前編に引き続き、バンダイナムコエクスペリエンス経営企画部に所属する松村氏へのインタビュー。後編では、松村氏が描く、これからの体験型空間エンターテインメントのカタチ、さらには、眠っているIPコンテンツの潜在能力、その可能性について伺った。
B- 先日のイベント企画の背景を教えてください。
松村- 実は2年前に立川の昭和記念公園で行われた花火大会で、『太鼓の達人』を使ったイベントを出展したんです。昭和記念公園内に『太鼓の達人』があそべるブースを作って、花火大会が始まる前の時間に無料で叩けるような企画で。
B- 花火が始まるまで暇ですもんね(笑)
松村- それがすごいね、 僕的にはいい仕事したなと思っていて(笑)。
上手い人がやっても盛り上がるし、ちっちゃい子どもが頑張って叩いたりしていて、子どもも楽しいけど、後ろの親御さんたちもそれを見て喜んでくれる。
そこまでは想像できていたのですが、それを見る周りの関係のない大人たちまで笑顔になっていく連鎖がすごく素敵でした。
B- 関係ない人たちまで!
松村- そうですね。あとはやっぱり、この場が一体として盛り上がってくれているのが、すごくいいなって思いました。これまで僕らって、基本的に固定の場に店舗を作って商売させて貰うということをやってきました。
ただ、これはどちらかというと、人が集まる場所に、僕らが持っているコンテンツを持っていって、そこで熱狂が生まれた。
B- 待つのではなく、行くというか。
松村- ですね。僕らのコンテンツって、まだまだこういう価値の届け方があるのだと気づいたわけです。
既存の場所に出店をして楽しんでいただくっていうスタイルだけではない方法を検討する必要があるなと感じました。
B- 花火大会での手応えと、そうした可動式のイベントというアイデアが基になって、先日の「PAC-MAN MIKOSHI FEST.」に繋がったのですね。
松村- そうですね。これらの背景から持ち運びができるっていうところがキーワードとしてありました。その構成要素が、音楽、映像やアート、神輿と、どんどん増えてきた感じです。

B- イベントを終えて、改めて感じたことや、これからのエンタメのあり方として、何かお考えはありますか?
松村- 単にイベントでアートとか物販を売るっていう形にはしたくないのです。ああいった体験型コンテンツ全体が、来て頂いた人たちはもちろん、コラボさせて頂いたアーティストの方にとっても魅力的な場所みたいなものになっていくと僕は嬉しいなと思っています。
B- 具体的にはどういうことですか?
松村- 日本の技術や若い人の感性ってまだまだ発掘され切っていないと感じています。能力は持っているのになかなか認知されていないとか、披露する場がないみたいな人。 そういう方たちに対して、僕らの、企業としての信用と提案力を持って、いろんな人の目に触れる機会をうまく作れればなっていうふうに思います。
これは将来的に狙っていきたいというか、そういう人たちがしっかりと認知されて、当然来場してくれるお客さんも楽しめたうえで、アーティストや僕らがご飯を食べていけるような状態みたいなものを作り上げられたら仕事として最高に楽しいなと思っています。
B- ある種メディア的な役割という。
松村- そうですね。そういった風になれると嬉しいなと思っています。
B- ニューカマー的な人を発掘するわけじゃないですけど、そういう人たちが表現できる場ということですね。
松村- うまく構成していけば、結構いい場所になるなと。そこをさっきおっしゃっていたように、本当にメディアとして捉えて、広場のようにして、名前が売れていく人が出てきたらそれもまた嬉しいです。 結果的にはその人たちが本気で作ってくる商品だから、お客さんも喜んでくれる商品になるよねっていうふうに思います。
B- それはIPコンテンツとしての人気度とか知名度があってこそ、そういった役割を担えるってことですね。
松村- それもありますし、あとはIP自体の鮮度っていうところもあるかもしれないですね。
B- どういうことでしょう?
松村- 『PAC-MAN』は、今年で45周年なのです。それが今回、MCAとして新しい形で表現できた。一つのキャラクターに対して、こうした継続的な提案や、新しい見せ方を模索して、それが確かに良いものであれば、お客さんに対して新しい価値提供ができることが分かった。
キャラクターにとっても継続的な提案は必要な要素だと考えています。
B- 相互にとって、素晴らしいコラボだったわけですね。

バンダイナムコグループの掲げる、「いいものつくる」「もっとひろげる」「そだてつづける」「みがきふかめる」。そのひとつのかたちとして、これからの『PAC-MAN』を楽しみに。
そして、インタビューを通して気がついたのは、手塩にかけて育てられ、愛されたIPキャラクターの懐は、思ったよりも深そうだということ。人気IPを通して広がるカルチャーの輪は無限だ。
様々なカルチャーを巻き込んでフックアップしていく『PAC-MAN』の後ろ姿は、見られないけれど、きっと、たくましいに違いない。
PAC-MAN™& ©Bandai Namco Entertainment Inc.
Taiko no Tatsujin™Series & ©Bandai Namco Entertainment Inc.