チェア」。現存こそしないが、そのしなやかな構造は、後にノグチが生み出す名作照明「AKARI」の骨組みへと繋がっている。

表現の形は違えど、二人の作品はどちらも、日本人の生活に不思議とフィットする。

日本人の胃腸を見つめたヤクルトと、日本人の暮らしを見つめた剣持勇。一方は身体を整え、一方は生活を整える。ぼくらは知らず知らずに、彼らの「配慮」を飲み干しているのだ。

EDIT: Yuki Shibata

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