街に溶け込むアート – 商業空間が生み出す新しい表現の場

アートの入り口は人それぞれだけれど、なかなかハードルが高いのも事実。難しいコンセプトや、おしゃれすぎるギャラリーや美術館の雰囲気にもちょっとだけ引け目を感じる。(あとアーティストやスタッフたちに見方を評価されているみたいで怖い…。)

誰でも気軽なアート体験

誰でも気軽に伸び伸びと体験することができる、それが「パブリックアート」である。

パブリックアートとは「公共空間のための芸術・文化作品」を指す。経済恐慌後の1930年代、スウェーデンやアメリカで苦しい状況にある芸術家やアーティストのための公共政策として始まった。また戦後にはフランスで公共建築に美術作品の設置を定めた法律が成立し、その後アメリカ、中国、台湾、韓国などの国々で法制化が進み、文化政策の有力な制度として定着している。
公益財団法人 日本交通文化協会

アートは人と人を繋ぐコミュニケーションのツールになる。それを国や公共が評価して広まった制度、というわけだ。日本ではまだまだ認知度の低いパブリックアートだが、東京や大阪といった大都市を中心に、その必要性に注目が集まっている。

パブリックアートの魅力は、なんといっても触ったり近くで見ることができることだ。小難しいルールや周りの目を気にせずにアートを楽しめることだ。東京・丸の内仲通りを中心とした「丸の内ストリートギャラリー」は文字通り、道沿いにアート作品が設置してあるパブリックアートの作品群だ。

ここでは新進気鋭の若手作家の作品から、水玉模様でお馴染みの草間彌生やヘンリー・ムーアといった大御所作家までの作品を楽しむことができる。丸の内仲通りは近年、様々なブランドを誘致してショッピングストリートとなっており、一部の飲食店では食べ歩きができる商品なども販売している。ご飯やドリンク片手に、ショッピングの途中に、気軽にアートを体験できるスポットだ。

草間 彌生:「われは南瓜」
草間 彌生:「われは南瓜」© MITSUBISHI ESTATE Co., All Rights Reserved.

大きさが魅力の一つに

もう一つの魅力は“デカさ”だ。パブリックアートは屋外に設置されている作品も多く、空間に溶け込む作品は、その広々とした空間を生かしたとにかくデカい作品を楽しむことができる(笑)。

誰もが知っている「太陽の塔」もパブリックアートの先駆け的な作品と言えるだろう。

岡本太郎:「太陽の塔」
岡本太郎:「太陽の塔」(Unsplashより)

1970年の大阪万博のシンボルとして制作された太陽の塔は、現在は大阪府吹田市の千里万博公園内に設置されており、事前予約制で中も見学することができる。いまだに謎の多い太陽の塔だが探検感覚で訪れるのも楽しそうだ。

同じ岡本太郎が制作した作品は渋谷駅でも見ることができる。「明日の神話」という作品は太陽の塔と同時期に制作された壁画で、JR渋谷駅と渋谷マークシティや京王井の頭線の改札口を結ぶ通路に設置されている。

岡本太郎:「明日の神話」:All right reserved TARO OKAMOTO MEMORIAL MUSEUM

駅に設置されたアートは、通学や通勤の合間に気軽に見ることができ、もっとも気軽なアート鑑賞であるだろう。

また上野駅にはJR・中央改札の真上に屋根の形に沿って、動物たちと戯れる人々が描かれた壁画が登場する。これは猪熊弦一郎による作品で、裸婦や語り合う男女、猟師風の男、自由に動き回るような馬や犬など素朴な画風ながら優しく包み込んでくれるような作品だ。

都市開発との融合

さて、このパブリックアートの普及に一役買っている企業が存在する。それは「森ビルだ。森ビルとは都内を中心にさまざまな商業施設を運営する不動産デベロッパーだ。

2003年に完成した六本木ヒルズでは、東京の文化の中心地にしようというアイデアの一環で「六本木ヒルズパブリックアート&デザインプロジェクト」が採用された。 敷地内の各所に20人以上の世界的アーティストやデザイナーの作品が散らばっている。20年以上前から、都市ー施設ー人をつなぐ存在としてパブリックアートの可能性を模索し続けていたのだ。アート作品が創造的な文化都心の景観を形づくり、人々の憩いの場となっている。

何かのついでにフラッと寄って楽しめる、そんなパブリックアート。何よりも魅力的なのは、そのほとんどが無料で楽しめることだ…!

普段はあまり展示や作品に触れることがない人にもおすすめのパブリックアート鑑賞。この機会にぜひ訪れてみてほしい。