【インタビュー】加賀美健の、ホントの話 – 後編
「トイレを見ると人となりが分かる」って話を聞いたことがある。何度回数を重ねてもインタビューは毎回緊張するもので、それが時々膀胱を刺激してきて困っている。この日もあいにくで、アトリエでトイレをお借りした。戸を開けると大小様々なすっぽんが20本近くあって、「ああ、おれは今加賀美さんの所に来ているんだ」と、改めて実感した。
とまあ、後編です。
流行ったら飽きられちゃうから

他人からの評価が気になることはありますか?
K – んー、例えば流行ったらそれを続けるのって難しいよね。流行りが終わっちゃったら大変だし。
流行らないように気をつけている?
K – 俺、絶対流行んないもん。別に流行るようなことしてないから、それは安心してる(笑)。わかんない、流行ったら流行ったで嬉しいのかもしれないけど、SNSとかで「いいね」が増えてきたら、それはもう危険信号。だって、流行るってことは理解されるってことだから。例えば、僕が1つの絵を描いて、「これこそが加賀美健だ」みたいな形で人気が出たとしたら、もうそれしかないじゃない。僕はやりたいことがいっぱいあるので、何が加賀美健なのか、いつまでもわからないような状態にしておきたい。ステッカーとかは結構目につくけど、やっぱりそれだけじゃない。色々と揺さぶっていた方が、見てる側も飽きないと思うし、何より自分も飽きないから。だからこんだけ色々やってるんですよ。セパバス(SEPARATE BATH & TOILET)もそうだし、「STRANGE STORE(ストレンジストア)だってそうなんです。
恥ずかしさも作品になるパフォーマンス

様々な活動の中で、海外での活動も積極的ですよね。日本と比べて反応の違いは感じますか?
K – 感じますね。僕、英語喋れないんだけど。
えっ、喋れないんですか?
K – 喋れないですよ。でも、海外の観客はノリがいい部分はある。僕はアートフェアとかでパフォーマンスをするんですけど、海外の人は面白いと思ってバーっと見に来る。日本人はシャイだし、空気を読むじゃない。僕のやるパフォーマンス、結構クセが強いから。
どんなことを?
K – 似顔絵なんだけど、男には「男性器」を描いてあげて、女性には「胸」を描くっていう。その人を目の前にして、顔からその部分を想像して描く即興のパフォーマンス。
どんな反応になるんですか(笑)。
K – 笑ってたりね。どんなのが描かれるか周りの人からも見られるわけだから、恥ずかしいじゃない。実際に出して描いてるわけじゃないけど、僕が勝手に想像して描く。周りも笑ってる。それも全部含めて作品なんです。描かれた人も作品になっちゃうっていう。ただ、この前香港でやった時は、キュレーターの人から相談を受けて少し変えたんです。男女共に好きな方を選べて、両方描いてほしい人がいたら両方描いてあげるように。
ずっと変わらない姿

昔の写真とかインタビューを拝見しても、今と全然変わりませんよね。外見もそうだし、考え方だったり。
K – 逆にどういう風に変わるの?
例えば大きな挫折だったり、自分を変えざるを得ない状況ってたくさんあると思うんです。
K – 挫折か、そもそも挫折とか失敗とは思わないかな。
今回は失敗だったけど、もう一回やれば成功するかもみたいなことですか?
K – 成功するかもとも思わないですね。
え?
K – やり続けるってことですよ。別に好きだから、面白いからやってるだけで。だから面白くなかったらいつでもやめると思いますよ。それがたまたま仕事になってるだけで、仕事が先になっちゃったら多分大変なんじゃない。仕事にしないといけないってマインドになるから、そうすると多分とてつもなく作品がつまんなくなっちゃうと思う。
あー、なるほど!
K – だけど今の子たちって先に仕事にしようと焦っちゃうから。だから大変なのよ。アートなんてめちゃくちゃ時間かかるから。
そうですよね。
K – 1年が10年ぐらいかかる仕事なんで。って言うと、みんなやっぱり「あー…」ってなっちゃうみたい。
仕事と趣味の境界はどのように考えてますか?
K – もう一緒ですよ。むしろ趣味がないんで。仕事が趣味の延長に近いです。僕としてはただ好きなものを集めて作品にしたり、発表したりしてるだけです。
「アートなんて遅咲きの方が絶対いい」

趣味の延長で結果的に仕事になったとのことですが、食える、食えないはもちろん大事で、結婚やお子さんが生まれたりしたタイミングで心境に変化はありましたか?
K – ないです。なんとかなるだろうなと思って。もちろん全然仕事になんなかったら他の仕事すればいい話だから。
その覚悟みたいなものは常にあった?
K – 今でもあります。何もしないでは生活できないし。
日本でアート活動を始められて、最初の10年ほどはアルバイトを続けていたそうですが、当時は将来への不安とかもなかったですか?
K – ずっと不安ですよ。死ぬまで不安です。だって不安がなきゃ多分ダメなんじゃない。
なるほど。逆に。
K – だってあるでしょ?
ありますね(笑)。でもそれを何とかなくそうと努力しちゃうと思うんです。
K – でも、消えないでしょ?消えたら多分面白くないですよ。不安の質にもよるけど、漠然と「どうなんだろうな」みたいなものはずっと持ってるし。
今もあると。
K – いや、ありますよ。もちろんある。考えすぎて体調を崩してしまったりしたら大変だから、そのバランスは大事だけどね。

あとは、バイトしてた時は長い目で見ていたから。いきなり仕事が来たら逆にそっちの方が不安かもしれない。いきなりブレイクとかしちゃったら、多分ブレイクってほら、「壊れる」って意味だから、そっちの方が怖いかな。
絶対遅咲きの方がいいんですよ、何でも。特にアートなんて遅咲きの方が絶対いい。年齢と順を追って、徐々に作品が高くなっていくのが理想的だよね。徐々に徐々に進んでいく。スタイルを崩さず。だからアートは時間がかかるの。おじいちゃんになった時にいい感じになるっていうのが最高だよね。
長時間お話を伺って、最初に目指した「本当の加賀美さんを知る」ことが出来たかは正直分からない。あとがきで簡単にまとめる、ましてや一言で彼の魅力を語ることも到底出来ない。ライターとしてはいけないのだろうが、もし言葉に出来たとしても、それをすることは野暮な気もしている。ただ一つ思ったことは、彼みたいな大人になりたい、それだけは確かだ。
STRANGE STORE
住所:東京都渋谷区鶯谷町12-3 フローラ代官山301
電話番号:03-3496-5611
営業日時:Instagramにてご確認ください。
公式Instagram:https://www.instagram.com/store_strange/
公式サイト:https://strangestore.shop


































