アートを買うにはどうしたら良いのだろうか。アーティストの個展や百貨店のギャラリーに赴いて直接買う?あるいは度々ニュース等で話題になるオークションに参加する、というのも一つの手だろう。しかし、もっと手軽に、いろんな作品を吟味できる方法はないだろうか。そんな願いを叶えてくれる「アートフェア」でぜひアートを買ってみてほしい。
アートフェアとは
アートフェアはよくアートの見本市と言われている。たくさんのギャラリーやアーティストが一同に会し、その場で鑑賞や購入ができる仕組みとなっており、たくさんのアートを一度にみたい人や、さまざまなアーティストの作品を見比べながら購入を検討している人にとっては絶好の機会なのである。
代表的なものはアートの売買の中心地、スイス・バーゼルを拠点に開催される「アート・バーゼル」だ。アート・バーゼルは昨今のアートフェアトレンドの火付け役だ。その歴史は1970年から始まっており、現在ではマイアミビーチや香港、パリなどのエリアに拡大してアートフェアを開催している。世界各地から200軒以上のギャラリーと4000を超えるアーティストの作品が並ぶアート・バーゼルには、優良な顧客が来ることでも知られており各ギャラリーの作品にも力が入っている。アートフェアでは普段目にすることができない作品を見ることができるのも魅力の一つだろう。
日本のアートフェア
日本でもアートフェアは各地で開催されてきた歴史があるが、海外から見て日本のアートマーケットは未だに小さく、現代アートへの教養や理解度が発展途上であったために、世界の著名なギャラリーがなかなか参加してくれないなどの課題が残っていた。
しかし2023年に初開催された日本初の国際的なアートフェアと題された「Tokyo Gendai」を皮切りに日本でもアートフェアを盛り上げる動きが注目されている。
Tokyo Gendai(東京現代)とは2023年を皮切りに毎年開催されている世界水準の国際アートフェアで、2023年には3日間で20,000人を超える入場者を記録した 。世界各国から集結した現代アートギャラリーによる作品の展示と販売をしている。“国際的”というのは単に海外のギャラリーが参加しているというだけでなく、作品の質や作家の文化的アイデンティティ、ジェンダーなどの指標を鑑みて、グローバルなプレゼンテーションとなるような展示内容となっている。(逆を言えば今までの日本のアートフェアではそのあたりの平等性が担保されていなかったのも問題点だったのだろう。)

Tokyo Gendaiでは、会期中のトークセッションやイベントなど体験価値の高まるようなプログラムもたくさん用意されており、単にアートを購入するだけでなく参加者全員が楽しめるような内容となっているのも魅力だ。2025年には第3回をパシフィコ横浜で控えているので気になった方はチェックすることをおすすめする。
日本で最も歴史のあるアートフェアといえば、毎年有楽町の東京国際フォーラムで開催されている「アートフェア東京」だ。Tokyo Gendaiが現代アートに特化したアートフェアだったのに対し、アートフェア東京では古美術・工芸から、日本画・近代美術・現代アートまで、幅広い作品のアートが展示される。また2005年から開催している、日本最大級の国際的なアートフェアで会期中の来場者数は2024年開催時には5万5千人を超えた。
出展数も日本ではトップクラスの150軒超えとなっており、さまざまなアートをまんべんなく見てみたい人にはおすすめのアートフェアとなっている。

参加するギャラリーやアーティストにとって、作品が売れることは大事な要素の一つ。その点アートフェア東京は約33億円の売上を計上し、1000万円クラスの作品も多数売買された。そのため参加するアーティストたちにとってもモチベーションが高く、世に出回ることの少ない作品も展示されることも多い。
映像作品やインスタレーションといった、なかなか売買されることが少ない作品もある。そんな作品を多く取り扱っていた「EAST EAST」というアートフェアが2023年に東京・科学技術館にて開催された。
当日はライブパフォーマンスやフード・ドリンクの提供など、アートフェアという枠組みにとらわれない試みも見られ、なかなかアートフェアに馴染みのない若い世代や学生たちにも好評のアートフェアとなった。国内外の24のギャラリーが参加しており、数だけ聞くとやや小規模に感じるかもしれないが、参加しているギャラリーやアーティストはアートフェアに初参加の新しいギャラリーや、学生を含む若いアーティストたちも多く、よりフレッシュでカルチャーシーンを体現するような場となった。オフサイトプログラムとして、渋谷や新宿の街頭での映像作品展示や、クラブやライブハウスでの音楽プログラムなども行われた。次回開催は未定。