4次元で観る『YONEYAMA MAI EXHIBITION “arc”』

米山舞の個展が、およそ2年ぶりに開催される。

アニメーションの現場で長きに渡り活躍してきた米山は、2018年頃から、本格的にイラストレーターとしてのキャリアをスタートさせた。2019年の初個展「SHE」を皮切りに、2021年の「EGO」(anicoremix gallery)、2023年の個展「EYE」(PARCO MUSEUM TOKYO)と、意図してか、これまで2年おきに個展を開催してきた。
そして2025年、今回の『YONEYAMA MAI EXHIBITION “arc”』である。

それぞれ、青山、原宿、渋谷、銀座といった開催地の変遷を辿って来た訳だが、アニメーター出身であり、そのルーツを重視する彼女が、未だ会場に秋葉原を選ばないのは何故か。
私にはそれが、彼女の特徴のひとつである、アニメーション・イラストレーション・アートと、越境していくアーティスト活動と重なって見える。

今やこの国で、アニメを「オタク文化」と呼ぶ人はいない。むしろ、日常に“ありふれてしまった”アニメは、情報の氾濫する現代において、簡単に消費されてしまいかねない。現に私たち普通の視聴者は、アニメーションが一体どのようにつくられ、どれほどの人が関わり、どれだけの絵が描かれているか知らない。
アニメや漫画における原画の価値が囁かれ始めている昨今の潮流、放送画面からは見えない、画面の奥の影の部分を再評価しようとする気運は、そうした現状に一石を投じている。

そして米山は、その第一線にいる。

「時間」と「連続性」をテーマに据えたと語る今回の個展は、それまでの展示としては初めての試みとして、自主制作した映像を作品として展示・販売している。
そして何より特徴的なのは、会場の空間設計として、外壁・内壁・中央と、3つの異なるレイヤーで構成した点だ。それぞれ、外壁を走る1コマ毎のカット、内壁を飾るのは、大小様々なイラストレーション、そして中央に鎮座する3メートルもの彫刻作品。その背後の巨大スクリーンには、アニメーションが映し出される。

そうした流れの中での鑑賞体験は、ひょっとすると、米山から観た、ある1つのアニメーション作品への視線・思考をなぞり、追体験することに近いのかも知れない。
3つのレイヤーを通して、シームレスに、アニメーション・イラストレーション・アートへと接続されていく流れるような展開は、1つの絵の中で、流れるようなストーリー性を感じさせる米山舞の真骨頂と言える。

昨今の原画への再評価や、米山の言うセル画の価値を認めることは、すなわちアニメーションを取り巻く細分化された職種に目を向けるということに繋がり、ひいては、度々問題になるアニメーターの労働環境・賃金などの問題に光をあてるきっかけになるかも知れない。アニメーションをハイエンドな銀座の街に持ち込んだ『YONEYAMA MAI EXHIBITION “arc”』は、そういった意味でも、非常に重要な意味合いを孕んでいる。

YONEYAMA MAI EXHIBITION “arc”

会期:2025年12月6日~12月28日
会場:銀座 蔦屋書店 GINZA ATRIUM
アドレス:東京都中央区銀座6丁目10-1 GINZA SIX 6F
電話:03-3575ー7755
開館時間:11:00~20:00(最終日 ~18:00)
観覧料:無料
公式サイト:https://store.tsite.jp/ginza/event/art/50901-1725021030.html?srsltid=AfmBOooZH2OQWBIFdSqHDGHBGJyACjc9Owt21w-9hOArGwLmIlZlPQ2J

EDIT: Ryo Kobayashi

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