物心ついた時から絵を描いていたというGODTAIL。株式会社GODTAILを立ち上げ、今や活躍の場は、デザイン・演出・編集・広告・筐体デザインにも及び、存在感を放っている。『MARVEL/DC公式アーティスト』 も務める彼のこれまでの軌跡、業界での20年間を振り返るインタビューを前後編でお届け。
B – 会社からの独立の決め手を教えてください。
GODTAIL – 既にほとんど自分でやっているような感じで、ノウハウもあったし、色々やってみたいっていう感覚でしたね。今までの会社でのお付き合いもあったし、自信もあった。だからとりあえず独立してやってみて、ダメでもどこかしらの会社には入れるだろうと思っていました。
B – 趣味として絵を描き始めたのが、仕事になっていくにあたって、その境界線というか、意識の変化はありましたか?
GODTAIL – もちろん趣味の絵と仕事の絵は違うなっていうのもあったし、売れる構造っていうのかな。本当に実力があって売れる人ももちろん一握りいるとは思うんですけど、それ以外にもあると思っていて、例えば大きな企業さんに採用を頂くだとか、要は世間に知られないと、流行らないといけないんですよ、食べていく為には。上手かろうが、そうでなかろうが、まずはそこを抑える。その上で、オリジナルのものとか、誰もやっていないけど見たことあるようなものを狙って作っていました。自分のオリジナルキャラクターを、いきなりバーンって出したって売れないわけですよ。誰も知らないから。台本なりCMなり、結局要は仕組みがあるわけです。流行らせる仕組み、プロセスというか。もちろん突発的に、これいいなって流行ることもあるとは思います。ただ、今売れてるものって何かしら仕掛けがある。絶対的な誰かの力だったり大企業とかの力が発生している。それが良い悪いとかではなくて、そういう面はやっぱりあります。

B – ある程度流れだったりとか、業界の雰囲気を汲みつつというか。
GODTAIL – あくまで結果を出していかないといけないと思っていますね。そういう流れを気にしないで、一筋通してずっと自分の絵柄でやってる方ももちろんいらっしゃいますけど、僕はそういう生き方じゃなかった。
B – 逆に言うと、色々な描き方をするには、自分の手札というか、技術がないとその流れにうまく乗っていけないですよね。
GODTAIL – 描けているのかは分からないですけど、生きていくために一生懸命やっているっていう感じですね。天才じゃないから。
B – 天才ではない?
GODTAIL – ないない、全然。人よりやらないといけないタイプだからこそ、どうしたら生き残れるかを常に考えています。今も会社をやっているから、社員を食わさなきゃいけない。
B – 例えば自分のエゴというか、絵を描いていたら、こういうのを認めてほしいっていうのもあるじゃないですか。
GODTAIL – 自分のオリジナルで売れたいのはもちろんありますし、もちろんね、当てたいですよ。ただ、最近の人はやっぱり上手いし、達者だなとか思うこともあるから。
B – その考えに至るまでに、例えば具体的に大きな挫折があったのですか?ある意味自分が天才じゃないと諦めたというか。
GODTAIL – 諦めてないのは諦めてないんだけど、やっぱり、何だろうな。一線があるというか、ちょっと雰囲気が違う。一個何か違うんですよ。感覚的なものなんですけど。
B – でも、それが分かるっていうことは、ある程度近いレベルにいないと、それすら理解できない気もします。
GODTAIL – だからやり続けないとなって感じです。時代は変わるので、それに対応していかないといけない。上手い子なんかどんどん出てくるし。でも、じゃあそれで諦めるのかと言ったら、そうじゃないけどね。自分なりに対応して、合わせていかないと。

B – どうしたら絵は上手くなりますか?
GODTAIL – どうなんだろう。まだ全然だけど、向上心では終わりがないですね。ものづくりは終わりがないっていうのがありますし、どんどん新しい子たちが出てきて、刺激がある。何歳下でも、すごいなって子はたくさんいますから。だからずっと描いてますよ。旅行に行った時とか以外は基本的にずっと描いてます。何かしら仕事を頂けているし、自分のオリジナルキャラクターだったりイラストも描きたいし。描いていない日が無い。
B – しんどくなったり、行き詰まることはありますか?
GODTAIL – もうそれがナチュラルになっているから、描いている方が逆に楽なんです。慣れちゃってるというか。
B – Instagramでの作品投稿もかなりの更新頻度ですよね。スピードとかは意識されているんですか?
GODTAIL – というよりは、描いたものをアップしているだけですね。僕の先輩も54歳ぐらいだけど毎日アップしてるし、それが普通くらいの感覚ですね。
B – 基準がすごく高いというか。
GODTAIL – やっぱり天才じゃないから。

B – それでもここまで長きに渡って、絵を描くことを仕事としてやってこられてるわけじゃないですか。長期的にキャリアを維持する上で、何か意識されてることはありますか?
GODTAIL – チャレンジ精神かな。向上心を持っていろいろやっていかないといけない仕事だと思うんです。どんどん進化していく業界じゃないですか、それこそAIとかもそうですし。
B – 参考にしていたり、影響を受けた人はいますか?
GODTAIL – たくさんいますよ。子供の頃は『ドラゴンボール』が好きで、鳥山明先生とか、固定はされていたんですけど、この年になるにつれて、それこそ今の若手のイラストレーターの方もそうだし、身近なイラストレーターの方だったり無名なイラストレーターの方でも、上手い人は上手いから。視野が広くなったというか、誰にでもいいところはあるから、そこから盗める要素はありますね。
B – GODTAILさんにとって、良い絵ってなんですか?
GODTAIL – 良い絵か。「絵が描けないです」って言う人いるじゃないですか。正直言って、手を抜かないで真摯に描いてる絵とか、楽しんで描いている絵はいいですよ。「私は描けない」って言うけど、例えばキリンを描く、一生懸命キリンを、5、6時間かけて描いたら、それはすごくいいと思う。絵の基本はそこなんじゃないかな。
B – 確かにそうですね。絵に限らず、ものづくりにおいてはそういうところはありますね。
GODTAIL – もちろん技術が高いとかもありますよ。ただ、それだけじゃない。絵の根本って、描ける、描けないじゃないかな。売れる、売れないももちろんあるし、かっこいい、かっこ悪いとかもあるけど、絵そのもの自体は、もっと奥底にある心の部分というか。商売になるかどうか、商業的かどうかっていうのはまた別の話になってしまうけど、その、心というか、その人がどれだけ一生懸命やったかは、大事だと思います。

B – 最後に、今後の目標とか、今の野心を教えてください。
GODTAIL – 僕もう50歳なんですよ。だから、だいたい一生懸命かけるのがあと10年弱くらいかなと思っているんですけど、そこまでにIPキャラクターを作りたいかな。自分のオリジナルキャラクターを、自分の会社で出したいっていうのはあります。
B – やっぱり限界まで描き続けたいっていうのはあるんですね。
GODTAIL – そうですね。でも、絵描きは誰でも言うと思います。絵描きながら死ぬんじゃないかな。