【インタビュー】かわいく弾けて。coalowlの意外な素顔 – 後編 

イラストレーター、アニメーション作家として活躍するcoalowlさん。
TVアニメ『チェンソーマン』のEDアニメーション、PEOPLE1の『常夜燈』MV、カンロ発売のグミ「Marosh」パッケージイラストを手掛けるなど、第一線で活躍する中、これまで自身について語ることは無かったのだが…。

初の個展を開催するこのタイミングで、彼女の生の声を、知られざる創作の裏側を、独自取材することに成功!これまで歩んできた道のりから、数々の作品が生まれた背景、ハイクオリティなアニメーション、謎に包まれたcoalowlさんのインタビュー記事を前後編でお届けします。

Summer has come!

社会人を経て、突然無職に!?

前編にて、会社を辞めたところまで伺いました。突然辞めるとなると、何もなくなってしまうじゃないですか。その後の生活はどうされましたか?

coalowl – 当時は先が見えないから、「大丈夫か?生きていけるのか?」っていう不安はありました。コンビニでバイトして帰ってからポートフォリオを描き溜めていくっていう生活でした。

ターニングポイントはありましたか?

coalowl – 2020年に、にじさんじ所属のVtuber葉加瀬冬雪さんからMV用のイラストをご依頼いただけたことが大きかったです。SNSのフォロワーさんが500人くらいの時期に見つけていただけて本当に嬉しかったのを覚えています。また現在大好きな月ノ美兎さんなどのVTuberを知って好きになるきっかけでもあったので、とても大きな出来事でした!

生計をたてていけるようになるまでどのくらいかかりましたか?

coalowl – 会社を辞めてから2年くらいです。

2年!?相当早いですよね。初めのうちはあまり作品の反応がない時期もあったかと思うのですが、当時はどのようにモチベーションを保っていましたか?

coalowl – 最初はほぼ全く反応がなくてきつかったです!「やるしかないから」っていう感じにはなっていましたね。会社も辞めちゃったし、もう他にないから。でも絵を描けるということは嬉しかった気がします。

『チェンソーマン』第4話ノンクレジットエンディング / CHAINSAW MAN #4 Ending│TOOBOE 「錠剤」

最初はいわゆる下積み的なニュアンスかと思うのですが、試行錯誤していく中で、絵柄を変えたりすることはありましたか?

coalowl – 絵を仕事にしていこうと思った段階で、自分の好きな絵柄や作風をかなり探りました。なので、模索する前に描いていた絵柄と今の絵柄はだいぶ違います。基本的なところはもうずっと変わっていないですが、今でも何が好きかをずっと意識し続けており、“好き”を常に疑うようにはしています。

好きなものをめいっぱい詰め込んで

直接的に影響を受けたアーティストや作品はありますか?

coalowl – 『HUNTER×HUNTER』とか『カードキャプターさくら』、『なるたる』とかはすごく好きです。子どもの頃からですけど、色々な漫画家さんの絵には影響を受けていると思います。

インスピレーションの点において、例えば音楽などが活きていることはありますか?

coalowl – やっぱり映画の影響が大きいですね。この作品は映画のポスターをイメージして描きました。

1997

「1997」に何か意味はありますか?

coalowl – この絵自体が架空の『1997』という映画のポスターです。私が90年代の映画が好きで、ロードムービーとか、逃亡劇とか、なんか「こういうのいいよね」っていう要素をかき集めて作りました。90年代ってなんか切ない、終末感とかもあって。

PEOPLE 1『常夜燈』の冒頭の歌詞で、「天国に学校はあるかしら ふらつく足で見つけたのは 古い映画の悲しい結末」という箇所があります。MVでのシーンでは、『ライフ・イズ・ビューティフル』が元ネタになっているそうですね。

coalowl – そうですね。この部分は確かPEOPLE 1さんからの依頼で描いたものだったと思いますが、自分でもいわゆる“オマージュ”を入れ込むことはあります。その時はちゃんと依頼者には「この部分のオマージュ元はこれです。」ってちゃんと伝えて。大体は事後報告、完成してから伝えることが多いですけど…!

「自分で踊って、自分で描く」

アニメーションの動きが、リアルと「かわいさ」が共存していて不思議な魅力があると思うのですが、どのように作っているのですか?

coalowl – ロトスコープという手法も要所で取り入れながら、毎回全編1人で手描き作画をしています。ただそのままロトスコしてもかわいくならなかったり、固かったりこぢんまりしてしまうので、誇張したり全然なぞらなかったりして工夫をしています。

1人作画・・・・!!すごい物量ですね・・!となると、アニメーションの踊りの部分は、実際に踊った動画を元に制作しているんですね!ダンスはダンサーの方に踊ってもらう形ですか?

coalowl – 自分で踊って、それを撮影しています。初期は振付をダンサーさんにも協力していただきながら制作し、自分で踊ることが多かったですが、最近は全て自分で振付を作って自分で踊ることが多いです。だからMVのために踊りの練習をしたりもするんです。

にじさんじ所属Vtuber月ノ美兎さんを描いたcoalowlによるファンアート作品

初めからそのやり方だったんですか?

coalowl – そうですね。それまではアニメを描いたことがなかったので、「どうやろうか」ってなった時に、「あれ?そういえば、新体操やってたな。興奮してきたな。自分で踊って自分で作っちゃおう。」っていう。ただ、初めの頃は作り方が分からなくて、CLIP STUDIO PAINTのイラスト機能で1枚ずつ描いては、PNGで保存して、最終的にFinal Cutに全ての絵を読み込んで作っていました。今とは比にならないくらい時間が掛かっていたと思います。後から、CLIP STUDIO PAINTにはアニメーション機能があるってことを知って・・・。

めちゃくちゃ手作業で、異例な作り方だったんですね。ちなみにそのやり方で作った作品はまだ残っていますか?

coalowl – そうです、DIY的な精神で・・・。アイワナビーフリーや常夜燈やテレキャスタービーボーイがその作り方です!アホだと思います。魔法の歌あたりからアニメーション機能の存在を知りました。・・・。

ちなみに、ものすごい作画枚数とお見受けする常夜灯のMVはどのくらいの期間で制作されたんですか?

coalowl – 2ヶ月くらいだった気がします・・・!とにかく毎日、起きて寝るまでバイト以外の時間はずっと描いてました。アニメってこんなに大変なのかとめちゃくちゃ苦しかった・・・。出来た時は「うおおおおお!!」って、フルマラソン走り切ったように感動しましたけど、何回も何回も向き合うので見慣れてきて、「これ、本当に受けるのか・・?観てもらえるのか?」という気分になりましたね。

「うまいね!」よりも「かわいい」を目指して

作品に共通して、色味のこだわりとかはありますか?

coalowl – やっぱり視認性を高くすることは意識しています。作品を出す以上、目立たせたいっていうのはありますね。分かりやすさというか、派手さというか。

依頼された仕事の中で、どのように自分らしさを出すのか考えることはありますか?

coalowl – 自分の中では「出してやるぜ!」みたいな気持ちはあまりないんです。どちらかと言うとこれまでの作品での自分らしさ、自分の絵柄を見た上でご依頼頂いていると思うので、そこはいつも通りに描くというか。

水色メイド天使ちゃん

たくさんのイラストレーターの中で、ご自身の特徴は何だと思いますか?

coalowl – 以前友人が身分を隠して二次創作のアカウントを作っていたことがあったんです。フォロワーが既にかなりいて、偶然それを見つけた。「これ、あなただよね?」って聞いたら、「バレましたか。」ということがあって。

すごい、わかるものなんですね。

coalowl – 分かります。「やっぱそうか」ってなって、私もやってみようかなと話していたら、「絶対一瞬でバレるから意味ない」って言われて。自分ではそんなに違うと思っていなかったんですけど、分かるものなんですね。言語化はしづらいですけど、どこかその人の絵柄みたいなものは雰囲気で出るんだと思います。ただ自分に関して言うと、これといった特徴がそこまであるとは思っていないですけど、シンプルな絵柄にしようとは意識しています。

coalowl さんは、Xのメインアカウントと別に、「ぶたさん」というアカウントもありますよね。

coalowl – 特別ぶたが大好きとかじゃないんですが、学生時代から落書きで描いていて気に入って、そこからずっと描いてます!「気づいたら隣にいた」、みたいな感じです。これからぶたさんの方も頑張っていきたいと思っているので、楽しみにしていただけると嬉しいです!

魅惑のマーメイド
漫画「ぶたさんと女の子」より

ご自身の作品で、特に見て欲しいポイントはありますか?

coalowl – 作品を観てもらった時に、最初に来る感情が「上手い」より「かわいい」だと嬉しいなと思っていて、それは意識しています!

一番大切にしていることは「かわいさ」なんですね。

coalowl – それはずっと変わりません。自分が「かわいい」って思えるものを描く、そう思えないものは描きません。「かわいい」ものがすごく好きで、愛でたいし、見たいし、そばに置きたいから。私のイラストもそう思ってもらえたら嬉しいです。

coalowlさんの手掛けるイラストやMVからは「かわいい」も「かっこいい」や「エモーショナルさ」も伝わってきますが、これからどんな表現をしていきたいですか?

coalowl – もちろん好きなものってかわいいものだけじゃないから、今まで自分が接種してきた好きなものを私なりに出力していきたいです。自主制作で物語性のあるアニメを作ってみたり、いつか映画なども作ってみたいな・・と思ってます。まだまだ頑張っていきたいです!

初めての個展 – メタルと「かわいい」の融合

最後に個展についてお聞かせください。初めての個展とのことですが、何か新しい試みはありましたか?

coalowl – 今まで作れなかった可愛らしいグッズを作れました。服やメタル系のグッズなど、企業さんが絡まないと作るのが難しいものにトライ出来たと思います。服はずっと作りたかったので、デザインやカラー、素材にまでこだわって、何度もテストして作りました。

服のデザインはゼロから作ったんですか?

coalowl – 始まりは元のこの絵があって、「これ作りましょうか!」という流れです。その上で色々試しながら作り上げました。

Tシャツの原案となったイラスト「ぶたさんと女の子 KV (半袖) 」

ご自身のイラストがグッズやMCAになったのを見て、いかがでしたか?

coalowl – 過去に一度MCAを作らせていただいた事があって、その時は個人的にメタルの良さと、自分の絵の良さをうまく活かせなかったんです。めちゃくちゃ悔しくて、それを今回は回収出来ました。結構メタル感やマット感が出るのを意識して書き下ろしました。

確かに、僕のイメージだと、メタルってかっこいいみたいなニュアンスがあって、coalowlさんのイラストのような「かわいい」ものとメタルの融合みたいなところは難しそうだなと思ったのですが、うまく共存、表現されていて。

coalowl – めちゃくちゃ分かります。いつも通りに描いて、その上でどうしたらメタルに「かわいい」とか「おしゃれ」な要素を出せるかを意識しました。

あくまで「かわいい」で勝負したと。

coalowl – そうです!

イラストレーター・アニメーション作家として活躍するcoalowl、待望の初・全国巡回個展が開催。アートブランドGAAATとのコラボレーションにより実現した本展示は、coalowlのかわいらしい世界観で描かれる人気作や描き下ろし新作が、同ブランドの代名詞「Metal Canvas Art (以下:MCA)」として生まれ変わった。

会場では、MCAはもちろん、本展示でしか手に入らないオリジナルグッズや、特別にアニメーションの上映も実施!アートとして生まれ変わった新たなcoalowlに出会うチャンスかも!?ぜひ会場でご覧ください!

イラストレーター/アニメーション作家・coalowl、待望の初・全国巡回個展。

2025年10月31日(金)〜2025年11月5日(水)
12:00-18:00
東急プラザ原宿「ハラカド」3階 THE COFFEE BREW CLUB ギャラリー

【巡回展詳細】
https://gallery.gaaat.com/pages/coalowl?srsltid=AfmBOopbNITSVWczycln2Qja84pgff2mgGHbJwzZL5kBpTYu6LKqLNLF

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