【イベントレポート】FRIEZE SEOUL2025ー連帯するアジアのアートシーンをどう解釈するか

西洋から始まった現代美術の世界。それを追いかけるようにして発展していったアジアのアートマーケットだが、時間を重ねるごとに少し違った様相を呈してきているーーー。

FRIEZE/フリーズはイギリスで30年以上前に刊行されたコンテンポラリーアート・カルチャーの雑誌に端を発する。その後フリーズ・ロンドン、フリーズ・マスターズ、フリーズ・ニューヨーク、フリーズ・ロサンゼルスといったプレミアム・アートフェアを手掛けておりそのいずれもが美術関係者にとって最も重要なアートフェアの一つとなっている。2025年9月3日から9月6日まで開催された第4回のフリーズ・ソウルでは、韓国・日本をはじめとするアジア各国とヨーロッパ諸国、北米などの国から120 以上のアートギャラリーが参加した。

近代美術の名作を紹介するフリーズ・マスターズで出品されたジョルジュ・ブラックの作品群

会場はソウル・江南地区のコンベンションセンター「COEX」。ほぼ同時期に開催されたKiaf Seoulでは韓国国内のギャラリーを中心に若手作家の積極的な紹介や韓国文化を洞察した作品などが目立った。一方フリーズ・ソウルでは、歴史的に希少性の高い作家などを含む、国際色豊かな作品を多く紹介している印象だった。

コンテンポラリーアートの現在地ーエルヴィン・ブルム

Kiaf Seoulと同様に大勢のビジターで賑わっている会場。目につくのはそれぞれのギャラリーでの作品の売れ行きだ。一般的にアートフェアでは早い者勝ちで作品の販売が行われる。そして購入された作品は会期終了後に購入者へと届けられる仕組みとなっている。作品の販売状況は作品リストやキャプションに貼られた印の色を確認すればよい。色のわけ方はギャラリーによって様々だが、赤は売り切れ、青は交渉中とされることが多い。基本的に印がついているものは、購入することができないものと認識していれば間違い無いだろう。

フリーズ・ソウルに出展していたTake Ninagawaでは開始10分で大竹伸朗の大作が販売されたという。韓国のアートマーケットは一時の勢いを失いつつあるという見方もされるが、アジアの中でのハブとしての立ち位置は依然高いことがわかる。

Take Ninagawaのブース。今年のFrieze Stand Prizeを受賞した。

そんな勢いを表すかのように、展示された作品も現代アートのマスターピースばかりであった。エルヴィン・ブルムは1954年オーストリア生まれ。ウィーン応用美術大学とウィーン美術アカデミーで学び、ウィーンとリンベルクを拠点に活動しているアーティストだ。世界各地の影響力の高い美術館に作品が収蔵され、そのシニカルでユーモラスな作風を展開し第一線で活躍している。

左:Vanity;2023 右:Melancholia;2024 いずれもErwin Wurm

ロンドン・パリ・ソウルなど5箇所の都市に拠点を持つThaddaeus Ropacでは「Vanity」が展示販売された。アルミニウムによって作られたこの彫刻はバッグから足が生えている不気味な彫刻だ。そしてこのバッグのモチーフは、大流行したBottega Venetaの「カセット」というデザインだ。ニューヨークを拠点にするギャラリーLEHMANN MAUPINEでもブルムの「Melancholia」という作品が展示販売されていた。どちらもファッションアイテムがモチーフとなっており、私たちがバッグや洋服を通じて、他人からどう見られたいかという欲望と、世界からどのように見られるかという問いかけを示唆しているという。

連帯するアジアのアートシーン。ソウルから世界へと発信する意味

村上隆の作品群を一目見ようと人だかりになるPerrotinのブース

世界の美術館関係者やコレクターが、ここFRIEZE Seoulに集まる理由は、韓国や日本をはじめとするアジアのアートシーンへの注目が高まっているからだろう。自身の出自や自国の伝統・文化を作品に取り込むことで、西洋のアーティストとは異なったアプローチで現代アート作品を制作しているアジア人アーティストたちは、ここ数年で国際的な評価が高まっている。

Self-portrait;Sun Yitian 2025

1989年にベルリンでオープンしたEsther Schipperのスペースでは、中心にSun Yitianによる新作が展示販売されていた。Sunは北京を拠点に活動する女性アーティストで、2024年にはルイヴィトンとのコラボレーションでも話題となった。「Self-portrait」では3枚で1作品となっており祭壇画のような構成だ。中央の女性は水着姿で肌を露出しながらも、顔を覆われている。その姿は無防備であると同時に反抗的な印象を与える。この被り物は青島のビーチで、日差しとクラゲの刺傷から身を守るために登場したフェイスキニというアイテムだ。画家にとって、フェイスキニは日本や韓国で古くから存在する海女の伝統を想起させ、家父長制社会における女性の自立精神の象徴と結びつけている。

Floor to Floor Lamp;玉山拓郎

また東京から参加しているANOMALYのスペースでは玉山拓郎の作品が展示され、身近にある家具を使って重力や空気といった目に見えないものを知覚させ、天井によって支えられた空間において、それぞれの建築要素の役割と意味を変容させることで、新たな視覚的風景を生み出している。

世界48カ国から7万人の来場者を集めたFRIEZE Seoul。名作から最新作まで、現代アートという系譜を時代ごとに捉えることができるとともに(しかもそれらが購入できる…!)、また違った熱気が感じられたアートフェアだった。東京から2時間強でいくことのできる、最も近いアジア都市ソウルで濃密でエキサイティングなアートをぜひ体感してみてほしい。

EDIT: Ryo Hamada

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