12月5日(金)からの3日間、「幕張メッセ」にて開催された『東京コミックコンベンション2025』(「東京コミコン」)。世界中から人が押し寄せるポップカルチャーの一大祭典だ。今年はジョニー・デップも登場するなど、カルチャー界の有名人たちも会場へ大集結。

日本の漫画界からもレジェンドたちが会場へやってきた。リングステージエリアで開催された「TOKYO MX presents 「着る」漫画家による仏の世界展」にあわせ、漫画家のバロン吉元さん、いがらしゆみこさんが駆けつけ、ディレクションを務めたTOKYO MXプロデューサー・哘誠さんをMCに、トークショーを開催した。その模様はこちらの記事から。
遡ること2013年。当時の漫画家協会会長・小島功さんの呼びかけにより、赤塚不二夫さん、いがらしゆみこさん、ちばてつやさん、浦沢直樹さん、バロン吉元さんら日本を代表する漫画家たちが、「仏」をテーマにアート作品を制作。震災復興支援を目的とした巡回展として、役割を担った作品たちをNEW ERAが制作するキャップとTシャツとして甦らせるのが、今回のプロジェクトだ。展示会場に作品を展示するいわゆる“箱型展示”の枠を超えて、身に纏う人々そのものが“展示者”となることをコンセプトにデザインされている。

トークショーにも登壇したお三方に、改めて作品へのコメント、コミコンの感想、そして、日本漫画界への想いを伺った。
哘 -「この企画には、著名な漫画家さんがたくさん参加されています。そんな漫画家さんたちの『仏』作品に感動しました。そのまま展示を続けても今の時代にこの感動を広めていくことは難しい面もある。『着てもらう』という体験を通して、皆さんに知ってもらいたい、というのがありました」
いがらし -「まさか『仏』がキャップになるなんてね。バロン先生も着こなしが素敵で似合ってる」
今回、コミコンの場で40年ぶり(!)となる久々の再会を果たしたバロンさんといがらしさん。急遽サイン会も開催するなど大盛り上がりだった。
バロン -「サイン会の分け前はちゃんとくださいね(笑)」
いがらし -「急なお願いにも乗ってくれて本当に“仏”のように優しい人なんです。バロン先生のおかげで40歳は若返っちゃったし、とても楽しかったですよ。私は元々バロン先生のファンだったんです。本当にお上手で、プロ中のプロ。いざ会ってみたらすごく気さくな人柄で。あのときのまま今も変わらなくて、驚きとともに嬉しい」
バロン -「楽しかった色んな思い出が蘇ってきますよね」
『仏』作品を制作した際の思い出を伺った。
バロン -「『天女不動』はとても気合を入れて描きました。実は現在連載中の『ああ荒野』のほかに、私のアトリエでは、縦2メートルと横4メートルほどの大きな作品を描いているのですが、やはり漫画のコマの枠を超えた大きな作品はいいですね」

いがらし -「『如意輪観音』は煩悩を消し去るんですけれど、今、私自身はタバコもお酒もやめて、猫と一緒に暮らしていてもう満足で。煩悩がないんです(笑)日々が幸せで満たされた気持ち。もしかすると、今の気持ちを予知するかのような温かな絵になっているかもしれないです。やはり漫画の原稿を描くときとは全然違う気持ちでしたね。厳かな気持ちは着る人にも伝わるかも。買ってくれた人は、『自分だったらこう描くかもな』とか思いながら『着る』仏作品を“遊ぶ”気持ちで楽しんでほしいなと思いますね」
バロン -「そうだね。熱中して描いたものだから、作品のオーラがある。そんな作品を、今私が着て、それを別の人が着たり被ったりする。なんだか人間的なコミュニケーションを感じるし、作品が非常に自由になっていく感じがしますね。広い意味での人との繋がりを感じて着てもらえたらいいかな」
哘 -「自分はデザインで参加したのですが、今回は第一弾で23種類あります。もちろん全て漫画家さんの魂がこもっている素晴らしい絵の数々です。『これ可愛いな』『素敵だな』と気軽に手に取ってもらえたら嬉しいです」

バロンさんはこの日一日を振り返る。
「コミコンにはたくさんの人が来ていて、熱気を感じますね。日本の絵、漫画をもっともっと世界に発信したい。日本の国が色んなものを失いつつ、文化や経済が低迷していくからこそ、それを持ち上げるには国にも協力してほしい。海外にもっと面白い部分を発見してもらいたいし、日本の文化を発展させていきたい。ぜひ国や都には『東京漫画ミュージアム』の設立を!」

あらゆるポップカルチャーが集まるコミコン。その中でも世界に誇る日本の漫画文化の力を感じた。この力の源が、バロンさんやいがらしさんらレジェンド作家たちの仲の良さ、そして精力的に第一線で活躍してきたパワフルな姿、未来への責任感にあるのだと感じた。漫画文化への愛、力の込められた作品を、ぜひ「着て」楽しんでみてはいかがだろう。