「アーティスト」と聞くとどんなイメージを抱くだろうか?好きなことを仕事にしていていい、個性的、ちょっと変人かも…?作品を縦横無尽に作り続けているアーティストたちに対して、少なからず自分たちとは別の世界を生きている、と思っている人も少なくないのではないか。
誰もがアーティストになれる可能性
でも実はそれは少しだけ違っていて、アーティストの中には会社員をしながら制作を続けていたり、子育てをしながら制作をしている人も。それもそのはず。なかなかアーティストという職業に実感がわかないのも、教育環境がまだ不十分だからだ。

日本では主に技術的な指導のみが行われている。義務教育ではどうやったら本物のようにそっくりに絵を描けるか、粘土をこねることができるかを学ぶ。ピカソの本名を覚えさせ、なぜ評価されたのかという部分をなおざりにしてしまう。欧米諸国では技法的な能力よりも、コンセプトやプロセスが重視される。どうしてこう描きたいのか、どうしてこの色を使いたいのかを徹底的に考えさせる。今考えていること、気になっていることがそのまま形になるという点で、アートが生活と密接に関係している。
日本ではこうした教育環境の違いから、アートと人の距離が離れてしまうのだ。遠く離れたところにいるアーティストをわたしたちは、ただ崇めてしまう。
アートを通じた自己表現と社会との繋がり
アートとは社会の鏡だ。社会で起きたこと、すなわち身近に起こったことが制作の起点になる。昨日食べたもの、先月見た風景、大好きな人の姿。ゴッホもピカソもそんなありふれた景色を作品にした。本当は今画面の前にいるあなたもアーティストになり得るのだ。

実は医療の世界では、アートを通じて患者の精神状態を改善させる処方も広がっている。欧米の精神医療の分野ではアートセラピーとも呼ばれており、絵画や彫刻、音楽、ダンス、演劇などの芸術的な表現を通じて心の健康を促進する手法だ。
精神疾患の改善に加えて、自己成長やストレス管理、感情の表現、自己理解を促進するためにも役立つ。私達の心や体を潤すために、美味しいご飯を食べたりおしゃれをすることと同じように、アートを作ったり楽しんだりすることが必要なのだ。

アートを楽しむ方法のひとつにワークショップがある。ワークショップとは目的別のプログラムや与えられた課題を実際に体験することで学習できる自主的な教育の場のことだ。簡単なものではアートカフェや陶芸教室などもこれに該当するが、プリントスタジオの「SURUTOCO:https://www.surutoco.jam-p.com/」が定期開催しているシルクスクリーン*のワークショップではオリジナルの版を作って自分で印刷を体験することができる。Tシャツやトートバッグはもちろん、上達すれば自分だけのオリジナル作品を作ることも可能だ。
※*シルクスクリーン:メッシュ状の版にインクを通過させる孔を開けて印刷する版画技法の一種。シルクスクリーン印刷とも呼ばれ、鮮やかな発色や耐久性、均一な色面が特徴。

どっぷりアートに使ってみたいあなたには戸田建設が主催している、学びの場「APK STUDIES」がおすすめ。2025年から始まったAPK STUDIESは約8ヶ月間にわたってアートを起点にさまざまな創造的実践に出合い、参加メンバーの関心や課題意識を深めていくプログラムだ。クリエーターやキュレーターに加えて、アートと社会の関係について理解を深め実践したいオフィスワーカーなどを対象としており、仕事の後に参加できるようなタイムスケジュールなのもありがたい。
ギャラリーオーナーやアーティスト、建築家といった様々な講師陣に支えられながら、様々なバックグラウンドを持つ生徒たちと交流を重ねて制作を進めるようだ。アートと社会をどう繋いでいくか、考えるきっかけになりそうだ。